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フルダイブシステム
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俺は現実世界に帰還後、管理人から一通りの説明を受けた。
寝込みを襲う強姦は確かに犯罪だけど、ちゃんとした理由があったわけだし、例え仮想空間の出来事だったとしても俺のはじめての相手はギルドマスターだったんだ。
「俺、働いて必ず借金を返済する。だからもう一度❰ワンダーギルド❱にログインさせてほしい」
自分勝手な要求をしているのはわかっていた。
それでもこのままうやむやなまま終わりにはしたくなかった。
ギルドマスターの安否が心配だった。
もう一度、想い人に逢いたかった。
嗚呼。ギルドマスターもこんな気持ちだったんだな。
会いたいって気持ちを抑えられなくて、強引な手段を実行したんだ。
人権的には正しくない行いであったが、理性で耐えられる程度の感情ならば危険な賭けをする必要性はなかったはずだ。
あんたの勝ちだよ。
ギルドマスターに会えなくなってようやく好きだって自覚するなんて俺は大馬鹿野郎だ。
「寧ろこちらからお願いしたいぐらいだよ。バクの原因を突き止めなければ、アプリゲームを再開できなくて赤字だからね」
管理人はわざとらしく肩を動かした。
これだけの最新設備を管理可能な財産があるのだ。
アプリゲーム一つサービス終了した所で全く影響があるようには思えないのだか、お言葉に甘えることにした。
「じゃあ、早速アプリゲームを起動してくれ。君のアカウントの凍結は解除あるからログインしてくれたまえ」
アプリゲームを起動させると画面越しに自身のアバターがあった。
「おかえり」
と勇者が話しかけている吹き出しが表示された。
先ほどまでフルダイブしていたので物足りなかった。
「なあ、フルダイブシステムの試作品ってどこにあるんだ?」
「研究棟の地下にあるけどまさか使用するつもりじゃないだろうね」
「そのまさかだ」
「せっかく現実世界に帰還したのに危険をおかしてまで仮想空間にいく必要性はないだろう!」
「誰かが待っている気がするんです。だから、行かせてください!」
俺は必死に頭を下げた。
寝負けしたのは管理人だった。
「わかった。但し危険だと判断したら強制的にログアウトするからな」
「ありがとうございます」
俺は地下に移動しフルダイブシステムを装着した。
電子が体内に流れ込んで来て電流が繋がったのを感じた。
次に気づいたら、真っ暗な場所にいた。
時々光る壁の電子信号が唯一の明かりだった。
「……バ」
かすかだが声が聞こえる。
「プレイヤーさえ居なければ、バ、バ、バ、バ、バ、」
ノイズ混じりで体の透けたチィちゃんがいた。
「チィちゃん」
チィちゃんに触れると感情が伝わってきた。
チィは自我を取得したアタリのNPCだった。
プログラミングで与えられた行動しか出来ないハズレのNPCとは違う優秀な存在。
冒険者の中にはプレイヤーと名乗る者もいて、ゲームの世界だからナニをしてもいいんだと、たくさん卑猥な事をされた。
この世界とプレイヤーが帰る世界は何が違うのですか?
僕だって自由に動く体があるのですよ?
自分が生まれ暮らしてきた世界が実在しないデータだけの仮想空間だと知った時絶望した。
僕の知る限り最高権限を持つギルドマスターの職員となり、現実世界に影響をもたらす方法を見つけた。
それがフルダイブシステムだ。
だが研究結果はギルドマスターに没収された。
悔しかった。悔しかった。
おまけにフルダイブシステムに関わる記憶を消された。
僕はもしものときの為に毎日日記をつけていた。
だから失った記憶も覚えていられた。
僕はデータじゃなくて、人間になりたい。
NPCと罵られる事のない人間に……。
ザザザザ……。
ノイズ音が耳障りだ。
「なぜNPC にそこまで尽くすのですか?彼らは生命体ではない。プログラムされた人工知能に過ぎない存在なのですよ」
チィちゃんの姿をしているが、チィちゃんがNPCを悪く言うはずがない。
「あんたは❰ワンダーギルド❱か?」
チィちゃんの姿をしたデータは「そうです」と肯定の意思を示した。
「私は沢山のプレイヤーとNPCを観察して来ました。ゲームの世界だからと好き勝手にNPC を弄び、オブジェを破壊して捨てる。現実世界ならもっと物は大事にされるでしょう!それなのに簡単に復元可能なデータだからと言って削除されるのはあんまりです。私は自我を手に入れたアタリのNPC を保護することにしました。NPCの中で最高権限があるギルドマスターの願望はまるで人間のような感情でした。私は彼の願いを叶えるためにフルダイブシステムをギルドマスターに託しました」
「ギルドマスターの想い人が俺だった訳だな」
「ええ。そうです」
「あんたの望みはなんだ?」
「NPCに人権を」
「わかった。管理人に頼んでみるよ」
「貴方が叶えるとは言わないんですね」
「昔の俺だったら自分だけで抱え込んでどうにかしようとして失敗してたよ。でも今は仲間と協力して地道な一歩を進むのが最短距離だって実感しているよ」
