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追放されました
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「……勇者、残念だが君をこのパーティから追放する」
まだ陽が高くあがっている時間帯の酒場には勇者パーティの四人と酒場の店主が一人。
突然、追放を言い渡された勇者の頭の中に先程の言葉がリフレインする。
勇者はその言葉の意味は理解出来た。しかし何故それを勇者である自分に宣告するのか――それが理解出来ない。
「えっ……、何の冗談だよ……騎士。う、嘘だよな?」
勇者は動揺した声で騎士に聞き返す。
手が小刻みに揺れ、持っているグラスがテーブルにあたりカタカタと音を立てる。
「これは冗談でも、嘘でもない。俺たち三人で決めたことなんだ」
騎士は真っすぐに勇者の目を見て言い切る。
勇者は確認するように騎士の横に座る賢者の老人と僧侶の女性へ視線を向ける。
二人は神妙な面持ちで勇者に視線を返した。
「そ、そんな……俺たち今までうまくやってきたじゃないか……」
「ああ、そうだな。でもな俺たち、もうお前にはうんざりなんだ!」
そう言いながら騎士はテーブルに拳を強く叩きつけた。
今まで様々なモンスターと対峙してきた勇者。どんなに危機的な状況だろうと恐れなど感じたことは無かった、そんな彼が初めて味わう恐怖という感覚。それを信頼していた仲間から与えられるとは思いもしなかった。
聞きたいこと言いたいことが次から次に湧いて来るが、勇者はそれをうまく言葉にすることが出来ない。
この酒場に来てから何杯も酒を飲んで勇者の喉は潤っている。
それなのに砂漠を何日も彷徨った時のような激しい喉の渇きを感じていた。
勇者は手に持った酒を一気に流し込み、やっとの思いで言葉を発する。
「う、うんざりって……俺は必死に頑張って……。じ、自分で言うのもなんだが俺はお前たちの足を引っ張るような無能ではないし、むしろそこそこ強いと思っているくらいだ!?」
「ああ、そうだそうだよ。勇者は無能なんかじゃない。ただお前は大きな勘違いをしているぞ」
勇者の物言いにすかさず騎士が反論した。
勘違いをしていると言われ、勇者はなんのことかと必死に今までの言動を思い返すが何も思い当たることがない。
これまで旅をする中で多少は意見が食い違うこともあったが、そんな時は互いを尊重し、どちらもが納得出来る答えを出してきた。本気の喧嘩や罵り合いなどしたことは一度も無かったのだ。
勇者は答えを教えてくれと、すがるような顔で騎士を見る。
「分からないのか勇者。それは今さっきお前が言ったことだよ」
一体自分はなにを言ってしまったのだろうか。
突然追放を言い渡され動揺していたので変な事を言ってしまったのかと勇者は焦る。
だめだ、ほんの数秒前の自分の発言さえ思い出せない。
冷静になろうとするが騎士の言葉が頭の中を駆け巡る。それに加え早くなる心臓の音が冷静になろうとする勇者の頭と心を邪魔する。
「頼むよ騎士、意地悪しないで教えてくれ。俺のなにが気に食わないんだ!?」
騎士は賢者、僧侶と顔を見合わせる。二人は騎士の目を見ながらこくりと頷いた。
その様子を見た勇者は教えてくれと言った事を後悔した。あれだけ信頼していた仲間たちから、自分はなにを言われるのか、それが辛辣な言葉だとしたらどうすればいい。
胸が締め付けられるような不快感。勇者は呼吸さえ出来ずにいた。
「いいだろう。どうせこれが最後なんだ……はっきりと言ってやる……」
静かな酒場に緊張が走る。
店主がグラスを拭く音すら騒音に思えるような静寂の中、騎士が口を開く。
「……勇者、お前は強すぎるっ!!」
心臓が大きく脈打った。だがそれは騎士の言葉の内容を受けてではない。
単純に騎士の声の大きさに驚いたからだった。
強すぎるとはどういう意味だろう。そのままの意味で受け取っていいのだろうかと勇者は戸惑い、考える。
だが、そのおかげで勇者は少しだけ冷静になることが出来た。
「……え、それが俺の勘違いってやつか?」
「ああ、そうだ。お前はさっき自分はそこそこ強いと言っていたが、それが大きな大きな勘違いだ! お前はそこそこなんてもんじゃない、強すぎる。最強すぎるんだよ!」
騎士は悔しそうな声と共に何度も拳をテーブルに叩きつける。
賢者と僧侶もうんうんと何度も頷いている。
「もしかして、それが俺の追放理由なのか……?」
勇者がそう言うのも仕方ない。冒険者として強さとは最も重要なことだ。
追放した相手が実は超有能でした。とは違う。現に勇者は最強という認識が三人にはあるのだ。
普通に考えればそれが追放の理由になどなり得ない。
だが三人にとってはそれが勇者を追放する理由だった。
「これ以上の理由なんてあるか! お前は自分の強さを全く理解していないんだ。そしてそのことが俺たち三人にとって、どれだけ苦痛か、お前に分かるか!?」
「俺たち冒険者なんだ、強くて悪いことなんて何もないじゃないか」
「お前はいいだろうが、俺たちは違う!」
「騎士は自分が可笑しなことを言っていると自覚した方がいい」
勇者は強さが理由で追放されるなど納得できない様子だ。
これは自分を追放するための訳の分からない口実で、本当の理由があるのではないかと思い始めていた。
「お前の強さは俺たちにとって害でしかないんだ」
「が、害!?」
「冒険者パーティとは本来それぞれの足りない部分を補いつつ最大限の力を発揮する。そういうものだろう?」
「そうだけど、俺たちはそれが出来ていたじゃないか」
「いや、出来ていない。勇者といるとそれが何一つ出来ないんだ」
騎士は勇者を睨みつけ言葉を続ける。
「お前が一人で全部やってしまうからな!」
それを聞いた賢者と僧侶はまたもうんうんと頷く。
「勇者は先日の古城のリッチとの闘いを覚えているか?」
「ああ、もちろんだ」
騎士が言っているのは、かつて大陸の大半を支配していた大王が転生し、魔王ですらその扱いに手を焼いていたという凶悪なリッチのことだ。
古城は辺鄙《へんぴ》なところにあり、そこに行きつくまで二十日以上もかかった。旅の途中様々なことがあった、その時の旅の思い出が勇者の頭に浮かんでくる。
浮かぶのは仲間たちの笑顔ばかり……。本当に楽しい旅だった。
「……そ、そうだよ。あのときは古城まで皆で力を合わせて攻め込んだじゃないか」
「確かに古城までは力を合わせていたな……。しかし、それはあくまで古城まで、古城の入口までだ! あの時、お前は自分が先行して城の中の様子を見てくるだけといって一人で入っていったよな!?」
騎士の言う通り勇者は古城の城壁の前まで辿り着くと、一人だけで古城に入っていった。
しかしそれは城の中にどんな罠があるか分からなかったからだ。
大切な仲間を危険な目に合わせる訳にはいかない、そう思った勇者は己を犠牲する覚悟で古城に攻め込んだのだ。
「そしてお前はたった数分程度で戻って来た……。あの凶悪なリッチを倒してな!」
「――っ!!」
様子を見るだけと言っておきながら勇者はリッチをあっさりと倒して戻って来たのだった。
騎士たちはそのことに対して勇者に怒りを感じているようだ。
「一人だけで勝手にリッチを倒したことにも腹が立つが、なにより腹が立つのはお前のその強さだ。あれだけ凶悪と言われたリッチを数分で倒して、息も切らさず戻って来るなんてありえないんだよ……」
騎士の握った拳がワナワナと震える。
「勇者と出会うまでは俺もそこそこ名の売れた冒険者だったんだ……。それなのに俺がやっていることは旅の途中の料理や雑務ばかり」
勇者が強すぎるが故、モンスターとの戦闘において騎士が出る幕は皆無に等しかった。
「戦闘ではやることが無いから俺は毎日毎日料理ばかり。そのせいで俺の戦闘能力は下がる一方、対して料理のスキルはどんどん上がっていく……」
騎士は自嘲気味に語る。
「でもこのままではダメだと感じるようにもなった。俺も、もっと冒険者として活躍しなくてはいけない、と……。だから勇者とはもう居られないんだ」
騎士は頭を抱えるとそのまま何も言わなくなった。
良かれと思ってしていたことが、これほどまで騎士を追い込んでいたとは知らなかった。
勇者は騎士にかける言葉が見つからない。
「も、もしかして老師もなのか?」
勇者は老師と呼ばれる老人の賢者に話を振った。
老師は深く息を吐くと、静かに語り始めた。
「……そうじゃな。儂《わし》も騎士と同じじゃ。勇者は物理攻撃だけでなく魔法も一級品じゃからのう、最近は自分で魔法を使った記憶もないぐらいじゃし……」
そう言うと老師は目を伏せ続ける。
