引きこもりたい伯爵令嬢

朱式あめんぼ

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Episode.02 白銀の少年との出会い

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 ーーーコンコンコン


 「お嬢様をお連れ致しました。」

 執事らしき男の声が聞こえた。ピンセアナ伯爵が応え、扉が開く。

 ふわりと揺れた淡いピンク色に胸がドクリドクリと高鳴る。また会えるのだ、彼女に。



 「ーーーで、例の娘は見せてくれないのか?」

 父様がそう言ったのは突然だった。なんてことのないようにさらっと、そう言ってのけたのだ。

 「あれは貴族令嬢としてはまだまだ成長途中なんだ。デビューの直前になれば見せてやらんこともない。」

 溺愛している娘を人の目に晒したくはない。そんな言葉かと思いきや、伯爵は冷たい目をしていた。まるで、彼女には何も期待していないとでも言うような。

 「いいや、私は今日見に来たんだ。…どうだろう、夫人?」

 「私も夫の言うことには賛成ですの。私が立派と判断できるまではレウコスタキス卿にお見せすることはできませんわ。」

 彼女の母、ピンセアナ伯爵夫人はゆったりと微笑んだ。甘さを含みつつも美しい姿はきっと未来の彼女の姿に似ているのだろう。

 「むふ。しかしだな、どうやら既に息子が世話になったようなのだ。」

 ピンセアナ伯爵と夫人がザッと顔色を変えてこちらを見る。その勢いにビクッと肩を揺らすと、ピンセアナ伯爵は恐る恐るといった風にこちらへ声をかけてきた。

 「娘が何かご迷惑をおかけしませんでしたか?」

 どうしてそこまで彼女を心配するのかあまり理解はできないが、むしろ自分が彼女に迷惑をかけたのだ。慌ててぶんぶんと首を振り否定する。

 「いえ、むしろ私が彼女に迷惑をかけてしまったのです。お恥ずかしながら美しい庭園に惹かれている内に迷子になってしまって…彼女が案内してくれたのです。本当に助かりました。」

 僕の言葉に安心し息を吐いた伯爵。驚きを見せ心配するように目を伏せた夫人。伯爵という立場ゆえ仕方がないのかもしれないが、やはり伯爵の態度は彼女への興味が感じられない。

 「というわけだ、合わせてやってくれないか?」

 自分が見てみたいのを息子である自分を使ってそれっぽく言う辺り、本当にこの人はいい性格をしている。

 「…わかった。ハンス、ルクリアを呼んでくれ。」

 「承知しました。」



 冷静に振り返ってみても、この事態はどう考えても父様のせいだろう。

 「失礼いたします。」

 その声に震えはない。あの薔薇の香りが鼻腔をくすぐる。

 「侯爵、これが私の娘だ。ルクリア、侯爵に挨拶を。」


 「お初にお目にかかります、レウコスタキス侯爵様。私、ルクリア・ピンセアナと申します。」


 美しいカーテンシーに父様がほぅ…と感心する一方、伯爵の顔が驚きに染まるのがわかった。


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