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11話 特訓の日々
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父との特訓は初日から予想外にキツイものだった。
朝日が登る前、まだ薄暗い中、背中に二本の木剣を差した父が玄関口で待っていた。
「まずは、ランニングからだっ!ロード行くぞ!きつかったらいつでも言えよ!」
「分かった、父さん!」
まだ薄暗く足元の安定しない山道を父と二人で走る。
「はぁ、はぁ……いいか、ロード、足元ばっかりは見るな。前を向きながら走り、視界の片隅で足元を見るんだ。はぁ、はぁ…戦闘中は視野が大事になる。これはその訓練だと思え。」
「はぁ、はぁ……分かった、父さん…はぁ、はぁ」
父のアドバイスを受けながら、ただひたすらに走る事、数十分やっとランニングが終わる。
はっきり言おう、意識が飛びかけた。
なんか終盤の方、もはや全力疾走みたいな感じだったし。
父はまだまだ余裕そうだった。すごいな、父さん。
俺は、もう既に汗だくで服はビチョビチョ。一旦休憩を挟みたかったが、休む間も無く次の特訓に移行するようだった。
「ほらっ、これを持て。次の訓練やるぞっ!」
渡されたのは、木剣。父が家に出た時に持ってきた剣のうちの一本だった。
「これから、剣術の型を教える。俺の真似をして剣を振るように。さぁ、行くぞっ!いちっ、にっ、さんっ………」
それから1000回を数えるまで素振りは続いた。
ランニング後だったからか、木剣が異様に重く感じ、最後の方は振れてるのか振れてないのか分からないくらいだったが、何とか終えることが出来た。
でも、一つ父さんに質問。
これは、魔法と何の関係があるの?
しかし、そんな事を聞ける間もなく、次の特訓に移行してしまう。
もう喋る余裕すらない。父も喋らない。めちゃくちゃ集中している。だから俺も意識を特訓へ集中した。
次は筋トレだった。
「シンプルだが、腕立て伏せ、腹筋、背筋、懸垂を1000回ずつやるぞ、ロード出来るか?」
「……うん、やる。」
本当は出来ない。もう既に体は限界を迎えてるし。
けど、俺には魔法を教えてもらうという目的がある。教えてもらえるまで、引けないのだ。だからもう意地になるしかなかった。
出来るか出来ないかじゃない、やるかやらないかだ。
俺もこっちにきて、変わってしまったな。なんだかバリバリ体育会系になってる気がする。
そんな事を考えながらひたすらに数を刻む。
そして数十分後、筋トレは終わりを迎えた。終わりって来るもんだね。
もう日も出てきて鳥が囀っている時間だった。
「よくやった。偉いぞ、ロード。初日からここまで出来るとは思わなかった。それ程までロードの魔法への意志が固いって事だな。よし、そろそろ本題の魔法を教えてやる。」
どうやら俺は試されていたようだ。意地になってよかった。
「俺は、『火』と『無』に適性がある。だから、教えられるのはその二つしかない。今日は『火』をやっていこうと思う。まず、自分の中の魔力の存在は分かるか?」
「うん、分かるよ。身体中を流れてるやつだよね?頭に沢山あって、そこから全身に流れてるやつ。」
「お、おう。そうだ。そこまで分かってるのか?本当にか?」
子供っぽく話してみたんだが、なんか父の反応がおかしい。
あれ?なんかまずい発言しちゃったかな?と思いつつ、でももう遅い事を悟る。なんとか誤魔化さないとな。
「うん、メイドの…あの女の人がやってるのを何度も見たことあるもん!それに、自分でも努力したもん!」
「そうか…うん、そうか、きっと天才ってやつだよな。うん、そうだ、そうに違いない。」
父は自分に言い聞かせながら何度も頷き、何とか理解してくれたようだった。
はい、セーフ。
「魔力を感じることができるなら、もう話は簡単だ。魔力を手に集めて、魔法をイメージして、放出する。よく見ておけ、こうだ。」
父の手からは、ガスバーナーの様な火が上がった。
「これは、初火級魔法の『火炎』だ。これに使う魔力は少なく、生活魔法として扱われている。主な用途としては、火をつける事とかに使われてる。冒険者は旅することが多いから、『火』の適性がある冒険者は意外と重宝されるんだ。」
うん、火は大事だ。だけど『火炎』なのに、ちょっと火がしょぼくない?もっと激しく燃える炎みたいな方がかっこいいのに。
「さて、次は実戦だ。けど、その前に、お前には話しておかなければならない事がある。大事な話だ。魔法を使いたいと意気込んでいるお前からしたから、凄くショックな話になるかも……なっ!!」
ーーボォォオッ
俺は、早くやってみたくて、父の話の途中ではあったが手をかざして『火炎』に挑戦していた。
それもイメージは、火を噴くドラゴンの如く。
結果は成功。
手から、扇状に炎が広がり、前方5メートル程の草を焼き尽くした。
いや、こんな館単にいくと思わなかった…めちゃくちゃビビりましたよ、はい。
「ロード、お前っ………」
その後、父と無言で見つめあってしまった。
