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Episode.02 白銀の少年との出会い
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しおりを挟む心臓の音が大きい。耳元で脈打つこの音が周りの人にも聞こえているんじゃないかと心配になるほどだった。
「お初にお目にかかります、レウコスタキス伯爵様。私、ルクリア・ピンセアナと申します。」
カーテンシーは誰よりもお母様が見本になる。そう気付いたのはつい最近で、それは遅すぎるくらいだった。
お母様は所作が美しい。歩き方、座り方、カップの持ち方、一つひとつが本当に美しいのだ。悩んでいることがあっても、怖くても、泣きたくても、優雅で優しさの溢れた笑みを浮かべている。
わたしが鍛えるべきはここなのだろう。人が怖くても良い。ただそれをおくびにも出さなければ、それで。
『これが貴族というものなのですよ、ルクリア。』
お母様の瞳は美しい。けれど美しいだけではない。そこには爛々と輝く尊いものがある。
多分、自分が何のために、どうしたいかをきっちりと持っているからではないだろうか。心に一本の芯が通った人はいつだってこんな瞳をしている。
『我慢できなくなったときには〝体調が優れないので失礼させていただきます〟とでも言って逃げなさい。逃げた後は一人で叫んでも泣いても誰も咎めないわ。逃げ方は存在しないわけではないの、ただ最低限のルールがあるだけ。』
真っ直ぐなその瞳は優しいけれど力強さがある。ああ、こんな風になりたいって、そう惹かれる強さだ。
「素敵な挨拶をどうも、レディ。」
手が取られ、唇が触れる寸前まで近付く。わたしの手の震えに気付いたのか、すぐに唇も手も離れた。
その挨拶をされるのは初めてで、この部屋に入るまでに強固に作った仮面が剥がれ落ちてしまった気分だ。礼儀作法を教えてくれた先生は女の方で、説明はさるれのと実際にされるのとでは全く違う。わたしへの負担が。
「なんだ、伯爵様のお堅い顔が崩れてるぞ。」
その言葉にパッとお父様の顔を見ると、珍しく驚いた顔が顕になっており、それは次第に不機嫌そうな顔へと移り変わっていく。
「忙しさを理由に子どもを嫁に任せて自分は放置なんて、古くさい考え方にもほどがあるぞ。」
ニヤニヤとした表情の侯爵様に、この人はこんなに明るいのかと感心する。お父様の知り合いというから同じように堅苦しい…いいえ、厳格な人だと想像していた。
「わかっている。しかし、自分は幼少期に親とあまり密に接していないんだ。…自分の子との接し方なんてわかるわけがないだろう。」
その言葉に部屋はしんとなった。お父様はこちらをちらりと見て、少し恥ずかしそうにする。
お父様は、実はとっても可愛らしい人でした。
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