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第六章 夏休み

82話 お祭り(打ち上げ)

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 結果的には仔ボアの丸焼きは大成功だった。肉の焼ける匂いは、空腹な人々の嗅覚を刺激した。都会から来た人々は、その野趣あふれる調理法で仕上がるのを固唾をのんで見守っていた。

 肉を切り取っては串に刺して炙り直す。その時、濃厚なタレをつけて焼くので、香ばしい煙が立ちあがっていた。そよ風に流れる煙は、さらにお客を呼び込んだ。タレはもちろん、我らが料理長サムのお手製。レイシアが手配していた。

 肉、野菜、果物。取れたての新鮮食材のおいしさは、数日かけて運送された物とは雲泥の差がある。ましてや、運送料も中間マージンもない卸値の安さ! 地元ならではの料理法の数々。地元の物を産地で頂く。そのことの素晴らしさは、地元の者には分からないのだが、都会のお客様の感動は言い知れぬものがあった。
 この祭の後も、おいしい食を求めて観光客が訪れるようになったのだが、それはまた別のお話。



 3時過ぎから順々に、お客様はアマリーに向けて移動を始めた。手にはたくさんのお土産を持って。
 4時、屋台の撤収がはじまる。暗くなる前に全て片付けようと必死だ。
 他領の商人は、5時にはアマリーに向けて移動したいので、早めに撤収を始める。暗くなると移動も危険だから。



 黄昏れている広場の中央に廃材やゴミが集められた。夕日が沈む中、レイシアが魔法で火を付ける。焚き火が人々の顔を照らした。

「皆、ご苦労だった。さあ、これは私からのお礼だ。好きなだけ飲んでくれ」

 領主クリフトの後ろに酒樽が10樽並んでいる。人々は、自前のコップや皿を取りに走った。
 残った屋台の料理や、持ち込みの食べ物。人々は思い思いに打上げを楽しんだ。

 打ち上げのために、レイシアとサチは昼間にもう一度狩りをしていた。
 ウサギや鳥、鹿、狐。大量に狩っていた。

「来年も、祭りをするか?」

 クリフトは、楽しんでいる領民たちを見てつぶやいた。
 その言葉は、伝言ゲームのように人々に広まっていった。

「来年も」
「来年も」
「来年も」

 やがて言葉は大きくなり、歓声に変わった。

 いつの間にか、クリフトコールが響き渡る。

「クーリフト!」
「クーリフト!」
「クーリフト!」

 クリフトが暗い舞台に上がる。レイシアが、「ライト!」と唱えると、ステージが明るくなった。

 何ごと! と静まりかえる会場。領主の姿を確認すると、すぐに大歓声が上がった。

「皆、よくやった! 来年も祭りをやろう! 皆で楽しむんだ」

「「「おおお――――」」」

「クーリフト!」
「クーリフト!」
「クーリフト!」

 クリフトコールが止まらない!
 手でリズムをとる者。足を叩きつける者。人々は全身で喜び、領主を讃えた。

 いつまでも、いつまでも……

 楽しい打ち上げは続くのだった。
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