現世では底辺配信者の僕が『バズる才能視(ビジョン)』で異世界の美少女をプロデュースしました

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第25話 発見

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 修行開始から十日が経ち、アカリとゼインさんの修行も佳境に入っていた。

「本日は『五行の構え』の一つ、脇構えの修行から始める。準備はよいな」

「はいっ! 本日もよろしくお願いしますっ!」

 道場に二人の激しい打ち合いの音が響く。

 ここ一週間と少し、僕は配信のカメラマンを務めていることすら忘れて、毎日アカリの成長を目を細めて見守っていた。

 なにしろ、僕は対象のBPが視れるため、アカリが文字どおり『目に見えて』成長していっているのがわかるのだ。

 出逢った当初は1万6436だったアカリのBPは、ゼインさんに毎日剣の基礎を叩き込まれることで、いまでは3万4765まで急成長を遂げていた。

 自分がその才能を見いだし、信じた子の成長を、視聴者の誰よりも近くで見守り、肌で感じる。

 現世でたった一人、なにが答えなのかもわからず孤独に戦っていた僕にとって、それはこの上なく幸福な時間だった。

「ありがとう……アカリのおかげで、僕は毎日本当に幸せだよ……」

《……ん? いまなんか聴こえなかった?》

《いや、別に?》

《トベ、なんか言った?》

 そんなボソリとつぶやいた僕の小さな声は、激しい打ち合いの音にかき消されて届くはずはなかったけど、直接聞かれるのはそれはそれで恥ずかしいから、それぐらいが僕たち二人にとってはちょうどいいのかもしれないとも思う。

 このまま永遠に続いてほしいと思える、とても贅沢で幸福な時間。

 だが、人間幸せな時間であればあるほど、過ぎるのもまた早く感じるらしい。配信画面のコメントに、ある『変化』が起きたのはそのときだった。

《トベ! トベ! コメント見ろコメント!》

《大変なことが起きてるぞ!》

 大騒ぎする視聴者さんたち。一体なにをそんなに慌てているのかと画面を見ると、そこには衝撃的な文字が踊っていた。

《ミモザさん見つかったよ!》

 なに……? ミモザさんが……?

《特定班の人が見つけてくれた! いまそっちにデータ送るらしい!》

 僕は配信画面を縮小すると、慌てて送られてきたデータを見た。

 すると、そこにはたしかに、あの写真から二十年後と思われる一人の女性が映っていた。

「これは……!」

《まったく、いくら俺たちといえど、これを捜し出すのにはずいぶんと骨が折れたぜ?》

《トベになんか報酬はずんでもらわなきゃなwww》

《ミモザさんはイーストエリアを出て南のサウスエリアまで移動していた。これだけ離れてしまっては、いくら婚約者といえど見つけられなかったわけだ》

《ミモザさんはサウスエリアのある大衆食堂で働いていた。食堂に突如として現れた看板娘ということで、町の労働者たちにずいぶんと人気があったらしい。当然見合いの話なんかは枚挙にいとまがなかったようだが、いまに至るまで独身を貫いているみたいだな。まるで、誰かさんに誓いを立てているかのように》

 ミモザさん……それじゃ、いまもあなたはブレイズのことを……。

《ミモザさんは、もう忘れたい、そっとしておいてほしいと言っていた。……どうするトベ? それでも、彼女になにか語りかける言葉はあるか?》

 僕は、力強く頷いた。

 どんな理由があったとしても、いまもこんなに愛し合っている二人が、離ればなれになっていいわけがないじゃないか。

 ミモザさんはブレイズとの誓いをいまも守り、ブレイズはミモザさんをいまも待ち続けて、二十年間ずっと剣を握らないでいる。互いが互いをこんなにも想い合っているのに、その想いが強ければ強いほど、運命はいたずらな音色を奏でたなんて……。

 こんなことが許されていいはずはない。運命を『あるべき姿』に戻すことが、僕に課せられた使命だろう。

 使命という自分の中から出てきた言葉に驚き、僕はハッと気づいた。

 あの女神の言葉の真意……。

 『その世界は、モンスターと共生する人々が、そのさまざまな様子を配信することで暮らしている世界。その世界に貢献をしてもらいます』

 この世界への『貢献』とは、本来は結ばれるはずの運命だった二人の、ねじれてしまった赤い糸を、あるべき姿に戻すことでもあるのではないか。それが自ら命を絶つという愚行を犯してしまった、僕に課せられた『責任』なのではないだろうか。

 普段とは明らかに違う僕の様子に、稽古中の二人も気づいたようだった。

 僕はまず、なによりも待ち遠しかったことだろう、ゼインさんにその吉報を伝えた。

「ゼインさん! ミモザさんが見つかりました!」

「な、なんじゃと! おお……神よ……!」

 あまりの驚きと感動に、ゼインさんはその場に膝から崩れ落ちた。

「よ、よかった……! ブレイズさん……ミモザさん……!」

 ブレイズとミモザさんに誰よりも強く感情移入していたのだろう、アカリは人目もはばからず号泣した。

《よかった……本当によかったよなぁ……。二十年間弟子たちの身を案じていたゼインさんも、そんな二人を本気で心配していたアカリちゃんも……》

《おい、なんとなく笑えるチャンネルだと思って登録したのに、急に泣かしにくんなよなぁ……》

《最初はふざけたチャンネルだと思ってたのになぁ……。ほんと、なんてチャンネルだよ……》
 
 僕は特定班のみなさんに伝えた。

「すぐにミモザさんにつないでください。僕が話してみます」
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