現世では底辺配信者の僕が『バズる才能視(ビジョン)』で異世界の美少女をプロデュースしました

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第24話 初めての修行

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 翌朝、僕たち三人は修行のため道場に集まった。アカリがゼインさんに稽古をつけてもらう形で、僕はその様子をカメラマンとして撮影、配信していく。

「お主らも知ってのとおり、武道会まで残り半月ほどしかない。その期間で剣の基礎をすべて叩き込むとなると、こちらも厳しい修行を課さざるをえない。覚悟はできておるな?」

「はいっ! ゼインさんよろしくお願いしますっ!」

《ついにアカリちゃん初の修行編キターーーー!》

《天才美少女剣士が覚醒する第一章。俺たちはひょっとすると、その伝説の1ページを目の当たりにしているのかもしれないwww》

《トベ、よそ見していいとこ撮り逃したりすんなよ、しっかり頼むぞ!》

「よろしい。ではまずは構えの基本から。竹刀を持って!」

「は、はいっ!」

「よいか、剣術には『五行の構え』という基本があり、それぞれ『中段の構え』『上段の構え』『下段の構え』『八相の構え』『脇構え』の五つが存在する。まずは基本中の基本、中段の構えから!」

 アカリはゼインさんの厳しい指導の元、懸命に修行に取り組んだ。

 元々が人の意見を聞き入れる素直な性格の上、持っている才能も極上とあっては、まるで乾いたスポンジが剣術という水を吸収していくかのように、アカリは素人の僕が見てもすぐに動きが違うとわかるぐらい、短時間でメキメキと腕を上げていった。

「むう……! この娘、剣の才にあふれておるとは思っておったが、まさかこれほど筋が良いとは……!」

《アカリちゃんがひたむきに頑張ってる姿、格好いいよ~!》

《頑張れアカリちゃん!》

「せいっ! はっ! でやあっ!」

 ゼインさんから出される課題を、次々にクリアしていくアカリ。その成長スピードはゼインさんも予想できていなかったようで、アカリがあまりに素直に自分の教えを吸収していくものだから、教えるのが楽しくなってきたのだろう、指導にもドンドン熱が入っていく。

「違う! 剣術とは単純な斬り合いではなく、相手との『間合い』をいかに制するかの読み合いであると知れ! 間合いを制するもの百戦危うからず! 覚えるまで何度でも復唱!」

「は、はいっ! 違う! 剣術とは単純な斬り合いではない!」

「違う! そこではない! 間合いを制するのとこじゃ!」

「す、すいませんっ! 間合いを制するもの百戦危うからず! 間合いを制するもの百戦危うからず!」

「よーし、そうじゃ! よいか、その基本を絶対に忘れるな!」

《アカリちゃんおっちょこちょいwwww》

《違う! のとこまで復唱しててワロタwwww》

《こういう才能あるとこと抜けてるとこのギャップがいいんだよなwwww》

 厳しくも熱のこもった指導に、アカリも自分の腕がドンドン上達していることを感じたのだろう。アカリのあんなに楽しそうな表情を見るのは、僕も初めてだった。

 きっといままで感じたことのない、この上ない『やりがい』というものを感じているんだと思う。アカリの成長に僕は目を細める。

「あっ、白熱のお稽古中すいません! そろそろお昼ですけど、お二人はどうされますか?」

「そうか、もうそんな時間か。どうするアカリ殿」

「すいませんトベさんっ! このキリの良いところまではどうしても覚えておきたいので、わたしはあとでいただかせてくださいっ!」

「わかった! 全然大丈夫だよ、気にせず修行がんばって!」

 言いながらも、僕はアカリが修行を終えるまでお昼ご飯には手をつけず、応援しながら待つことにした。やっぱり一緒に食べたほうが絶対に美味しいし、アカリがあんなに頑張ってるのに、僕一人が先に食べるわけにはいかないじゃないか。

 それから一時間ほどが経っただろうか。キリの良いところまで修行を終えたアカリは、食事になにも手をつけていなかった僕を見てビックリした。

「えっ! 食べてなかったんですか?」

「そんなことはいいから、ほら、早く座って。頑張るばかりじゃなく、休息も大切な修行の一つだよ」

「トベさん……。あ、ありがとうございます……」

「こらこら、泣くな泣くな。これからトップ配信者を目指すのなら、辛いことはもっともっとたくさん待ち受けてるぞ。涙は僕なんかのために流すんじゃなくて、そのときのために取っておきなさい」

 ハンカチでアカリの涙を拭うと、三人でゼインさん手作りのお重を美味しくいただいた。
 
 よほど初めての修行が楽しかったのだろう、お昼ご飯も慌てて詰め込むようにして、アカリは修行に戻っていった。

「すいません、さきほど覚えたことを忘れないように、反復練習をしたいので。あっ、ゼインさんはどうぞごゆっくりされてください」

 ゼインさんが落ち着いて食事をとれるように配慮しながら、アカリはまた一心不乱に竹刀を振り始めた。

 ちょうど良い機会なので、ゼインさんに尋ねてみる。

「それで、実際どうですかアカリは。武道会まで強くなれる見込みはありますか」

「見込みどころか、ワシがこれまで指導してきた中で、間違いなく一番の素材じゃよ。元々の才能に加え、素直で聞き分けもいい。ひたむきに努力する剣への情熱も兼ね備えている。まさか生きていて、あのブレイズの上を行く逸材にめぐり逢えるとは思わなかったよ。この子は必ずや強くなるであろう。ひょっとすると、この世界で一番の剣豪にな」

「そうですか! それはよかった!」

 ゼインさんは喜ぶことばかりではないというように、手で僕を制した。

「だが、今回はなにぶん時間が足りん。どんなに価値のある宝石でも、それを完璧に磨き上げるには時間が必要じゃ。まだ不完全な状態で戦いの場に上げてしまうことには、やはり一抹の不安がある。もし思わぬ強敵と対峙して、あの娘の未来が断たれるようなことになれば……。磨き抜かれた状態であれば、本来は歯牙にもかけないような敵であったとしても、宝石になる前に対峙してしまえば、その輝きも暗黒に塗り潰されてしまうやもしれん。わかっておるな? それを事前に食い止めるのがお主の役割。あの娘の才能を活かすも潰すも、すべてお主にかかっておるのじゃ」

 これは……『忠告』……。ゼインさんから僕に向けての……。アカリの才能や人柄を知り、その将来を憂うからこその貴重なお言葉だ……。

 大丈夫、そんなことにはならないと思いたい。

 なぜなら、僕にはこの『目』がある。これでアカリにとって真に危険な敵は回避するし、僕がしっかりしていればそんなことにはならないと思う。

 いや、思うではなく、そんなことはあってはならないし、たとえこの身を賭してでも、僕が絶対にそんなことにはさせない。

 アカリの未来が潰される? 冗談じゃない、アカリの未来はそのまま僕にとっての未来だ。なにをやったところで、アカリと二人でないと意味がないんだ。どんな困難な道のりや巨大な壁でも、この子と二人なら乗り越えられるって、そう信じてるから。

「……大丈夫です。そうなる前に、僕が絶対に食い止めますから」

 ゼインさんにも僕の鬼気迫る表情が伝わったのだろう。言葉こそ発しないものの、何度か頷いて立ち上がると、またアカリの指導に戻っていった。
 
 その日、外が真っ暗になるまで、アカリとゼインさんの声は道場に響いていた。
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