「儂が何年、いや何十年もかけて編み出した魔法を、勇者はあっさりと会得してしまう、それはまるで鳥が空を飛ぶのが当然のようにじゃ……。勇者と居《お》るとただ介護されているだけの老人のように思えて仕方ない……」
老師は顔を上げる。その目は遠くを見つめているようだった。
「じゃがな勇者よ、儂もまだまだ現役の冒険者じゃ。隠居するにはちと早い。お前さんとこれ以上一緒に居《お》ると、騎士が言ったように自分がダメになる気がしたんじゃ……。勝手なことを言っておるのは十分承知しておるが、分かってくれんか」
諭すように語る老師だが、その瞳はどこか寂しそうだ。
騎士のような感情的な言い方より胸に来るものがあった。
「老師……」
勇者は最後に僧侶に尋ねる。
「姫も騎士や老師と同じなんだな……」
「そうよ!」
僧侶は短く答えた。
姫と呼ばれているが王族関係の人間ではない。この冒険者パーティの中で唯一の女性だからそう呼ばれているだけ……正確に言えば自分から『姫』と呼べと言ってきたのだ。実際は回復魔法や補助魔法がメインの僧侶だ。
「このまま勇者と居たら誰も私を見てくれないんだもん! 騎士は勇者の母親みたいになっちゃうし、老師はただの好好爺《こうこうや》だし! このパーティでただ一人の女なのに誰も私に関心がないんだもん。全部勇者のせいよ!」
一人だけこれまでの流れとは違う物言いの姫に勇者は怪訝な顔をする。それは騎士と老師も同じだった。こいつは何を言っているのだろう、と。
「普通、こんなに若くて可愛い女の子がいれば、ちょっとくらいの間違いがあってもいいじゃない。何のために私がこんな格好してるか貴方たちは考えたことがあるの!?」
そう言う姫の恰好は僧侶という職業でありながら胸元の開いたセクシーな服装をしている。大きな胸は喋る度に上下にポヨンポヨンと揺れていた。
冒険ばかりで女性に対してあまり興味がない勇者と騎士は、彼女の言っていることがほとんど理解出来ず首を傾げる。
老師だけが理解出来たようだが、くだらないと言った様子で、はあと大きな溜め息をついていた。
「騎士はこの恰好を見て、もっと露出を抑えた服装にしろとか私に対しても母親みたいなこと言うし!」
「そ、それはそうだろう。若い女が意味も無く肌を見せるものでは無い」
「意味無いことなんてない! 少しは興奮しなさいよ! 老師もなんか腑抜けてて、ジジイならジジイらしくエロい目で私を見なさいよ!」
「……ええ~、儂が悪いのか」
「これも全て勇者ばかり構っているせいよ、だから勇者が居なくなれば皆が私をエロい目で見てくれるの!」
「「…………」」
姫はオーバーなアクションで胸を揺らしていた。それは自分に誰も興味を示さないことを不満に思い、何とかしようと試行錯誤し身に着けた技だった。
店内には店主が棚に食器を片付ける音だけが響いていた。
「そ、そういうことだから、勇者には悪いがお前との関係も今日で終わりだ。それにお前の後継はもう用意してある」
騎士は酒場の外に待機させていた男を呼んだ。
軽やかな足取りで近づいてきたのは、整った身なりでその顔は自信に溢れている、だがどこか頼りない雰囲気の青年。
軽やかな足取りではあるが、勇者たちと青年の距離はなかなか縮まらない。ダンスをするように三歩進んでは二歩下がる。そして青年は時折「はっ」「あうっ」などと奇声を上げていた。
やっと勇者たちのテーブルに辿り着いたのは騎士が彼を呼んでから二分後のことだった。
「初めまして勇者様。この度、名高き勇者パーティに加入することになった者です。ああ、失礼、勇者様はたった今追放されたので正しくは元勇者パーティですかな。まあ、今後のことは何も心配なさらずせいぜい頑張ってくださいな」
鼻につくような口調と身振り手振りで話す青年。言い終わると勇者の肩をぽんぽんと叩き、勇者を見下すように顔をニヤつかせた。
勇者はその青年をまじまじと見た後、騎士に耳打ちする。
「お、おい、これが俺の後継なのか? どう見ても弱そうだし……何というか、これはただの金持ちのバカ息子って感じだぞ。こんなので本当にいいのか?」
それを聞いた騎士は口を緩ませる。
勇者が何を言ったのかは青年には聞こえていない。それでも青年の顔はニヤついていた。もしかすると自分を賛美する内容だと思ったのかもしれない。
「ああ、そうだ。勇者の言う通りだ。こいつはどう見ても弱そうだ。弱そうというか確実に弱い、そしてバカだ。だがそれがいい!」
騎士は大きな声で答える。
自分を抱きしめるようなナルシストっぽいポーズを取っていた青年は、それを聞き驚いた表情で騎士を見る。
「わ、私がバカで弱いですって……!?」
「これだけ弱いやつが一緒なら本来の俺の実力が出せるし、もう料理なんてしなくて済むんだ! 老師も姫もそうだろう!?」
「ふむ、確かにそうじゃな。こんな頭の悪そうなやつなら大した魔法も使えんじゃろうし、かつて大賢者と呼ばれたこの儂の腕が鳴るわい」
「ええ、そうね。これで私の本来の立ち位置がはっきりするわ。これだけ欲望にまみれてそうなバカなら私を絶対エロい目でみてくるわ!」
「「…………」」
相変わらず姫の言い分だけは誰にも理解されないようだ。
騎士は大袈裟に咳ばらいをし話を戻す。
「これで分かっただろう、勇者よ。もう何も言わずにここから去ってくれ……」
そう言うと騎士は勇者から目を背けた。
「騎士、老師、姫。俺はお前たちのことを本当に大切な仲間だと思っていたのに……、お前たちは違ったんだな……」
老師と姫も同じように勇者と目を合わせない。
怒りなのか悲しみなのか。両方か或いはどちらでもないような複雑な感情が勇者の心の中に渦巻く。自分が今まで大切だと思っていた場所が、こんな弱そうなバカでも務まるモノだったのかと。
勇者の中で何かが崩れていく――。
「ああ……そうかよ……。分かったよ! お前たちは俺のことをずっと邪魔な存在だと思っていたんだな、そんな奴らを信頼してた俺が馬鹿だったよ! 希望通りどこにでも行ってやるよ、今まで世話になったな!」
勇者は大声と共に立ち上がり床に置かれた荷物を雑に掴むと酒場の出口に向かった。
そして扉に手を掛けた勇者は顔だけを騎士たちに向け、
「最後にこれだけは言っておく。俺はお前たちと今日のこと、この場所を一生忘れないからな!」
そう捨て台詞を吐いて勇者は酒場から出て行った。
勢いよく閉められた扉は壊れそうなほどの大きな音を立てた。
誰も居ないと思えるほどの静寂が酒場の中を包む。
残された者たちは望み通り勇者を追放したというのに皆暗い顔をしている。
「これで良かったんだよな……」
再び頭を抱えた騎士が呟くように小さな声で発する。
「分からん。儂も長く生きておるが、何かを決断した時にそれが正しいかなんていつまで経っても分からん」
老師は騎士を慰めるように彼の肩に手を置く。騎士の肩は小さく震えていた。
※ ※ ※
数日後、森の中で闘う騎士たちの姿があった。
モンスター退治を請け負った彼ら元勇者パーティは躍動していた。
騎士が剣を振るう度にモンスターの身体は真っ二つに切り裂かれ、騎士の通った後にはモンスターの死骸が道筋のように転がっている。
老師の攻撃呪文は一帯の敵を一瞬で殲滅させていく。それほどに強力な魔法にもかかわらず森の木々には一切損傷がない。かつて大賢者と呼ばれた老師だから出来る超高等魔法だ。
姫はその大きな胸を無駄に揺らしながら、騎士の体力回復と老師の魔力を同時に回復させていく。
勇者が強すぎたせいで今まで出る幕の無かった彼らだが、その実力は並みの冒険者ではない。
勇者の代わりに加入した青年は何も出来ないどころか、彼らに置いて行かれないよう付いて行くだけで必死だった。
一通りモンスターを倒した騎士たちは森の中の川原で野宿の準備をしていた。
勇者が居た時には無かった幌馬車には大量の食糧が積まれ、青年が連れて来た専属のシェフが忙しそうに夕食の準備に取り掛かる。勇者が思った通り青年は金持ちのボンボンだった。
数十分後、肉や魚の焼ける良い香りが辺りに充満していた。
「さあさあ、皆さん。私の専属シェフお手製の豪華な料理が出来ましたよ」
青年は自慢げに両手に料理を持ち、それらを騎士たちに振る舞う。
街の店で食べるような豪華で手の込んだ料理ばかり。見た事もない食材には、これまた見た事のない色のソースがかけられキラキラと輝いていた。しかしその見た目と香りは空腹の胃を激しく刺激してくる。それは食べる前から美味しいと言ってしまいそうなほどの極上の料理だった。
「これはとんでもなく豪華な料理だな」
「初めて見る食材ばかりじゃのう」
「きゃー、綺麗~、美味しそう」