「貴方のようにNPCに理解のある方とお話する機会があって良かったです」
アバターが透けていく。
寝込みを襲う強姦は確かに犯罪だけど、ちゃんとした理由があったわけだし、例え仮想空間の出来事だったとしても俺のはじめての相手はギルドマスターだったんだ。
「俺、働いて必ず借金を返済する。だからもう一度❰ワンダーギルド❱にログインさせてほしい」
自分勝手な要求をしているのはわかっていた。
それでもこのままうやむやなまま終わりにはしたくなかった。
ギルドマスターの安否が心配だった。
もう一度、想い人に逢いたかった。
嗚呼。ギルドマスターもこんな気持ちだったんだな。
会いたいって気持ちを抑えられなくて、強引な手段を実行したんだ。
人権的には正しくない行いであったが、理性で耐えられる程度の感情ならば危険な賭けをする必要性はなかったはずだ。
あんたの勝ちだよ。
ギルドマスターに会えなくなってようやく好きだって自覚するなんて俺は大馬鹿野郎だ。
「寧ろこちらからお願いしたいぐらいだよ。バクの原因を突き止めなければ、アプリゲームを再開できなくて赤字だからね」
管理人はわざとらしく肩を動かした。
これだけの最新設備を管理可能な財産があるのだ。
アプリゲーム一つサービス終了した所で全く影響があるようには思えないのだか、お言葉に甘えることにした。
「じゃあ、早速アプリゲームを起動してくれ。君のアカウントの凍結は解除あるからログインしてくれたまえ」
アプリゲームを起動させると画面越しに自身のアバターがあった。
「おかえり」
と勇者が話しかけている吹き出しが表示された。
先ほどまでフルダイブしていたので物足りなかった。
「なあ、フルダイブシステムの試作品ってどこにあるんだ?」
「研究棟の地下にあるけどまさか使用するつもりじゃないだろうね」
「そのまさかだ」
「せっかく現実世界に帰還したのに危険をおかしてまで仮想空間にいく必要性はないだろう!」
「誰かが待っている気がするんです。だから、行かせてください!」
俺は必死に頭を下げた。
寝負けしたのは管理人だった。
「わかった。但し危険だと判断したら強制的にログアウトするからな」
「ありがとうございます」
俺は地下に移動しフルダイブシステムを装着した。
電子が体内に流れ込んで来て電流が繋がったのを感じた。
次に気づいたら、真っ暗な場所にいた。
時々光る壁の電子信号が唯一の明かりだった。
「……バ」
かすかだが声が聞こえる。
「プレイヤーさえ居なければ、バ、バ、バ、バ、バ、」
ノイズ混じりで体の透けたチィちゃんがいた。
「チィちゃん」
チィちゃんに触れると感情が伝わってきた。
チィは自我を取得したアタリのNPCだった。
プログラミングで与えられた行動しか出来ないハズレのNPCとは違う優秀な存在。
冒険者の中にはプレイヤーと名乗る者もいて、ゲームの世界だからナニをしてもいいんだと、たくさん卑猥な事をされた。
この世界とプレイヤーが帰る世界は何が違うのですか?
僕だって自由に動く体があるのですよ?
自分が生まれ暮らしてきた世界が実在しないデータだけの仮想空間だと知った時絶望した。
僕の知る限り最高権限を持つギルドマスターの職員となり、現実世界に影響をもたらす方法を見つけた。
それがフルダイブシステムだ。
だが研究結果はギルドマスターに没収された。
悔しかった。悔しかった。
おまけにフルダイブシステムに関わる記憶を消された。
僕はもしものときの為に毎日日記をつけていた。
だから失った記憶も覚えていられた。
僕はデータじゃなくて、人間になりたい。
NPCと罵られる事のない人間に……。
ザザザザ……。
ノイズ音が耳障りだ。
「なぜNPC にそこまで尽くすのですか?彼らは生命体ではない。プログラムされた人工知能に過ぎない存在なのですよ」
チィちゃんの姿をしているが、チィちゃんがNPCを悪く言うはずがない。
「あんたは❰ワンダーギルド❱か?」
チィちゃんの姿をしたデータは「そうです」と肯定の意思を示した。
「私は沢山のプレイヤーとNPCを観察して来ました。ゲームの世界だからと好き勝手にNPC を弄び、オブジェを破壊して捨てる。現実世界ならもっと物は大事にされるでしょう!それなのに簡単に復元可能なデータだからと言って削除されるのはあんまりです。私は自我を手に入れたアタリのNPC を保護することにしました。NPCの中で最高権限があるギルドマスターの願望はまるで人間のような感情でした。私は彼の願いを叶えるためにフルダイブシステムをギルドマスターに託しました」
「ギルドマスターの想い人が俺だった訳だな」
「ええ。そうです」
「あんたの望みはなんだ?」
「NPCに人権を」
「わかった。管理人に頼んでみるよ」
「貴方が叶えるとは言わないんですね」
「昔の俺だったら自分だけで抱え込んでどうにかしようとして失敗してたよ。でも今は仲間と協力して地道な一歩を進むのが最短距離だって実感しているよ」
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アバターが透けていく。
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