空手バックパッカー放浪記

冨井春義

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コロンボ・カトゥナヤカ空港 2

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男が案内したのは空港のツーリストインフォメーションのカウンターでした。
カウンターの椅子に座るように指図されます。
するとカウンター内の係員はいきなり私の前にパンフレットを広げます。

私はまだこのときは英語に耳が慣れていませんでしたので、非常に聞き取りにくかったのですが

「さあ、ツーリストカーのプランはこれだ。何日のコースにする?」
・・・てなことを言っているようです。

ただ入国しただけの外国人を捕まえて、まるでツーリストカーでツアーするのが義務であるかのように話をすすめようとする案内所の係員。
めちゃくちゃな強引さですが、スリランカ人の強引さはこんな生易しいものでは無いことは後に知る事になる・・・イヤと言うほど。

パンフレットに並んだ数字は、私の予算からするとあまりにも高額ですし、第一ツアーをやりに来たんじゃない。

「ノーサンキューだ。いらないよ」・・そう告げて立ち上がろうとすると

「ちょっと待て。一体これからどうするつもりなんだ?」

「コロンボに行く。バスはどこから乗れる?」

すると係員は、信じられない・・・というように両手を広げて

「バスだと?お前はスリランカのことを何も知らない。バスはな、すごーくデンジャーだ」

「僕は金があまり無いんだ。バスで行く」

「おいおい・・・悪いことは言わないからツーリストカーをチャーターしなよ」

「いらないよ!」

席を蹴って空港ロビーに戻ります。
「ヘイ、ジャパニー。どうした?ツーリストカーはいらないのか?」

・・・と、さきほどの白ヒゲの男が近づいてきました。

「いらないよ。バスでコロンボに行くんだ」

「ははは・・・バスで?バスなんかやめとけよ。オレがタクシーを手配してやる」

「いらないって。。」

空港ロビーに飲み物と軽食を売る店を発見。
スリランカで始めての買い物をやってみたくなった私は、サンドイッチとオレンジジュースを注文します。

カウンターの近くには手洗い用の水道があります。
見ると水道の蛇口の下で、大きな口を開けて水をがぶ飲みする男がいる。

・・・生水は絶対飲んじゃダメだったんじゃ?ガイドブックってあてにならねえなあ・・・
そんなことを考えました。
思えばこのとき生まれた油断から、後にえらいことになる。。

サンドイッチは格別旨くもありませんが、かといって食えない代物でもない。
オレンジジュースはわりとフレッシュでおいしい。

「ジャパニー。タクシーに乗れよ」

「わっ!お前まだ居たのかよっ。いらないったらいらないの!」

ニヤニヤと笑いながらも白ヒゲは私の側を離れません。

私はこのとき、デワの電話番号を書いたメモを持っていましたので、電話をかければ誰かが迎えに来たことでしょう。しかし私はいきなりデワのところに行ってしまうと、彼に頼りきってしまうことになるのを恐れていました。
しばらくの間、ひとりでコロンボに滞在してみよう・・・と。
そうすることで、まずスリランカに慣れなければならない。

「なあオジサン。バス乗り場はどっちだ?」

「おいおい。本当にバスで行くのか?やめといたほうがいいぞ。タクシー安くするから」

「いいから、教えてよ」

「ふーん。まあいい。じゃあ着いて来い」

白ヒゲに案内されて空港の外へ・・・熱い!誤字ではありません。暑いのではなく空が熱い!
バンコクの暑さとはレベルが違う、赤道直下の凶暴な太陽の熱さです。。
一気に汗が吹き出します。

「ふふふ。。。スリランカは暑いだろ?日本は寒いかね?」

バス乗り場には沢山のスリランカ人がバス待ちをしております。
その人たちが一斉に私の方を見る。注目する。凝視する。
・・・?・・・なんなんだ。僕の顔に何か付いているのかよ!

これは後々までそうでしたが、タイ人が外国人に対してほとんど構えることが無いのに対し、スリランカ人は過剰なほどに構えます。
そして尋常でなく親切にされたり、逆に騙そうとしたり・・・まあこれも後の話。。

バスには番号とかたつむりがはっているようなシンハラ文字の案内板がかかげられています。

「えーと、どれがコロンボ行きだ」

「あれだよ。ジャパニー」白ヒゲが指差します。

その先に見えるバスは・・・120%の満員バスにさらに群がり乗り込もうとする群集。。
なんだ、あれは・・・乗れないよ!

「次のバスを待つ。すぐ来るだろう、首都圏行きなんだから」

「ああ多分な」

やがて次のバスが・・・・さっきより混んでる!
また、そのバスにムリヤリ乗り込もうとする人たち・・・・

「・・・オジサン・・・タクシーはいくらだ?」

ニヤリと白ヒゲは黄色い歯を見せました。
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