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第二章 学園です。乙女ゲームは面倒です。
21 間話 先生たちの驚愕
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「学園長からの緊急呼び出しだと?」
教授室を回っている、学園長の秘書たちが慌ただしく報告した。
滅多にない事に、パタパタとあちらこちらの教授室から先生たちが出てきては、何か情報があるかと話し合いながら、私達は会議室に向かった。
◇
「忙しい所申し訳ない。更にこれから見て話すことは、最高級のトップシークレット扱いで頼む。先生方には、今後の方針や分析などをお願いすることになるだろうが、場合によっては、今後の王国すべてが変わっていく発見かもしれない。よろしく頼む」
学園長の声が震えて早口になっている。緊張が周囲に広がった。
「何事でしょうか。先日の魔物から何か分かったとか?」
教授の一人が聞いた。そう。何も分からないままでは話にもならない。
「いや、別件だ。いや、あれを倒したリリア、彼女がやったことだが。……これを見てくれ」
学園長が細長い棒状のものを出してきた。
「これは、あのリリアが一人で作ったものだ。見ろ!」
棒の先から火? わずかな炎が出続けている。
「これは、魔力を炎に変える道具らしい」
会議室が一斉にざわついた。
「まさか!」
「そんな事が!」
「それではアーティファクトではないか!」
そう。王国の貴族街はアーティファクトでまわっている。室内に明かりが付くのも、水道できれいな水が飲めるのも、訓練用の闘技場で無事なのも、すべてがよく分かっていない古の技術あってのもの。
「それが魔力で動いているという証拠は?!」
「こうして魔力検査の水晶に近づけると反応するだろう」
確かに水晶が光っている。
「我々は魔法は傷を治すもの、あるいは人体強化のものと思い込んでいた。しかし、こうして形になるとどうだ? これをどう扱えばいい? こいつはまるで、新たなるアーティファクトではないか!」
その言葉を聞いて、口々に好きなことを言い合う教授たち。私は呆然とそれを聞いていた。
「静かに! 興奮するのは分かる! だが、これは事実だ! ところが、製作者のリリアはこの状況を分かっていない。そう、今は分からせてはいけない。そんな気がするのだが、先生方はどのように思う? アーティファクトがいつ壊れるかもしれない現状で、仕組みが理解できるようになるかもしれない。新しく作れるかもしれない。そのキザシがここにあるのだ」
「その棒は、再現性はあるのか? 新たに作ることはできるのか? 学園長」
教授の一人が興奮気味に質問した。
「ああ。ここにいる人数分、作るように頼んだ。一つ金貨1枚で作るそうだ」
「「「金貨1枚!」」」
金額にどよめきが走った。金貨一枚だと?
「ああ。物の価値が分かっていない。金貨100枚でも1000枚でも欲しがる者はいるだろうに。研究用として私が買い取る。協力したい者には銀貨50枚で貸し出すがどうだ?」
次々と声が上がる。もちろん私も。
「では契約を交わそう。この事は我々だけの秘密だ。共同研究として学園あげて発表するまでは、家族にも話すな。リリアは私の預かりにする。勝手な接触はしないように。そうそう、リリアはこれを魔道具と名付けたらしい。これからは魔道具と呼ぶことにする。それから魔道具は学園外に持ち出さないこと。帰る時私に戻すように。その他細々とあるが、この契約を交わせるものだけここに残ってほしい。出ていく者も他言無用だ」
誰一人出ていくわけない。共同研究でも、未来永劫名が残る研究だ。
「くそっ! リリアが勇者育成の王命を受けてなかったら研究漬けにできるのに」
学園長の怨嗟の声が響いた。教授たちが次々と、契約書にサインと血判を押している。
「リリアはこの重要性を分かっていない! 分からせるな。リリアから相談があったら協力を惜しむな。そして私に報告するように」
私もサインをして、血判を押した。
