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3.登下校は楽しい夏休み計画のはずが青白い光を放つ蝶に攫われて……
しおりを挟む「……ついに、この時が、来たのね」
和室で、裁縫をしていた京子は、作業の手を止めた。
黒い髪は、肩に届くほどの長さで、綺麗に揃えていた。
姿見に向かい合い、正座をして目を閉じる。次に目を開けた時に現れたのは、京子と同じ顔をした人物だが、十二単を着た長い黒髪の女性だ。
鏡に移された背景も違った。
こちらは、現代風の和室。むこうは、遠くに林が見える古典的な内装の和室だった。
鏡の中の人物を見ても京子は、特に驚く様子はない。初めから、こうなる事を予想していたようだ。
京子は、鏡に語りかける。
「京。助彦を、あのお方をお願い」
京と呼ばれた、鏡の中の女性は、力強くうなずいた。
勝と並んで帰路の道を歩く。
今日から夏休み。どうしても浮かれてしまう。
「なあ、夏休みになっても一緒に過ごそうな」
「ああ、当然だ」
「ゲームして、スイカ食べて、アイス食べて、後は昆虫採集して」
うきうきと、楽しそうに夏休みの計画を考える助彦。
それを、愛おしそうに眺める勝。
「なあ、勝は、なにかやりたい事あるか?」
勝を見上げる助彦。
「やりたい事?」
「そう、いつもおれの好きな事にばっかり付き合ってもらっているから、今度は、勝のやりたい事も一緒にやろうぜ。夏休みは始まったばかりだし」
「オレは……」
勝は、顎に手をあてて考え始めた。
「オレは、お前が、楽しいと思える事を一緒にやれればそれでいい。お前が、オレに笑いかけてくれるだけで、なんだって、楽しく感じるし、幸せに思えるんだ」
「そうか?」
「ああ。だから、オレの傍にいてずっと笑っていてくれ」
「なんか、良くわからないけど、勝は、おれの親友だし、おれもお前と一緒がいいや。きっと一人で好きな事やっても、お前がいないと面白く感じないだろうし」
なにげない助彦の言葉に、勝は目を見開く。そして儚く微笑んだ。
だが勝は、すぐに緊迫した顔になると、辺りを警戒し始めた。
「勝?どうしたんだ?」
「助彦。オレが、あげた数珠、腕につけているか?」
焦った声で聞く勝に、なぜ勝が焦っているのかわからない助彦は、のんびりと答えた。
「ああ。お前のとこのお坊さんがくれた、勝とお揃いの数珠だろ?いつも、身につけているけど?」
助彦は、数珠をつけた、左手首をひらひらと勝に見せた。
ほっと息を吐く勝。
そのタイミングをまるで図ったかのように、辺り一面に、青白い光を放つ蝶が、出現した。
「なんだ。こいつら」
裁縫箱と鞄で、蝶を追い払いながら、助彦が叫ぶ。
視界は、あっという間に蝶の群れで遮られた。
「助彦――!」
「勝?……勝!」
蝶の群れをかきわけ、勝を探す。
指先が触れた。
「勝!」
さらに近づこうとした時、助彦の目の前を一匹の蛾が通り過ぎた。
なぜ、蛾だとわかったのかは、わからない。
ただ、蛾から、目が離せなくなった。
「助彦――!」
勝は、蝶の大群に襲われた、助彦を助け出そうと手を伸ばす。
そして、指先が触れたと思った瞬間、蝶の群れごと、助彦は姿を消した。
「……助彦」
勝は、助彦がいなくなった空間をしばらく凝視した後、左手首にある数珠に視線を落とした。
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