料理を前に興奮する三人。姫はぴょんぴょんと身体を揺らしながら感嘆の声を上げる。揺れる身体に遅れて大きな胸が弾んでいる。しかし姫の視線は料理ではなく周りの男性陣に向いていることは置いておこう。
「さあ、冷めないうちに食べましょう」
青年の言葉を合図に騎士たちは料理を口に運んだ。
一口食べるだけで味と香りが口いっぱいに広がった。
「う、美味い……」
騎士は初めて食べる料理に興味津々のようだ。
フォークで食材を細かく分けじっくりと眺めながらブツブツとなにか言っている。
かかっているソースだけを口にし、鼻から空気を吐いて何の食材が使われているのか確かめている姿はまさに料理人のようだった。
「うーん! おいしー!」
姫は料理を口に入れ味わう前から美味しい美味しいと騒いでいた。
青年に見えるように、わざとらしくソースを大きく開いた服の胸元に落とし、手ですくい舐め取っている。青年はどうしたものかと困惑しているようだ。
「ほんまに美味いのう」
老人である老師にもこの料理は口に合ったようだ。ニコニコとしながら料理を次から次に口へ運ぶ。
「はあ~、こんな料理は初めてじゃのう。のう勇者よ――」
「あっ……」
『言っちゃったよ』と言うように姫は老師を見た。
老師はしんとした周りの反応を見てから自分が言ったことに気が付いた。
「……のう。のう騎士よっ」
かなり苦しい誤魔化し方だった。
騎士は何も聞いていなかったという素振りで老師に「ええ」と返す。必死に作った笑顔は引きつっていた。
翌日、今夜も青年専属のシェフが豪華な料理を振る舞う。
今日も騎士は初めて見る料理に興味があるようで、食材と味付けを確かめるようにじっくりと味わっていた。老師は昨日のこともあり余計なことを喋らないように黙々と料理を食べ、姫は相変わらず、その大きな胸をいちいち揺らしていた。
数日が経ったある日。老師と青年は老師が作った簡素な人形を前にしていた。
老師の合図で青年は人形に向かい攻撃魔法を唱える。小さな炎が人形に向かいゆっくりと飛んでいく。炎は人形に着弾すると少しだけ大きく燃え上がった。青年は「どうですか私の魔法は」と得意気な顔でポーズをとる。老師は小さく溜め息をつき、青年に見本を見せる。
呪文を唱えると老師の手を炎が包む――瞬間、人形が置かれた地面から雲に届きそうなほどの大きな火柱が上がる。人形は燃える暇もなく一瞬で灰になっていた。
「こうじゃ」
「こ、こうじゃと言われましても……」
老師が放った魔法は対象だけを的確に仕留める高等魔法だった。ただ家が裕福なだけでこれといった才能のない青年にそんな魔法が使えるわけが無かった。
「はあー……。こんな初歩の魔法さえ使えんとはな……」
――老師と勇者が出会った頃の話。
同じように老師と勇者は人形の前で魔法の訓練をしていた。老師は見本として魔法を勇者に見せる。灰になった人形を見た勇者はキラキラと瞳を輝かせていた。次は勇者の番じゃと今見せた魔法を勇者に唱えるよう指示する。
勇者は老師を真似て呪文を唱えると天に向かい大きな火柱が上がる。その火柱は雲を突き抜け本当に天まで届いていた。人形は灰すら残さずその姿を消した。人形があった地面は大きくえぐれクレーターのようになっていた。
「ああ~、だめだ。上手くコントロール出来ねぇ。やっぱり老師のようにはいかないな」
「そ、そうじゃな。これではとてもじゃないが危なくて戦闘では使えんのう……」
あれほどの威力の魔法を放っておいても勇者は老師に対しての敬意を忘れない。それが嫌味で言っているのでは無いということは勇者の目を見れば分かる。純粋に老師を敬っているのだ。
それから老師は勇者に様々な魔法を教えた。教えたばかりの魔法は先程のようにとてつもない威力で、ただ周囲を破壊するだけだったが、要領の良い勇者はちょっとコツを教えるだけでいとも簡単に魔法を使いこなした。
渇いたスポンジのようにどこまでも教えを吸収する勇者に、いつしか老師は喜びを感じるようになっていた。
新しい魔法を見せれば凄い凄いと屈託のない笑顔を見せてくれる。出来の良い弟子というよりは可愛くて仕方のない孫のような存在。そんな勇者に老師は新たな生きがいを見つけたようだった――。
「勇者じゃったらのう……」
老師は無意識のように勇者の名前を呟いていた。
それから老師は青年の訓練をやめ一人瞑想を始めた。
その日の夕食時。今日もシェフお手製の豪華な料理が並べられる。最初のうちは会話のあった彼らだったが今では誰も喋る者はいない。ただ栄養を補給するだけの静かな食事。
いつからか料理の味も曖昧になってしまっていた。美味しいのは美味しいのだが、何かが足りない。特に騎士と老師の元気が無い。
「はあ……。なんじゃかこの豪華な料理にも飽きてきたのう……」
老師は出された料理にほとんど手を着けず遠くを見ていた。
「そうじゃ、騎士よ。お主の料理が食べたいのう」
なんで俺が料理なんてしないといけないんだと文句を言う騎士だが、顔はその言葉を待っていたと言わんばかりに緩んでいる。ブツブツと文句を言いながらも料理の準備を始める騎士。
幌馬車からいくつか食材をピックアップし慣れた手つきで下ごしらえを終える。鼻歌を歌いながら実に楽しそうに調理をしている。その光景を懐かしそうに老師は見守っている。
あっという間に騎士は数品の料理を完成させた。シェフが作るような豪華さは無いが、なんとも心が温まるような優しさが感じられる料理だ。
騎士もその料理に自信があるのだろう。どうだと言わんばかりに得意気な顔だ。
老師は出来たばかりの熱々の料理を掻き込み、無言で食べ続ける。
半分ほど食べると一息ついたように料理を置き、深く大きく息を吐いた。味の方は……老師の満足気な顔を見れば誰もが理解出来るだろう。
「見事じゃ……。騎士よ、また腕を上げたのう」
それもそのはず、騎士はこの数日間シェフの作る料理や調理法を研究し、新たな技術と知識を身に着けていたのだ。
勇者が居ると料理ばかりやらされるとぼやいていた騎士だったが、料理の楽しさ奥深さ、そして何より勇者がいつも笑顔で感謝してくれることが、この上なく嬉しかった。
――騎士と勇者が出会った頃の話。
勇者は自分が料理が出来ないから騎士に料理を作ってくれと頼んだ。なぜ冒険者である俺が料理なんてと言ったが、戦闘で何もしていなかったこともあり強くは言えなかった。
騎士が作った料理は肉と野菜をぶつ切りし、塩で簡単に味を付けただけの質素なものだった。子供でも作れそうなその料理を勇者は美味い美味いと言って食べてくれた。
「俺は料理がまったく出来ないから有難いよ」
「お、おう……」
勇者からしてみれば何気ない言葉だったかもしれない。だが騎士にしてみればその言葉が何より嬉しかった。冒険者としての実力は天と地ほどの差がある。そんな勇者が自分の作った粗末な料理を笑顔で食べ、感謝までしてくれる。
それまで包丁を握ったこともなかった騎士は料理の勉強をした。自分なりに工夫をすることもあった。煮物に揚げ物、果てには盛り付けや食器にまで拘るようになっていた。
だがそのことが今回の勇者を追放する理由になっていたのも事実。料理は好きだがやはり冒険者としての心も忘れたくないという、二つの想いに揺れていたのだ――。
老師は既に料理を平らげる勢い。食べることに夢中で呼吸することさえ忘れているようだ。料理を飲み込むとまた大きな深呼吸をし、再び料理を掻き込む。
そんな老師を見た姫は私にも頂戴と騎士に詰め寄る。分かった分かったと騎士は姫の分も器によそう。まず匂いを嗅いでから一口料理を口に運び、姫はゆっくりと味を噛みしめた。
「ほんとだ。前より美味しくなってる」
いつもの無駄なセクシーアピールも忘れ姫は黙々と料理を食べる。いつしか老師と姫の顔に笑顔が戻り、この数日間無かった会話を始めていた。
そんな二人を見ていると騎士にも自然と笑顔がこぼれる。おかわりを求める老師と姫に騎士は勇者の面影を見たようだった。
「分かったから、まだまだ沢山あるから焦るなよ。なあ、お前もまだ食べるだろ勇者――」
「あっ……」
『言っちゃったよ』と言うように姫は騎士を見た。
騎士はしんとした周りの反応を見てから自分が言ったことに気が付いた。
「……なあ、なあ老師っ」
デジャヴのような光景。
老師は何も聞いていなかったという素振りで「そうじゃな」と返す。
沈黙するパーティ。一度は騎士の誤魔化しに乗った老師だったが堪えられなくなりポロリと言葉をこぼす。
「勇者が恋しいのう……」
その言葉をきっかけに今まで必死に抑えていた感情が溢れる。それは騎士も同じ。そして少なからず姫もそう感じているようだった。
「勇者を連れ戻そう」
皆がはっとした表情で老師を見る。
「ろ、老師。本気で言ってるんですか?」
騎士が慌てて老師に聞き返す。
