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Episode.05 始まりの鐘
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しおりを挟む翌朝。目覚めは最悪だった。頭痛がひどく、喉は渇き、体は熱っぽく思い。さらには、鏡で見た目元がみごとに赤く腫れ上がっていた。
「ルクリア様。お目覚めになられたんですね。」
あまりの怠さにベットへとリターンしたところで、ソフィは足音もなく近づいてくる。彼女はその顔をやはり心配の色に染め、手に持つ食事をサイドテーブルへと置いた。
「すみません、少しお顔に触れさせていただいてもいいですか?」
こちらを見て、わたしが頷くのをしっかりと確認してから、ソフィはそっと額に触れた。ほっそりとした手は冷たく、その心地良さについと目を細める。
目の前のソフィが驚きに目を見開くのがわかった。
「あ、…ごめん、さない。つい、気持ちよくて…。」
ソフィの反応に自然と出た謝罪の言葉に、彼女はいいえ、と頭を振った。
「ルクリア様、お辛そうですのでお食事はまた軽いものに変えますね。お熱がありますし、フレッド様をお呼びいたしましょうか?」
この状態で初日の講義に臨めるかと問われれば、間違いなく答えは否だ。それならば、医者に診てもらう必要はあると考えられる。白衣のフレッドの人を見る目は苦手だ。
しかし、今そんなことを言えば、ソフィはきっと困ってしまう。苦手だから嫌、というのは明らかにわたしの我儘だ。
「…そう、ね。」
わたしの言葉に、嫌がるのを予想していたのかソフィはホッと息を吐いた。そして、ディルクにフレッドを呼ぶように頼む。
わたしが白衣のフレッドを苦手としていることに、きっと彼女は気付いているのだ。
「…ルクリア様。」
ソフィはタオルを冷水につけたところで、その手を止め、静かにわたしの名前を呼ぶ。
「…どうしたの。」
なんとなく、彼女が聞きたいことがわかってしまった。
「ルクリア様は、人間が苦手、なのですか。」
きっと、これは、わたしがあの頃から成長できず、苦手だと逃げ回っている罰なのだろう。本当に、自分の成長のなさには笑えてくる。
お兄様の愛情も、お母様の配慮も、メイドたちの優しさも、わたしは引きずるだけで、彼らの想いを無下にしているのだ。
「…そうね、苦手、なのでしょうね。」
苦手、という簡単な言葉で済むのならどれほど良かったことかと思うほどに。それほど、わたしは人間と接するのが苦手、なのだ。
「…人の視線が怖いの。手は震えるし、冷や汗が流れる。鼓動が大きくなって、頭痛がするの。ついには息が苦しくなって、吐き気がこみ上げてきて…そして、私は逃げるの。」
ソフィは、その瞳を大きく見開いてこちらを見ていた。
「逃げて楽になろうとするの。楽になんてなれないのに。いつも、いつも、そうなの。」
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