インビジブル(超・本格推理小説)

冨井春義

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2019年7月

サイキック

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 御影純一は事務所の広い窓際にある、大きな応接セットに腰かけて、穂積恵子が用意した紅茶を飲みながら、チーズケーキを頬張りつつ黙々と自分のノートPCで金田探偵の供述を読みふけっていた。

 真奈美と恵子はその間、紅茶とケーキを相伴になりながらガールズトークに花を咲かせていた。

 30分ほどすると御影は顔を上げて瞼を閉じ、そこを指でマッサージし始めた。

「あ、御影さん。読み終わりましたか。どうでした」

 真奈美が話しかけると、御影は両手を挙げて大きく伸びをしてから答えた。

「実に面白いよ、宮下君。まずね、この金田という探偵は思っていたほど愚鈍ではないな。彼は本当に名探偵の素養があるかもしれないよ。何よりも視点が鋭い。恐らくこの供述書には普通の人が見落としがちな、重要なディティールがほぼ余すところなく書かれている。これなら僕は現場に行かなくてもアームチェア・ディテクティブで推理を展開できそうだ」

「へえ・・そうは見えなかったけど、御影さんが言うならそうなんでしょうね」

「最もこの供述書でパズルのピースがすべて揃っているわけではない。そのうちのひとつが失踪中の山口肇だね。金田探偵は彼が犯人だと考えているようだが、はて彼はどこに居るのか」

 その時、真奈美のスマートフォンの着信音が鳴った。

「あ、田村所長からだ。もしもし・・・はい、宮下です」

『宮下君、新事実が出た。例の山口肇だがね、出入国カードから身元を洗ったところ、驚いたことがわかった。山口は宮下君、君の中学の同級生なんだ。覚えはないかね』

「え・・?山口・・肇・・・あーすみません。ちょっと憶えていません。私、男子とはあまり交流なかったので」

『そうなのか。いちおう念のため、入手した山口肇の顔写真を送付したから確認してくれ』

 田村はそう言って電話を切った。

「田村君、なんだって?」

 御影が尋ねる。

「ああ、なんだかその山口肇って人は私の中学の同級らしいんですけど、私まったく覚えがないんです。あ、写真が送られて来た」

 真奈美はスマートフォンで画像を確認した。

 それは色白で切れ長の目を持つ、綺麗な顔立ちの青年だった。

(あれ・・?この顔は・・・)

 真奈美はなぜか心臓の激しい高鳴りを感じた。

・・・何か意味があるんだよ。宮下君の能力にも僕の能力にも・・・

(え?これは誰の声)

・・・山口君、消えてしまわないで。見えなくならないで。私の目からは。。。

(あ、ああ・・・・)

 真奈美の両目から大粒の涙がこぼれ落ちた。

「宮下君、どうした?大丈夫か」

 驚いた御影が声を掛けると、真奈美は震える声で答えた。

「・・・私、彼を知っています・・山口君・・・電話しなきゃ・・所長に」

 真奈美は気力を振り絞るように大きく深呼吸してから、スマートフォンをかけ直した。そしてはっきりした声で田村に言った。

「所長、わかりました。山口肇はサイキックです。S.S.R.Iが出動しなければなりません」
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