「もう強がるのはよそう。お主も儂と同じ考えのはずじゃ」
老師に見つめられた騎士は困惑している。冒険者として賢者として、もっと活躍したいという理由で勇者を追放したのに、今度は寂しいから連れ戻すなど身勝手すぎる話だ。こんなことが許されるはずがない。何より勇者の気持ちはどうだろうか。勝手に追放しておいて数日後には戻って欲しいと言われて了解するなんてあり得るだろうか。
「しかし、とても勇者が許してくれるとは思えません」
「ええい、うるさい。儂らの勇者ならきっと許してくれるわい。そう思うしかないじゃろ」
「え、勇者を連れ戻すのですか? その場合私はどうなるのでしょうか……」
勇者を追放したことで代わりに加入した青年。自分の居場所が無くなることを不安に思うのは当然だ。しかしその声は騎士にも老師にも届いていない。
「そう思うしかない……か」
「そうじゃ。もし勇者が許してくれん時はその時じゃ。ここでグチグチ悩んでおっても意味無いわいっ」
決心がついたのか騎士は晴れやかな表情をしている。姫にも同意を求めると姫は渋々承諾してくれた。
「まあ、勇者が居ないと騎士も老師も元気ないみたいだし、今回だけよ!」
その言葉を合図に騎士、老師、姫は街に向かい走り出した。その姿はまるで青春ドラマのようだ。待ってくださいよと大声を出しながら青年も三人のあとを追った。
※ ※ ※
数時間後、三人は勇者を追放した酒場にいた。側には走り疲れ真っ青な顔をした青年もいる。
まずは勇者に何と言ってパーティに戻ってもらうかを三人は話し合っていた。騎士はお金を用意するべきだと言い、老師は誠心誠意謝るしかないと話す。姫は自分の身体を差し出すと言い出すが騎士と老師には無視されていた。
そもそも勇者は今どこにいるのかと騎士は二人に問いかける。老師はそんなことかと言いながら小さな地図をテーブルに広げた。呪文を唱えると勇者の居場所が分かるという。
「うん? うーん……。おお、勇者はこの近くに居るぞ。近くというかこの酒場に居るようじゃ!」
騎士が店主に勇者のことを尋ねると、勇者はあの日からずっと上の階の部屋に泊っていると教えてくれた。
騎士と老師は、はやる気持ちを抑えながら階段を昇り、勇者が宿泊する部屋の扉をノックした。しかし中から返事はない。騎士はもう一度扉をノックする。やはり返事はない。
ええい焦れったいと老師はドアノブに手をかけ扉を開ける。
部屋の中にはベッドと椅子がひとつ。その椅子に勇者は座っていた。
勇者は扉の方に身体を向け、肘を腿の上置いただらっとした状態で騎士たちを鋭い目で睨んでいた。
初めて見る勇者のそんな姿に騎士と老師は言葉が出ず、見つめ合う状態が続いていた。
「お前ら……何しに来た……」
初めに声を発したのは勇者だった。
勇者の声を聞いた老師は膝から崩れ落ち、床に手を着きながら大粒の涙を流し、何度も何度も勇者に謝った。
それを見た騎士も同じように涙を流しなら勇者に謝罪をする。
「儂らが間違っておった。勇者よどうかパーティに戻ってくれ!」
「俺からも頼む。お前を追放した俺たちが言える立場ではないのは十分承知している。だが、それでも勇者に戻って来て欲しいんだ!」
遅れて付いてきた姫と青年は三人の状態にぎょっとする。大の大人が二人涙を流しながら大声で勇者に戻って来てくれと懇願している。姫も少しは勇者に戻って来て欲しいとは感じていたが、二人がここまで勇者に入れ込んでいたとは思いもしなかったのだろう。
あの能天気な勇者のことだから、ちゃんと謝れば許してくれると軽く考えていのかもしれない。しかし勇者の表情はこれまで見た事もない険しいものだった。
いつもはキラキラとした目をしている勇者。そんな勇者の瞳には一切の光がなく暗く沈んでいる。
「ね、ねえ勇者。二人もこれだけ謝ってるんだから許してあげても――」
勇者の視線が姫に向かうと、姫はその迫力に言葉を失う。勇者の実力は当然姫も知っている。彼が魔法を一つでも放とうものなら、ここにいる全員は髪の毛一本すら残さず消滅するだろう。
青年は勇者の迫力に立っているのもやっとのようだ。身体を小刻みに震わせていた。
「俺にパーティに戻れだと……」
勇者が呟くと、騎士と老師は「ああ」と頷く。
勇者ははははと渇いた笑いで答えた。
「残念だがお前たちのパーティには戻れない。俺はもう新しい冒険者パーティを結成したんだ」
それを聞いた騎士と老師はがっくりとうなだれる。やはり勇者は許してはくれなかった。それどころか勇者は既に新たな冒険者パーティを組んでいると。
仮に勇者が新しい冒険者パーティを組んでいなかったとしても、簡単に許されることではない。それは騎士も老師も分かっていた。
「そ、そうじゃったか……。あれから編み出した新魔法をぜひ勇者に伝授したかったのじゃが……、儂らの考えが甘かったのう」
その時、勇者の身体がピクリと反応したように見えた。
「ええ、やはり簡単には許されることではありません。戻りましょう、戻って私が作った新作の料理を食べてゆっくりと休みましょう」
勇者の身体がピクリピクリと二度、反応する。
騎士は老師の肩を抱え部屋を出ようとすると勇者が二人を引き止めた。
「その話は本当か……?」
引き止められた二人は本当のことだと勇者に伝える。老師が瞑想をし思いついた新魔法のこと。騎士がシェフから盗んだ技術や知識、あの姫も騎士の新作料理を美味しいと言っていたことなど。ここ数日のことを嘘偽りなく話し、そして勇者への思いも熱弁した。
その間、勇者は黙って二人の話を聞いていた。
二人の話が終わると今度は勇者が話し始めた。
「……ったく、お前らは本当に……俺がいないとどうしようもないんだな……」
そう言うと勇者はポケットから一枚の紙を出し、二人に見えるように掲げた。
冒険者パーティの申請書だった。
パーティ名には『新 勇者パーティ』と書かれ、冒険者の名前を書く欄の一番上には勇者の名前が記入されている。そして残る枠にはまだ誰の名前もなかった。
騎士と老師はそれを見てまた大粒の涙を流した。
「へへへ、新しい冒険者パーティを結成はしたけど、まだメンバーが俺だけなんだ。今、料理も出来る剣士と俺を孫のように可愛がってくれる賢者を募集してたところだ……」
言葉にならなかった。騎士と老師は飛びつくように勇者に抱きついた。大声を上げて子供のように泣きじゃくる騎士と老師。つられて勇者の目にも涙が浮かんでいた。
三人はいつまでも抱き合いながら謝罪と感謝を繰り返していた。その光景を呆然と眺める人物が一人。姫だ。
「……はあ? なにこの茶番。ビビって損したわ」
姫はそう吐き捨てた。ふと隣を見ると青年がいまだに身を震わせていた。
「あんた、いつまでビビってんのよ。あんなのただのアホよ」
部屋に入った頃の勇者の険しい面影はもうない。それなのに青年は身を震わせている。よく見ると青年の目からも大粒の涙が流れていた。
「カ、カッコいい……」
「はえ?」
姫から変な声が出た。
「こ、これが……本当の冒険者パーティというものなんですね……」
青年は感動して泣いているようだ。
青年は勇者たちの元に駆け寄ると一連の流れに感動したと語りだし、ぜひ私も新 勇者パーティに入れてくれと懇願する。
「あなたたちの友情、いえ愛情に感動しました。そして勇者様、私はあなたに惚れました。これは男としてとかではなく、純粋にあなたを好きになってしまいました!」
どさくさ紛れて青年は勇者に愛の告白をしている。そう、青年の恋愛対象は男だったのだ。
これまで姫が何度もセクシーなポーズや仕草で誘惑したが、青年は全く興味を示さなかった。その理由はこれだった。
「……もう、メチャクチャじゃん……」
姫は呆れたような顔で四人の男たちを眺めていた。今までの努力はなんだったのかと落胆もしているようだ。
依然、四人の男たちは盛り上がっている。もう何のことか分からないくらい四人は騒いでいる。姫もその輪に加わりたいのか身体もモジモジとさせていた。
そして遂に姫も勇者の元へ駆け出していく。
「私も混ぜなさいーーーー!」
※ ※ ※
こうして新たに騎士、老師、姫、青年を加えた五人の『新 勇者パーティ』が結成された。
力は最強だがそれ以外は何も出来ない勇者。冒険者としては断トツの料理の腕を持つ騎士。知識、経験、実力を兼ね備えた大賢者。回復役としては有能、すぐに男を誘惑しようとするのが玉に瑕な僧侶。実力も才能も無いが莫大な資産を持つ青年。
なんだかんだ言って彼らは良い組み合わせであることは確かだ。
最後に、騎士たちが勇者の部屋に入った時、勇者が険しい顔をしていた理由は単純に腹が減っていたかららしい。いつか騎士たちが迎えに来てくれること信じ勇者は酒場に留まっていたが、宿代を出すだけのお金しか持っておらず、三日ほど何も食べていなかったという。
