引きこもりたい伯爵令嬢

朱式あめんぼ

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Episode.02 白銀の少年との出会い

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 ピンセアナ伯爵家の庭園は美しい。特別な交配により生まれた淡いピンク色の薔薇は、伯爵家の一人娘であるルクリアわたしが生まれた年に誕生したものらしい。

 〝ルクリ・スア〟と名付けられた薔薇に似た、淡いピンク色の髪と瞳の娘にお母様は「ルクリア」と呼びかけたそうだ。


 自分の名前の由来となった薔薇の咲く庭園は、わたしのお気に入りの場所だ。

 薔薇のアーチが大小いくつかあり、一部は迷宮庭園のような造りになっている。

 兄様が学院へと家を離れ、どうしようもなくなったとき、わたしが来るのがこの庭園だ。

 そのおかげで小さなアーチや隠れ道までしっかりと把握し、頭の中に立体的な地図が出来上がっている。ここまでしっかりと把握しているのは、庭師ガーデナーとわたし、そしてお父様くらいだろう。


 お父様のことを教えてくれたのは、庭師の中で唯一話したことがあるドナーさんだった。

 この庭園はお父様とドナーさん、そして今はいないドナーさんの師匠と設計したものらしい。薔薇のアーチはお父様の案であったと知った時のわたしの驚きは計り知れない。

 わたしの知るお父様は、厳格で甘えというものを知らないような人間だ。たまに柔らかい表情を見せていることもあるが、伯爵という地位に立つ人間として立派といえる人格だろう。

 だからこそ、薔薇のアーチを作るなんて可愛らしい発想があの口から出てくるなんて不思議というか、違和感が強い。



 朝食の後、いつもの家庭教師からの講義を受けた。そして昼食までのそう多くない時間を庭園で過ごす。側に控えていたメイドの目を盗み、さっと迷宮庭園へと身を隠す。

 小さなアーチを通り抜けてその中心部へ向かうのだ。

 「ルクリアお嬢様ー?」

 メイドの声が聞こえるが応えることはしない。ごめんなさい、と小さく呟く。

 メイドは皆優しい人ばかりで、迷惑をかけるのは心苦しいが、ずっと側に人がしると心が休まらないというか、息がしにくいというか。

 ポテポテと一人で歩きながら庭園を進んで行く。

 中心部には小さな噴水とベンチがある。そこで休もうと最後の曲がり角を曲がると、小さく空いた空間に透明な水が湧き上がる噴水、2人しか座れないだろう木のベンチ、そしてーーー少年、がいた。


 「だ、だれ…?」


 その言葉にこちらを見た少年は、涙をいっぱいに溜めた瞳でこちらを見た。

 その髪は真っ白な雪のように白く、太陽の光にキラキラと輝いていた。


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