そんな静寂の中、父の口から「俺の息子は天才なのか…?」と声が聞こえたような気がした。
朝日が登る前、まだ薄暗い中、背中に二本の木剣を差した父が玄関口で待っていた。
「まずは、ランニングからだっ!ロード行くぞ!きつかったらいつでも言えよ!」
「分かった、父さん!」
まだ薄暗く足元の安定しない山道を父と二人で走る。
「はぁ、はぁ……いいか、ロード、足元ばっかりは見るな。前を向きながら走り、視界の片隅で足元を見るんだ。はぁ、はぁ…戦闘中は視野が大事になる。これはその訓練だと思え。」
「はぁ、はぁ……分かった、父さん…はぁ、はぁ」
父のアドバイスを受けながら、ただひたすらに走る事、数十分やっとランニングが終わる。
はっきり言おう、意識が飛びかけた。
なんか終盤の方、もはや全力疾走みたいな感じだったし。
父はまだまだ余裕そうだった。すごいな、父さん。
俺は、もう既に汗だくで服はビチョビチョ。一旦休憩を挟みたかったが、休む間も無く次の特訓に移行するようだった。
「ほらっ、これを持て。次の訓練やるぞっ!」
渡されたのは、木剣。父が家に出た時に持ってきた剣のうちの一本だった。
「これから、剣術の型を教える。俺の真似をして剣を振るように。さぁ、行くぞっ!いちっ、にっ、さんっ………」
それから1000回を数えるまで素振りは続いた。
ランニング後だったからか、木剣が異様に重く感じ、最後の方は振れてるのか振れてないのか分からないくらいだったが、何とか終えることが出来た。
でも、一つ父さんに質問。
これは、魔法と何の関係があるの?
しかし、そんな事を聞ける間もなく、次の特訓に移行してしまう。
もう喋る余裕すらない。父も喋らない。めちゃくちゃ集中している。だから俺も意識を特訓へ集中した。
次は筋トレだった。
「シンプルだが、腕立て伏せ、腹筋、背筋、懸垂を1000回ずつやるぞ、ロード出来るか?」
「……うん、やる。」
本当は出来ない。もう既に体は限界を迎えてるし。
けど、俺には魔法を教えてもらうという目的がある。教えてもらえるまで、引けないのだ。だからもう意地になるしかなかった。
出来るか出来ないかじゃない、やるかやらないかだ。
俺もこっちにきて、変わってしまったな。なんだかバリバリ体育会系になってる気がする。
そんな事を考えながらひたすらに数を刻む。
そして数十分後、筋トレは終わりを迎えた。終わりって来るもんだね。
もう日も出てきて鳥が囀っている時間だった。
「よくやった。偉いぞ、ロード。初日からここまで出来るとは思わなかった。それ程までロードの魔法への意志が固いって事だな。よし、そろそろ本題の魔法を教えてやる。」
どうやら俺は試されていたようだ。意地になってよかった。
「俺は、『火』と『無』に適性がある。だから、教えられるのはその二つしかない。今日は『火』をやっていこうと思う。まず、自分の中の魔力の存在は分かるか?」
「うん、分かるよ。身体中を流れてるやつだよね?頭に沢山あって、そこから全身に流れてるやつ。」
「お、おう。そうだ。そこまで分かってるのか?本当にか?」
子供っぽく話してみたんだが、なんか父の反応がおかしい。
あれ?なんかまずい発言しちゃったかな?と思いつつ、でももう遅い事を悟る。なんとか誤魔化さないとな。
「うん、メイドの…あの女の人がやってるのを何度も見たことあるもん!それに、自分でも努力したもん!」
「そうか…うん、そうか、きっと天才ってやつだよな。うん、そうだ、そうに違いない。」
父は自分に言い聞かせながら何度も頷き、何とか理解してくれたようだった。
はい、セーフ。
「魔力を感じることができるなら、もう話は簡単だ。魔力を手に集めて、魔法をイメージして、放出する。よく見ておけ、こうだ。」
父の手からは、ガスバーナーの様な火が上がった。
「これは、初火級魔法の『火炎』だ。これに使う魔力は少なく、生活魔法として扱われている。主な用途としては、火をつける事とかに使われてる。冒険者は旅することが多いから、『火』の適性がある冒険者は意外と重宝されるんだ。」
うん、火は大事だ。だけど『火炎』なのに、ちょっと火がしょぼくない?もっと激しく燃える炎みたいな方がかっこいいのに。
「さて、次は実戦だ。けど、その前に、お前には話しておかなければならない事がある。大事な話だ。魔法を使いたいと意気込んでいるお前からしたから、凄くショックな話になるかも……なっ!!」
ーーボォォオッ
俺は、早くやってみたくて、父の話の途中ではあったが手をかざして『火炎』に挑戦していた。
それもイメージは、火を噴くドラゴンの如く。
結果は成功。
手から、扇状に炎が広がり、前方5メートル程の草を焼き尽くした。
いや、こんな館単にいくと思わなかった…めちゃくちゃビビりましたよ、はい。
「ロード、お前っ………」
その後、父と無言で見つめあってしまった。
そんな静寂の中、父の口から「俺の息子は天才なのか…?」と声が聞こえたような気がした。
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