まだ陽が高くあがっている時間帯の酒場には勇者パーティの四人と酒場の店主が一人。
突然、追放を言い渡された勇者の頭の中に先程の言葉がリフレインする。
勇者はその言葉の意味は理解出来た。しかし何故それを勇者である自分に宣告するのか――それが理解出来ない。
「えっ……、何の冗談だよ……騎士。う、嘘だよな?」
勇者は動揺した声で騎士に聞き返す。
手が小刻みに揺れ、持っているグラスがテーブルにあたりカタカタと音を立てる。
「これは冗談でも、嘘でもない。俺たち三人で決めたことなんだ」
騎士は真っすぐに勇者の目を見て言い切る。
勇者は確認するように騎士の横に座る賢者の老人と僧侶の女性へ視線を向ける。
二人は神妙な面持ちで勇者に視線を返した。
「そ、そんな……俺たち今までうまくやってきたじゃないか……」
「ああ、そうだな。でもな俺たち、もうお前にはうんざりなんだ!」
そう言いながら騎士はテーブルに拳を強く叩きつけた。
今まで様々なモンスターと対峙してきた勇者。どんなに危機的な状況だろうと恐れなど感じたことは無かった、そんな彼が初めて味わう恐怖という感覚。それを信頼していた仲間から与えられるとは思いもしなかった。
聞きたいこと言いたいことが次から次に湧いて来るが、勇者はそれをうまく言葉にすることが出来ない。
この酒場に来てから何杯も酒を飲んで勇者の喉は潤っている。
それなのに砂漠を何日も彷徨った時のような激しい喉の渇きを感じていた。
勇者は手に持った酒を一気に流し込み、やっとの思いで言葉を発する。
「う、うんざりって……俺は必死に頑張って……。じ、自分で言うのもなんだが俺はお前たちの足を引っ張るような無能ではないし、むしろそこそこ強いと思っているくらいだ!?」
「ああ、そうだそうだよ。勇者は無能なんかじゃない。ただお前は大きな勘違いをしているぞ」
勇者の物言いにすかさず騎士が反論した。
勘違いをしていると言われ、勇者はなんのことかと必死に今までの言動を思い返すが何も思い当たることがない。
これまで旅をする中で多少は意見が食い違うこともあったが、そんな時は互いを尊重し、どちらもが納得出来る答えを出してきた。本気の喧嘩や罵り合いなどしたことは一度も無かったのだ。
勇者は答えを教えてくれと、すがるような顔で騎士を見る。
「分からないのか勇者。それは今さっきお前が言ったことだよ」
一体自分はなにを言ってしまったのだろうか。
突然追放を言い渡され動揺していたので変な事を言ってしまったのかと勇者は焦る。
だめだ、ほんの数秒前の自分の発言さえ思い出せない。
冷静になろうとするが騎士の言葉が頭の中を駆け巡る。それに加え早くなる心臓の音が冷静になろうとする勇者の頭と心を邪魔する。
「頼むよ騎士、意地悪しないで教えてくれ。俺のなにが気に食わないんだ!?」
騎士は賢者、僧侶と顔を見合わせる。二人は騎士の目を見ながらこくりと頷いた。
その様子を見た勇者は教えてくれと言った事を後悔した。あれだけ信頼していた仲間たちから、自分はなにを言われるのか、それが辛辣な言葉だとしたらどうすればいい。
胸が締め付けられるような不快感。勇者は呼吸さえ出来ずにいた。
「いいだろう。どうせこれが最後なんだ……はっきりと言ってやる……」
静かな酒場に緊張が走る。
店主がグラスを拭く音すら騒音に思えるような静寂の中、騎士が口を開く。
「……勇者、お前は強すぎるっ!!」
心臓が大きく脈打った。だがそれは騎士の言葉の内容を受けてではない。
単純に騎士の声の大きさに驚いたからだった。
強すぎるとはどういう意味だろう。そのままの意味で受け取っていいのだろうかと勇者は戸惑い、考える。
だが、そのおかげで勇者は少しだけ冷静になることが出来た。
「……え、それが俺の勘違いってやつか?」
「ああ、そうだ。お前はさっき自分はそこそこ強いと言っていたが、それが大きな大きな勘違いだ! お前はそこそこなんてもんじゃない、強すぎる。最強すぎるんだよ!」
騎士は悔しそうな声と共に何度も拳をテーブルに叩きつける。
賢者と僧侶もうんうんと何度も頷いている。
「もしかして、それが俺の追放理由なのか……?」
勇者がそう言うのも仕方ない。冒険者として強さとは最も重要なことだ。
追放した相手が実は超有能でした。とは違う。現に勇者は最強という認識が三人にはあるのだ。
普通に考えればそれが追放の理由になどなり得ない。
だが三人にとってはそれが勇者を追放する理由だった。
「これ以上の理由なんてあるか! お前は自分の強さを全く理解していないんだ。そしてそのことが俺たち三人にとって、どれだけ苦痛か、お前に分かるか!?」
「俺たち冒険者なんだ、強くて悪いことなんて何もないじゃないか」
「お前はいいだろうが、俺たちは違う!」
「騎士は自分が可笑しなことを言っていると自覚した方がいい」
勇者は強さが理由で追放されるなど納得できない様子だ。
これは自分を追放するための訳の分からない口実で、本当の理由があるのではないかと思い始めていた。
「お前の強さは俺たちにとって害でしかないんだ」
「が、害!?」
「冒険者パーティとは本来それぞれの足りない部分を補いつつ最大限の力を発揮する。そういうものだろう?」
「そうだけど、俺たちはそれが出来ていたじゃないか」
「いや、出来ていない。勇者といるとそれが何一つ出来ないんだ」
騎士は勇者を睨みつけ言葉を続ける。
「お前が一人で全部やってしまうからな!」
それを聞いた賢者と僧侶はまたもうんうんと頷く。
「勇者は先日の古城のリッチとの闘いを覚えているか?」
「ああ、もちろんだ」
騎士が言っているのは、かつて大陸の大半を支配していた大王が転生し、魔王ですらその扱いに手を焼いていたという凶悪なリッチのことだ。
古城は辺鄙《へんぴ》なところにあり、そこに行きつくまで二十日以上もかかった。旅の途中様々なことがあった、その時の旅の思い出が勇者の頭に浮かんでくる。
浮かぶのは仲間たちの笑顔ばかり……。本当に楽しい旅だった。
「……そ、そうだよ。あのときは古城まで皆で力を合わせて攻め込んだじゃないか」
「確かに古城までは力を合わせていたな……。しかし、それはあくまで古城まで、古城の入口までだ! あの時、お前は自分が先行して城の中の様子を見てくるだけといって一人で入っていったよな!?」
騎士の言う通り勇者は古城の城壁の前まで辿り着くと、一人だけで古城に入っていった。
しかしそれは城の中にどんな罠があるか分からなかったからだ。
大切な仲間を危険な目に合わせる訳にはいかない、そう思った勇者は己を犠牲する覚悟で古城に攻め込んだのだ。
「そしてお前はたった数分程度で戻って来た……。あの凶悪なリッチを倒してな!」
「――っ!!」
様子を見るだけと言っておきながら勇者はリッチをあっさりと倒して戻って来たのだった。
騎士たちはそのことに対して勇者に怒りを感じているようだ。
「一人だけで勝手にリッチを倒したことにも腹が立つが、なにより腹が立つのはお前のその強さだ。あれだけ凶悪と言われたリッチを数分で倒して、息も切らさず戻って来るなんてありえないんだよ……」
騎士の握った拳がワナワナと震える。
「勇者と出会うまでは俺もそこそこ名の売れた冒険者だったんだ……。それなのに俺がやっていることは旅の途中の料理や雑務ばかり」
勇者が強すぎるが故、モンスターとの戦闘において騎士が出る幕は皆無に等しかった。
「戦闘ではやることが無いから俺は毎日毎日料理ばかり。そのせいで俺の戦闘能力は下がる一方、対して料理のスキルはどんどん上がっていく……」
騎士は自嘲気味に語る。
「でもこのままではダメだと感じるようにもなった。俺も、もっと冒険者として活躍しなくてはいけない、と……。だから勇者とはもう居られないんだ」
騎士は頭を抱えるとそのまま何も言わなくなった。
良かれと思ってしていたことが、これほどまで騎士を追い込んでいたとは知らなかった。
勇者は騎士にかける言葉が見つからない。
「も、もしかして老師もなのか?」
勇者は老師と呼ばれる老人の賢者に話を振った。
老師は深く息を吐くと、静かに語り始めた。
「……そうじゃな。儂《わし》も騎士と同じじゃ。勇者は物理攻撃だけでなく魔法も一級品じゃからのう、最近は自分で魔法を使った記憶もないぐらいじゃし……」
そう言うと老師は目を伏せ続ける。
「儂が何年、いや何十年もかけて編み出した魔法を、勇者はあっさりと会得してしまう、それはまるで鳥が空を飛ぶのが当然のようにじゃ……。勇者と居《お》るとただ介護されているだけの老人のように思えて仕方ない……」
