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第五章 旅立ち レイシア11〜13才

50話 これからのために

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 翌日、応接室でお父様とオヤマーでの行動を報告した。

「お祖父様とは、商売や技術開発、特許などについて教えてもらいました。お祖母様の淑女教育は…………、私には合いませんでした」
「合わない? どういうことだ?」

「まず、靴から合いませんでした。私の足は労働者階級の足だそうです。それに、貴族の子供たちとの会話も……。なんと言うか、中央の貴族社会とは上手く混ざることができる気がしませんでした」
「そうなのか? う~む。そうか。分からない気もしないでもないが……。なんでもこなすお前らしくないな」

「サチの分析だと、私は人付き合いと人に甘えるのが下手らしいですよ」

 お父様のクリフトは、娘のレイシアを見て、ため息をついた。

「そうだな。お前には甘えさせるどころか、いろいろ仕事を任せてしまったな。すまん」
「平気ですよ。私にも苦手なものがあると理解できたのは良かったのです」

「そうか。それでも貴族社会で生きていかなければいけないよ。再来年には学園にいかなければ行けないしね」
「学園、行かなければいけませんか?」

「ああ、貴族の決まりだからな。必ずだ」
「行かなければ?」

「我が家が罰を受ける。最悪貴族籍剥奪だな」
「……そうですか」

「まあ、行けばいいだけだ。それにしても人付き合いが苦手か。貴族として社交は外せないからな。今度、神父様に相談しなさい」
「分かりました」

「レイシア、向こうでは大変だったろう。お前の家はここだ。今日から自由に振る舞っていいんだよ。やりたいことがあったら言いなさい」

 お父様の優しい言葉に、レイシアは元気よく「はい!」と答えて部屋を出た。

◇◇◇

「あ、お姉様!」

 教会に行くと、クリシュと孤児たちが外の掃除をしていた。とても仲よさそうに話しながら。

 レイシアは、自分のいなかった2ヶ月の、クリシュの成長を感じた。

「頑張ってるわね、クリシュ。神父様中にいる?」
「うん。今日は先生をしているよ」
「そう。じゃあ終わるまで待つね」

 レイシアは、クリシュたちと一緒に掃除を始めた。オヤマーではできなかった、単純肉体労働。久しぶりの感覚に、(やっぱり働くのは楽しい)と思ったのだった。



 みんなと昼食をとった後、レイシアは神父様とお話した。貴族社会、特に社交が絶望的に難しいこと。

「以前話した、女性の社交で女子力がないのは致命的だ、と教えたのは覚えていますか?」
「そういえばありましたね」

「大切ですよ、社交。レイシアらしくありませんね。どうしました?」
「言葉に……、言葉に毒が混ざるんです。言葉の端々に人を馬鹿にしたような、人をさげすんでいるような、そんな感じがして気持ち悪いんです」

 神父は、学園時代の自分の闇を思い出した。確かにあれはきつい。ターナー領に来てから忘れていた感覚。

「そうですね。貴族同士の会話は独特ですからね。嫌になる気持ちはとてもよく分かります」
「はい」

「しかし、それでは自分が傷つき壊れるだけです。明日から、中央貴族の独特な言い回しや対処について学びましょうか」
「やらなければいけませんか?」

「防衛のためです。学園で潰されないための最低限の社交術。自分を守るためです」
「分かりました。よろしくお願いします」

 こうして、一つひとつ貴族について学んでいくレイシアだった。
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