引きこもりたい伯爵令嬢

朱式あめんぼ

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Episode.02 白銀の少年との出会い

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 「失礼いたします。」

 部屋に入ってきたのは執事の一人。

 「…ハンス、どうしました?」

 部屋に入れたはいいものの、喋らなくなったわたしを見兼ねてソフィーナが質問を投げかける。

 「旦那様がルクリアお嬢様をお呼びです。」

 「え、でも旦那様は今レウコスタキス侯爵様のお相手をなさっているのでは?」

 「ええ。お嬢様をレウコスタキス侯爵様にご紹介する、とのことです。」

 その瞬間わたしの体から血が引いた。知らない人と話すなんて不可能だ。

 お母様はわたしのことを知っているけれど、お父様は知らないのではないだろうか。娘がこんな出来損ないであると。

 「…お断りはできませんね。」

 「侯爵様も是非、と。」

 侯爵様がどんな人かは知らない。しかし、今のわたしにとってはどんな人でも一緒。心臓の鼓動が嫌に早くなり、指先がカタカタと震える。

 「…無理、です。」

 こぼした言葉にソフィーナがこちらを見るのがわかった。


 「ルクリアお嬢様。」


 ふわりとしゃがんだソフィーナが、下からわたしを見上げる。そして、そっと手をとった。わたしの指先の震えに気付いて、震えを抑えるようにキュッと握る。

 「お嬢様は、それまでたくさんの努力を重ねてきました。怖かったでしょうし、寂しかったでしょうし、辛かったことと存じます。」

 頑張ってきた。お兄様がいなくなってから、怖くない人なんてほとんどいなくて、目を合わすことさえできなくて。

 「しかし、お嬢様がどれだけ頑張ろうと、それは他人ひとには見えません。見えないと、出来ないのではなく、やる気がないと言われます。」

 ソフィーナはじっとこちらを見る。わたしのことを真剣に想ってくれているのがわかって、怖いけれど、少し怖くなかった。

 「大丈夫です。怖いと言いながら礼儀作法だってマンツーマンで頑張ってきたではありませんか。最初は怖いとよく逃げていましたけど、今では講師の方も褒める程ですから。」

 ソフィーナの言葉を聞いても、やはり怖いと思うし、行きたくないと思う。けれど、ここまでわたしを見てくれている彼女やお母様に応えることくらいはしなくてはならないとも思う。


 「ーーー行きます。」


 緊張で声は掠れていた。怖くて、不安で、今にもあの迷宮庭園へ逃げたくもなるけれど。呼吸だって整わないけれど。手だって、ソフィーナが手を離した途端にまた震えてしまうけれど。

 それでも、わたしを支えてくれる人はいるから。



 お兄様がいなくても大丈夫だよって、頑張れるよって、報告できるようになりたい。



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