老師は顔を上げる。その目は遠くを見つめているようだった。
「じゃがな勇者よ、儂もまだまだ現役の冒険者じゃ。隠居するにはちと早い。お前さんとこれ以上一緒に居《お》ると、騎士が言ったように自分がダメになる気がしたんじゃ……。勝手なことを言っておるのは十分承知しておるが、分かってくれんか」
諭すように語る老師だが、その瞳はどこか寂しそうだ。
騎士のような感情的な言い方より胸に来るものがあった。
「老師……」
勇者は最後に僧侶に尋ねる。
「姫も騎士や老師と同じなんだな……」
「そうよ!」
僧侶は短く答えた。
姫と呼ばれているが王族関係の人間ではない。この冒険者パーティの中で唯一の女性だからそう呼ばれているだけ……正確に言えば自分から『姫』と呼べと言ってきたのだ。実際は回復魔法や補助魔法がメインの僧侶だ。
「このまま勇者と居たら誰も私を見てくれないんだもん! 騎士は勇者の母親みたいになっちゃうし、老師はただの好好爺《こうこうや》だし! このパーティでただ一人の女なのに誰も私に関心がないんだもん。全部勇者のせいよ!」
一人だけこれまでの流れとは違う物言いの姫に勇者は怪訝な顔をする。それは騎士と老師も同じだった。こいつは何を言っているのだろう、と。
「普通、こんなに若くて可愛い女の子がいれば、ちょっとくらいの間違いがあってもいいじゃない。何のために私がこんな格好してるか貴方たちは考えたことがあるの!?」
そう言う姫の恰好は僧侶という職業でありながら胸元の開いたセクシーな服装をしている。大きな胸は喋る度に上下にポヨンポヨンと揺れていた。
冒険ばかりで女性に対してあまり興味がない勇者と騎士は、彼女の言っていることがほとんど理解出来ず首を傾げる。
老師だけが理解出来たようだが、くだらないと言った様子で、はあと大きな溜め息をついていた。
「騎士はこの恰好を見て、もっと露出を抑えた服装にしろとか私に対しても母親みたいなこと言うし!」
「そ、それはそうだろう。若い女が意味も無く肌を見せるものでは無い」
「意味無いことなんてない! 少しは興奮しなさいよ! 老師もなんか腑抜けてて、ジジイならジジイらしくエロい目で私を見なさいよ!」
「……ええ~、儂が悪いのか」
「これも全て勇者ばかり構っているせいよ、だから勇者が居なくなれば皆が私をエロい目で見てくれるの!」
「「…………」」
姫はオーバーなアクションで胸を揺らしていた。それは自分に誰も興味を示さないことを不満に思い、何とかしようと試行錯誤し身に着けた技だった。
店内には店主が棚に食器を片付ける音だけが響いていた。
「そ、そういうことだから、勇者には悪いがお前との関係も今日で終わりだ。それにお前の後継はもう用意してある」
騎士は酒場の外に待機させていた男を呼んだ。
軽やかな足取りで近づいてきたのは、整った身なりでその顔は自信に溢れている、だがどこか頼りない雰囲気の青年。
軽やかな足取りではあるが、勇者たちと青年の距離はなかなか縮まらない。ダンスをするように三歩進んでは二歩下がる。そして青年は時折「はっ」「あうっ」などと奇声を上げていた。
やっと勇者たちのテーブルに辿り着いたのは騎士が彼を呼んでから二分後のことだった。
「初めまして勇者様。この度、名高き勇者パーティに加入することになった者です。ああ、失礼、勇者様はたった今追放されたので正しくは元勇者パーティですかな。まあ、今後のことは何も心配なさらずせいぜい頑張ってくださいな」
鼻につくような口調と身振り手振りで話す青年。言い終わると勇者の肩をぽんぽんと叩き、勇者を見下すように顔をニヤつかせた。
勇者はその青年をまじまじと見た後、騎士に耳打ちする。
「お、おい、これが俺の後継なのか? どう見ても弱そうだし……何というか、これはただの金持ちのバカ息子って感じだぞ。こんなので本当にいいのか?」
それを聞いた騎士は口を緩ませる。
勇者が何を言ったのかは青年には聞こえていない。それでも青年の顔はニヤついていた。もしかすると自分を賛美する内容だと思ったのかもしれない。
「ああ、そうだ。勇者の言う通りだ。こいつはどう見ても弱そうだ。弱そうというか確実に弱い、そしてバカだ。だがそれがいい!」
騎士は大きな声で答える。
自分を抱きしめるようなナルシストっぽいポーズを取っていた青年は、それを聞き驚いた表情で騎士を見る。
「わ、私がバカで弱いですって……!?」
「これだけ弱いやつが一緒なら本来の俺の実力が出せるし、もう料理なんてしなくて済むんだ! 老師も姫もそうだろう!?」
「ふむ、確かにそうじゃな。こんな頭の悪そうなやつなら大した魔法も使えんじゃろうし、かつて大賢者と呼ばれたこの儂の腕が鳴るわい」
「ええ、そうね。これで私の本来の立ち位置がはっきりするわ。これだけ欲望にまみれてそうなバカなら私を絶対エロい目でみてくるわ!」
「「…………」」
相変わらず姫の言い分だけは誰にも理解されないようだ。
騎士は大袈裟に咳ばらいをし話を戻す。
「これで分かっただろう、勇者よ。もう何も言わずにここから去ってくれ……」
そう言うと騎士は勇者から目を背けた。
「騎士、老師、姫。俺はお前たちのことを本当に大切な仲間だと思っていたのに……、お前たちは違ったんだな……」
老師と姫も同じように勇者と目を合わせない。
怒りなのか悲しみなのか。両方か或いはどちらでもないような複雑な感情が勇者の心の中に渦巻く。自分が今まで大切だと思っていた場所が、こんな弱そうなバカでも務まるモノだったのかと。
勇者の中で何かが崩れていく――。
「ああ……そうかよ……。分かったよ! お前たちは俺のことをずっと邪魔な存在だと思っていたんだな、そんな奴らを信頼してた俺が馬鹿だったよ! 希望通りどこにでも行ってやるよ、今まで世話になったな!」
勇者は大声と共に立ち上がり床に置かれた荷物を雑に掴むと酒場の出口に向かった。
そして扉に手を掛けた勇者は顔だけを騎士たちに向け、
「最後にこれだけは言っておく。俺はお前たちと今日のこと、この場所を一生忘れないからな!」
そう捨て台詞を吐いて勇者は酒場から出て行った。
勢いよく閉められた扉は壊れそうなほどの大きな音を立てた。
誰も居ないと思えるほどの静寂が酒場の中を包む。
残された者たちは望み通り勇者を追放したというのに皆暗い顔をしている。
「これで良かったんだよな……」
再び頭を抱えた騎士が呟くように小さな声で発する。
「分からん。儂も長く生きておるが、何かを決断した時にそれが正しいかなんていつまで経っても分からん」
老師は騎士を慰めるように彼の肩に手を置く。騎士の肩は小さく震えていた。
※ ※ ※
数日後、森の中で闘う騎士たちの姿があった。
モンスター退治を請け負った彼ら元勇者パーティは躍動していた。
騎士が剣を振るう度にモンスターの身体は真っ二つに切り裂かれ、騎士の通った後にはモンスターの死骸が道筋のように転がっている。
老師の攻撃呪文は一帯の敵を一瞬で殲滅させていく。それほどに強力な魔法にもかかわらず森の木々には一切損傷がない。かつて大賢者と呼ばれた老師だから出来る超高等魔法だ。
姫はその大きな胸を無駄に揺らしながら、騎士の体力回復と老師の魔力を同時に回復させていく。
勇者が強すぎたせいで今まで出る幕の無かった彼らだが、その実力は並みの冒険者ではない。
勇者の代わりに加入した青年は何も出来ないどころか、彼らに置いて行かれないよう付いて行くだけで必死だった。
一通りモンスターを倒した騎士たちは森の中の川原で野宿の準備をしていた。
勇者が居た時には無かった幌馬車には大量の食糧が積まれ、青年が連れて来た専属のシェフが忙しそうに夕食の準備に取り掛かる。勇者が思った通り青年は金持ちのボンボンだった。
数十分後、肉や魚の焼ける良い香りが辺りに充満していた。
「さあさあ、皆さん。私の専属シェフお手製の豪華な料理が出来ましたよ」
青年は自慢げに両手に料理を持ち、それらを騎士たちに振る舞う。
街の店で食べるような豪華で手の込んだ料理ばかり。見た事もない食材には、これまた見た事のない色のソースがかけられキラキラと輝いていた。しかしその見た目と香りは空腹の胃を激しく刺激してくる。それは食べる前から美味しいと言ってしまいそうなほどの極上の料理だった。
「これはとんでもなく豪華な料理だな」
「初めて見る食材ばかりじゃのう」
「きゃー、綺麗~、美味しそう」
料理を前に興奮する三人。姫はぴょんぴょんと身体を揺らしながら感嘆の声を上げる。揺れる身体に遅れて大きな胸が弾んでいる。しかし姫の視線は料理ではなく周りの男性陣に向いていることは置いておこう。
「さあ、冷めないうちに食べましょう」
青年の言葉を合図に騎士たちは料理を口に運んだ。
