上 下
31 / 42

受け入れ難い想像

しおりを挟む
 病院を出た真奈美は、警察の車で御影探偵事務所のあるビルに到着した。
 すぐにエレベーターに乗り13階にある事務所に向かう。

 事務所の鍵は真奈美が念動力サイコキネシスで開けた。
 これも訓練の成果である。

 御影も穂積も居ない、広い御影探偵事務所は静かで寒々としていた。

「すみません、しばらく独りにさせてもらえませんか?」

 真奈美は山科警部補と3人の刑事に頭を下げた。

「わかった。我々は事務所の扉の前で警護しているよ。終わったら声を掛けてくれ」

 山科が応えた。

 独りになった真奈美は、秘書デスクにある穂積恵子のパソコンを起動した。
 パスワード入力画面が表示される。

 ・・・パスワードは”psychic11”・・サイキック純一。ああ、本当に穂積さんは御影さんのことが好きなのね。。

 真奈美は自分の心が少し痛むのを感じた。

 ・・・私は?私は男性を好きになったことが一度も無い。こんなに強い思いを持てるなんてうらやましいわ。。

 パソコンのデスクトップ画面が立ち上がるを見て、真奈美は余計な考えを頭から追い払った。
 画像解析ソフトを立ち上げ、フォルダーを開く。
 穂積恵子が拡大して画質を修正した男たちの顔写真が並ぶ。

 しばらくそれらの顔を眺めて真奈美は考えた。

 ・・・これじゃない。これらは見落とさなかった画像だ。では、何を見落としていたのか?

 真奈美は熟考した。
 御影に代わって真奈美が考えなければならないのだ。
 真相はここにあるはずだ。

 真奈美は穂積恵子から聞いた、御影の言葉を思い出す。

 ・・・御影さんの言う通り、あのとき、この事務所で東心悟と会話している間、私たちはずっと東心悟の心を監視していた。
 しかし、東心悟の心は空っぽのままだった。まったく心の動きを感じなかった。
 では、どうやって穂積さんの思考と行動を操ったのか?

 ・・・ミスリード?ミスリードっていったい・・・まさか!

 真奈美はふと恐ろしい考えに至った。

 ・・・まさか?まさかそんな恐ろしいことが。。

 それは真奈美自身、とても受け入れ難い想像であった。
 否定したい。でもそう考えればすべての辻褄が合ってしまう。。

 ・・・確認しなければ。間違いであってほしいけど、現実を見なければ。。

 真奈美はキーボードとマウスを操作し、防犯カメラの映像を見直した。
 御影は、もし自分が犯行に及ぶなら、ここからここまでが立ち位置だと言っていた。

 ・・・その範囲内。。

 真奈美は画像を拡大し、解像度を上げた。
 そして泣き出しそうになった。

 真奈美の恐ろしい考え通り、最悪の現実がそこに映し出されていたのだ。
しおりを挟む

処理中です...