引きこもりたい伯爵令嬢

朱式あめんぼ

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Episode.01 ルクリア・ピンセアナ

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 お兄様にはよく文字を教えて貰った。


  「これで〝ルクリア〟って読むんだよ。」

 お兄様の書いてくれた文字で自分の知る文字に当てはめながら読み方を覚えた。

 一緒に声に出して読めば、独特の発音にも慣れていった。


 そしてお兄様の勉強中に、お兄様おすすめの簡単な童話なんかを読む。

 慣れてきたらもう少し難しい本を読み、それに慣れたらさらに、…と読む本の難易度を少しづつ上げていった。

 泣いて部屋に入れてもらったお兄様の自室で静かに本を読むわたしに、家庭教師の先生も最初は驚きつつもすぐに慣れてくれた。

 「ルクリアお嬢様はもう文字が読めるのですね。」

 感心したような言葉に最初はびくびくしていたけれど、部屋にはお兄様もいて、私が怯えるたび「大丈夫」といってくれたのだ。

 少しずつではあったが、家庭教師の先生ともコミュニケーションを取ることはできるようになった。それでも、クローズドクエスチョンに頷きと首振りで応えることがほとんどだったけれど。

 お兄様の勉強もあまり難しくなさそうだったり、興味のあることは一緒に参加した。

 礼儀作法の授業でも先生真似をして、お兄様に笑われつつも一緒にいれるのが楽しかった。



 そして、お兄様が9歳となり、わたしが5歳になると、わたしの勉強の時間も始まった。

 泣いたけど一緒の部屋にはなれず、しゃくりあげながらわたしは知らない家庭教師の女の先生と2人で勉強をした。

 それなのにその先生はわたしが知っていることばかり教えるから、それならお兄様と一緒にいるわ!!と思い部屋を飛び出しすこともあった。


 基本の学習ができることを確認した後、先生の予定とは違った勉強を始め直ぐに知ったのが、学院入学の年齢である。

 学院入学は基本10歳だそうで、お兄様は翌年には入学ということになる。しかも、寮住み。

 さらに、学院は全員が同じ基礎知識を学ぶ初等部と、その人が専攻したい内容に別れ学ぶ高等部とがあり、校舎も別だという。

 初等部は4年間。つまり、わたしはお兄様と校舎が被ることなく離れたまま。

 涙を堪えながらもどうしようかも頭の中はぐるぐるだ。


 そこで思い出したのは、わたしの前世の最期だった。

 わたしはそれまで迷惑を掛けまくった母に、頑張る宣言をしたのだ。諦めず、立ち向かうと。



 どちらにせよわたしはもう1年もせずお兄様と離れてしまう。その事実は不動だ。

 それならば、強制的にお兄様に甘えられない、逃げられない立場で頑張ってみようと思う。



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