一口食べるだけで味と香りが口いっぱいに広がった。
「う、美味い……」
騎士は初めて食べる料理に興味津々のようだ。
フォークで食材を細かく分けじっくりと眺めながらブツブツとなにか言っている。
かかっているソースだけを口にし、鼻から空気を吐いて何の食材が使われているのか確かめている姿はまさに料理人のようだった。
「うーん! おいしー!」
姫は料理を口に入れ味わう前から美味しい美味しいと騒いでいた。
青年に見えるように、わざとらしくソースを大きく開いた服の胸元に落とし、手ですくい舐め取っている。青年はどうしたものかと困惑しているようだ。
「ほんまに美味いのう」
老人である老師にもこの料理は口に合ったようだ。ニコニコとしながら料理を次から次に口へ運ぶ。
「はあ~、こんな料理は初めてじゃのう。のう勇者よ――」
「あっ……」
『言っちゃったよ』と言うように姫は老師を見た。
老師はしんとした周りの反応を見てから自分が言ったことに気が付いた。
「……のう。のう騎士よっ」
かなり苦しい誤魔化し方だった。
騎士は何も聞いていなかったという素振りで老師に「ええ」と返す。必死に作った笑顔は引きつっていた。
翌日、今夜も青年専属のシェフが豪華な料理を振る舞う。
今日も騎士は初めて見る料理に興味があるようで、食材と味付けを確かめるようにじっくりと味わっていた。老師は昨日のこともあり余計なことを喋らないように黙々と料理を食べ、姫は相変わらず、その大きな胸をいちいち揺らしていた。
数日が経ったある日。老師と青年は老師が作った簡素な人形を前にしていた。
老師の合図で青年は人形に向かい攻撃魔法を唱える。小さな炎が人形に向かいゆっくりと飛んでいく。炎は人形に着弾すると少しだけ大きく燃え上がった。青年は「どうですか私の魔法は」と得意気な顔でポーズをとる。老師は小さく溜め息をつき、青年に見本を見せる。
呪文を唱えると老師の手を炎が包む――瞬間、人形が置かれた地面から雲に届きそうなほどの大きな火柱が上がる。人形は燃える暇もなく一瞬で灰になっていた。
「こうじゃ」
「こ、こうじゃと言われましても……」
老師が放った魔法は対象だけを的確に仕留める高等魔法だった。ただ家が裕福なだけでこれといった才能のない青年にそんな魔法が使えるわけが無かった。
「はあー……。こんな初歩の魔法さえ使えんとはな……」
――老師と勇者が出会った頃の話。
同じように老師と勇者は人形の前で魔法の訓練をしていた。老師は見本として魔法を勇者に見せる。灰になった人形を見た勇者はキラキラと瞳を輝かせていた。次は勇者の番じゃと今見せた魔法を勇者に唱えるよう指示する。
勇者は老師を真似て呪文を唱えると天に向かい大きな火柱が上がる。その火柱は雲を突き抜け本当に天まで届いていた。人形は灰すら残さずその姿を消した。人形があった地面は大きくえぐれクレーターのようになっていた。
「ああ~、だめだ。上手くコントロール出来ねぇ。やっぱり老師のようにはいかないな」
「そ、そうじゃな。これではとてもじゃないが危なくて戦闘では使えんのう……」
あれほどの威力の魔法を放っておいても勇者は老師に対しての敬意を忘れない。それが嫌味で言っているのでは無いということは勇者の目を見れば分かる。純粋に老師を敬っているのだ。
それから老師は勇者に様々な魔法を教えた。教えたばかりの魔法は先程のようにとてつもない威力で、ただ周囲を破壊するだけだったが、要領の良い勇者はちょっとコツを教えるだけでいとも簡単に魔法を使いこなした。
渇いたスポンジのようにどこまでも教えを吸収する勇者に、いつしか老師は喜びを感じるようになっていた。
新しい魔法を見せれば凄い凄いと屈託のない笑顔を見せてくれる。出来の良い弟子というよりは可愛くて仕方のない孫のような存在。そんな勇者に老師は新たな生きがいを見つけたようだった――。
「勇者じゃったらのう……」
老師は無意識のように勇者の名前を呟いていた。
それから老師は青年の訓練をやめ一人瞑想を始めた。
その日の夕食時。今日もシェフお手製の豪華な料理が並べられる。最初のうちは会話のあった彼らだったが今では誰も喋る者はいない。ただ栄養を補給するだけの静かな食事。
いつからか料理の味も曖昧になってしまっていた。美味しいのは美味しいのだが、何かが足りない。特に騎士と老師の元気が無い。
「はあ……。なんじゃかこの豪華な料理にも飽きてきたのう……」
老師は出された料理にほとんど手を着けず遠くを見ていた。
「そうじゃ、騎士よ。お主の料理が食べたいのう」
なんで俺が料理なんてしないといけないんだと文句を言う騎士だが、顔はその言葉を待っていたと言わんばかりに緩んでいる。ブツブツと文句を言いながらも料理の準備を始める騎士。
幌馬車からいくつか食材をピックアップし慣れた手つきで下ごしらえを終える。鼻歌を歌いながら実に楽しそうに調理をしている。その光景を懐かしそうに老師は見守っている。
あっという間に騎士は数品の料理を完成させた。シェフが作るような豪華さは無いが、なんとも心が温まるような優しさが感じられる料理だ。
騎士もその料理に自信があるのだろう。どうだと言わんばかりに得意気な顔だ。
老師は出来たばかりの熱々の料理を掻き込み、無言で食べ続ける。
半分ほど食べると一息ついたように料理を置き、深く大きく息を吐いた。味の方は……老師の満足気な顔を見れば誰もが理解出来るだろう。
「見事じゃ……。騎士よ、また腕を上げたのう」
それもそのはず、騎士はこの数日間シェフの作る料理や調理法を研究し、新たな技術と知識を身に着けていたのだ。
勇者が居ると料理ばかりやらされるとぼやいていた騎士だったが、料理の楽しさ奥深さ、そして何より勇者がいつも笑顔で感謝してくれることが、この上なく嬉しかった。
――騎士と勇者が出会った頃の話。
勇者は自分が料理が出来ないから騎士に料理を作ってくれと頼んだ。なぜ冒険者である俺が料理なんてと言ったが、戦闘で何もしていなかったこともあり強くは言えなかった。
騎士が作った料理は肉と野菜をぶつ切りし、塩で簡単に味を付けただけの質素なものだった。子供でも作れそうなその料理を勇者は美味い美味いと言って食べてくれた。
「俺は料理がまったく出来ないから有難いよ」
「お、おう……」
勇者からしてみれば何気ない言葉だったかもしれない。だが騎士にしてみればその言葉が何より嬉しかった。冒険者としての実力は天と地ほどの差がある。そんな勇者が自分の作った粗末な料理を笑顔で食べ、感謝までしてくれる。
それまで包丁を握ったこともなかった騎士は料理の勉強をした。自分なりに工夫をすることもあった。煮物に揚げ物、果てには盛り付けや食器にまで拘るようになっていた。
だがそのことが今回の勇者を追放する理由になっていたのも事実。料理は好きだがやはり冒険者としての心も忘れたくないという、二つの想いに揺れていたのだ――。
老師は既に料理を平らげる勢い。食べることに夢中で呼吸することさえ忘れているようだ。料理を飲み込むとまた大きな深呼吸をし、再び料理を掻き込む。
そんな老師を見た姫は私にも頂戴と騎士に詰め寄る。分かった分かったと騎士は姫の分も器によそう。まず匂いを嗅いでから一口料理を口に運び、姫はゆっくりと味を噛みしめた。
「ほんとだ。前より美味しくなってる」
いつもの無駄なセクシーアピールも忘れ姫は黙々と料理を食べる。いつしか老師と姫の顔に笑顔が戻り、この数日間無かった会話を始めていた。
そんな二人を見ていると騎士にも自然と笑顔がこぼれる。おかわりを求める老師と姫に騎士は勇者の面影を見たようだった。
「分かったから、まだまだ沢山あるから焦るなよ。なあ、お前もまだ食べるだろ勇者――」
「あっ……」
『言っちゃったよ』と言うように姫は騎士を見た。
騎士はしんとした周りの反応を見てから自分が言ったことに気が付いた。
「……なあ、なあ老師っ」
デジャヴのような光景。
老師は何も聞いていなかったという素振りで「そうじゃな」と返す。
沈黙するパーティ。一度は騎士の誤魔化しに乗った老師だったが堪えられなくなりポロリと言葉をこぼす。
「勇者が恋しいのう……」
その言葉をきっかけに今まで必死に抑えていた感情が溢れる。それは騎士も同じ。そして少なからず姫もそう感じているようだった。
「勇者を連れ戻そう」
皆がはっとした表情で老師を見る。
「ろ、老師。本気で言ってるんですか?」
騎士が慌てて老師に聞き返す。
「もう強がるのはよそう。お主も儂と同じ考えのはずじゃ」