この国の未来のために! 私の研究者としての血が騒ぐ。
魔道具を受け取り、火を着けた。魔力の炎は青白く揺らいだ。
教授室を回っている、学園長の秘書たちが慌ただしく報告した。
滅多にない事に、パタパタとあちらこちらの教授室から先生たちが出てきては、何か情報があるかと話し合いながら、私達は会議室に向かった。
◇
「忙しい所申し訳ない。更にこれから見て話すことは、最高級のトップシークレット扱いで頼む。先生方には、今後の方針や分析などをお願いすることになるだろうが、場合によっては、今後の王国すべてが変わっていく発見かもしれない。よろしく頼む」
学園長の声が震えて早口になっている。緊張が周囲に広がった。
「何事でしょうか。先日の魔物から何か分かったとか?」
教授の一人が聞いた。そう。何も分からないままでは話にもならない。
「いや、別件だ。いや、あれを倒したリリア、彼女がやったことだが。……これを見てくれ」
学園長が細長い棒状のものを出してきた。
「これは、あのリリアが一人で作ったものだ。見ろ!」
棒の先から火? わずかな炎が出続けている。
「これは、魔力を炎に変える道具らしい」
会議室が一斉にざわついた。
「まさか!」
「そんな事が!」
「それではアーティファクトではないか!」
そう。王国の貴族街はアーティファクトでまわっている。室内に明かりが付くのも、水道できれいな水が飲めるのも、訓練用の闘技場で無事なのも、すべてがよく分かっていない古の技術あってのもの。
「それが魔力で動いているという証拠は?!」
「こうして魔力検査の水晶に近づけると反応するだろう」
確かに水晶が光っている。
「我々は魔法は傷を治すもの、あるいは人体強化のものと思い込んでいた。しかし、こうして形になるとどうだ? これをどう扱えばいい? こいつはまるで、新たなるアーティファクトではないか!」
その言葉を聞いて、口々に好きなことを言い合う教授たち。私は呆然とそれを聞いていた。
「静かに! 興奮するのは分かる! だが、これは事実だ! ところが、製作者のリリアはこの状況を分かっていない。そう、今は分からせてはいけない。そんな気がするのだが、先生方はどのように思う? アーティファクトがいつ壊れるかもしれない現状で、仕組みが理解できるようになるかもしれない。新しく作れるかもしれない。そのキザシがここにあるのだ」
「その棒は、再現性はあるのか? 新たに作ることはできるのか? 学園長」
教授の一人が興奮気味に質問した。
「ああ。ここにいる人数分、作るように頼んだ。一つ金貨1枚で作るそうだ」
「「「金貨1枚!」」」
金額にどよめきが走った。金貨一枚だと?
「ああ。物の価値が分かっていない。金貨100枚でも1000枚でも欲しがる者はいるだろうに。研究用として私が買い取る。協力したい者には銀貨50枚で貸し出すがどうだ?」
次々と声が上がる。もちろん私も。
「では契約を交わそう。この事は我々だけの秘密だ。共同研究として学園あげて発表するまでは、家族にも話すな。リリアは私の預かりにする。勝手な接触はしないように。そうそう、リリアはこれを魔道具と名付けたらしい。これからは魔道具と呼ぶことにする。それから魔道具は学園外に持ち出さないこと。帰る時私に戻すように。その他細々とあるが、この契約を交わせるものだけここに残ってほしい。出ていく者も他言無用だ」
誰一人出ていくわけない。共同研究でも、未来永劫名が残る研究だ。
「くそっ! リリアが勇者育成の王命を受けてなかったら研究漬けにできるのに」
学園長の怨嗟の声が響いた。教授たちが次々と、契約書にサインと血判を押している。
「リリアはこの重要性を分かっていない! 分からせるな。リリアから相談があったら協力を惜しむな。そして私に報告するように」
私もサインをして、血判を押した。
この国の未来のために! 私の研究者としての血が騒ぐ。
魔道具を受け取り、火を着けた。魔力の炎は青白く揺らいだ。
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