老師に見つめられた騎士は困惑している。冒険者として賢者として、もっと活躍したいという理由で勇者を追放したのに、今度は寂しいから連れ戻すなど身勝手すぎる話だ。こんなことが許されるはずがない。何より勇者の気持ちはどうだろうか。勝手に追放しておいて数日後には戻って欲しいと言われて了解するなんてあり得るだろうか。
「しかし、とても勇者が許してくれるとは思えません」
「ええい、うるさい。儂らの勇者ならきっと許してくれるわい。そう思うしかないじゃろ」
「え、勇者を連れ戻すのですか? その場合私はどうなるのでしょうか……」
勇者を追放したことで代わりに加入した青年。自分の居場所が無くなることを不安に思うのは当然だ。しかしその声は騎士にも老師にも届いていない。
「そう思うしかない……か」
「そうじゃ。もし勇者が許してくれん時はその時じゃ。ここでグチグチ悩んでおっても意味無いわいっ」
決心がついたのか騎士は晴れやかな表情をしている。姫にも同意を求めると姫は渋々承諾してくれた。
「まあ、勇者が居ないと騎士も老師も元気ないみたいだし、今回だけよ!」
その言葉を合図に騎士、老師、姫は街に向かい走り出した。その姿はまるで青春ドラマのようだ。待ってくださいよと大声を出しながら青年も三人のあとを追った。
※ ※ ※
数時間後、三人は勇者を追放した酒場にいた。側には走り疲れ真っ青な顔をした青年もいる。
まずは勇者に何と言ってパーティに戻ってもらうかを三人は話し合っていた。騎士はお金を用意するべきだと言い、老師は誠心誠意謝るしかないと話す。姫は自分の身体を差し出すと言い出すが騎士と老師には無視されていた。
そもそも勇者は今どこにいるのかと騎士は二人に問いかける。老師はそんなことかと言いながら小さな地図をテーブルに広げた。呪文を唱えると勇者の居場所が分かるという。
「うん? うーん……。おお、勇者はこの近くに居るぞ。近くというかこの酒場に居るようじゃ!」
騎士が店主に勇者のことを尋ねると、勇者はあの日からずっと上の階の部屋に泊っていると教えてくれた。
騎士と老師は、はやる気持ちを抑えながら階段を昇り、勇者が宿泊する部屋の扉をノックした。しかし中から返事はない。騎士はもう一度扉をノックする。やはり返事はない。
ええい焦れったいと老師はドアノブに手をかけ扉を開ける。
部屋の中にはベッドと椅子がひとつ。その椅子に勇者は座っていた。
勇者は扉の方に身体を向け、肘を腿の上置いただらっとした状態で騎士たちを鋭い目で睨んでいた。
初めて見る勇者のそんな姿に騎士と老師は言葉が出ず、見つめ合う状態が続いていた。
「お前ら……何しに来た……」
初めに声を発したのは勇者だった。
勇者の声を聞いた老師は膝から崩れ落ち、床に手を着きながら大粒の涙を流し、何度も何度も勇者に謝った。
それを見た騎士も同じように涙を流しなら勇者に謝罪をする。
「儂らが間違っておった。勇者よどうかパーティに戻ってくれ!」
「俺からも頼む。お前を追放した俺たちが言える立場ではないのは十分承知している。だが、それでも勇者に戻って来て欲しいんだ!」
遅れて付いてきた姫と青年は三人の状態にぎょっとする。大の大人が二人涙を流しながら大声で勇者に戻って来てくれと懇願している。姫も少しは勇者に戻って来て欲しいとは感じていたが、二人がここまで勇者に入れ込んでいたとは思いもしなかったのだろう。
あの能天気な勇者のことだから、ちゃんと謝れば許してくれると軽く考えていのかもしれない。しかし勇者の表情はこれまで見た事もない険しいものだった。
いつもはキラキラとした目をしている勇者。そんな勇者の瞳には一切の光がなく暗く沈んでいる。
「ね、ねえ勇者。二人もこれだけ謝ってるんだから許してあげても――」
勇者の視線が姫に向かうと、姫はその迫力に言葉を失う。勇者の実力は当然姫も知っている。彼が魔法を一つでも放とうものなら、ここにいる全員は髪の毛一本すら残さず消滅するだろう。
青年は勇者の迫力に立っているのもやっとのようだ。身体を小刻みに震わせていた。
「俺にパーティに戻れだと……」
勇者が呟くと、騎士と老師は「ああ」と頷く。
勇者ははははと渇いた笑いで答えた。
「残念だがお前たちのパーティには戻れない。俺はもう新しい冒険者パーティを結成したんだ」
それを聞いた騎士と老師はがっくりとうなだれる。やはり勇者は許してはくれなかった。それどころか勇者は既に新たな冒険者パーティを組んでいると。
仮に勇者が新しい冒険者パーティを組んでいなかったとしても、簡単に許されることではない。それは騎士も老師も分かっていた。
「そ、そうじゃったか……。あれから編み出した新魔法をぜひ勇者に伝授したかったのじゃが……、儂らの考えが甘かったのう」
その時、勇者の身体がピクリと反応したように見えた。
「ええ、やはり簡単には許されることではありません。戻りましょう、戻って私が作った新作の料理を食べてゆっくりと休みましょう」
勇者の身体がピクリピクリと二度、反応する。
騎士は老師の肩を抱え部屋を出ようとすると勇者が二人を引き止めた。
「その話は本当か……?」
引き止められた二人は本当のことだと勇者に伝える。老師が瞑想をし思いついた新魔法のこと。騎士がシェフから盗んだ技術や知識、あの姫も騎士の新作料理を美味しいと言っていたことなど。ここ数日のことを嘘偽りなく話し、そして勇者への思いも熱弁した。
その間、勇者は黙って二人の話を聞いていた。
二人の話が終わると今度は勇者が話し始めた。
「……ったく、お前らは本当に……俺がいないとどうしようもないんだな……」
そう言うと勇者はポケットから一枚の紙を出し、二人に見えるように掲げた。
冒険者パーティの申請書だった。
パーティ名には『新 勇者パーティ』と書かれ、冒険者の名前を書く欄の一番上には勇者の名前が記入されている。そして残る枠にはまだ誰の名前もなかった。
騎士と老師はそれを見てまた大粒の涙を流した。
「へへへ、新しい冒険者パーティを結成はしたけど、まだメンバーが俺だけなんだ。今、料理も出来る剣士と俺を孫のように可愛がってくれる賢者を募集してたところだ……」
言葉にならなかった。騎士と老師は飛びつくように勇者に抱きついた。大声を上げて子供のように泣きじゃくる騎士と老師。つられて勇者の目にも涙が浮かんでいた。
三人はいつまでも抱き合いながら謝罪と感謝を繰り返していた。その光景を呆然と眺める人物が一人。姫だ。
「……はあ? なにこの茶番。ビビって損したわ」
姫はそう吐き捨てた。ふと隣を見ると青年がいまだに身を震わせていた。
「あんた、いつまでビビってんのよ。あんなのただのアホよ」
部屋に入った頃の勇者の険しい面影はもうない。それなのに青年は身を震わせている。よく見ると青年の目からも大粒の涙が流れていた。
「カ、カッコいい……」
「はえ?」
姫から変な声が出た。
「こ、これが……本当の冒険者パーティというものなんですね……」
青年は感動して泣いているようだ。
青年は勇者たちの元に駆け寄ると一連の流れに感動したと語りだし、ぜひ私も新 勇者パーティに入れてくれと懇願する。
「あなたたちの友情、いえ愛情に感動しました。そして勇者様、私はあなたに惚れました。これは男としてとかではなく、純粋にあなたを好きになってしまいました!」
どさくさ紛れて青年は勇者に愛の告白をしている。そう、青年の恋愛対象は男だったのだ。
これまで姫が何度もセクシーなポーズや仕草で誘惑したが、青年は全く興味を示さなかった。その理由はこれだった。
「……もう、メチャクチャじゃん……」
姫は呆れたような顔で四人の男たちを眺めていた。今までの努力はなんだったのかと落胆もしているようだ。
依然、四人の男たちは盛り上がっている。もう何のことか分からないくらい四人は騒いでいる。姫もその輪に加わりたいのか身体もモジモジとさせていた。
そして遂に姫も勇者の元へ駆け出していく。
「私も混ぜなさいーーーー!」
※ ※ ※
こうして新たに騎士、老師、姫、青年を加えた五人の『新 勇者パーティ』が結成された。
力は最強だがそれ以外は何も出来ない勇者。冒険者としては断トツの料理の腕を持つ騎士。知識、経験、実力を兼ね備えた大賢者。回復役としては有能、すぐに男を誘惑しようとするのが玉に瑕な僧侶。実力も才能も無いが莫大な資産を持つ青年。
なんだかんだ言って彼らは良い組み合わせであることは確かだ。
最後に、騎士たちが勇者の部屋に入った時、勇者が険しい顔をしていた理由は単純に腹が減っていたかららしい。いつか騎士たちが迎えに来てくれること信じ勇者は酒場に留まっていたが、宿代を出すだけのお金しか持っておらず、三日ほど何も食べていなかったという。
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