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最終決戦!空手バックパッカー VS 超人ニコラ
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ニコラは口の端を吊り上げるように笑みを浮かべました。
「やっとやる気になったか。まあ心配するな、すぐに終わるからよ・・痛くないように眠らせてやる」
言うと長い足を前後に伸ばすように広いスタンスで構えます。
ニコラが構えると同時に私は飛びのくようにして距離をとります。
ニコラの足先から床の格子模様14マス。
カッサバ先生の理論なら、この間合いをキープしている限りニコラが踏み込んでの突きでも蹴りでもギリギリ当たらないはずです。
「おいおい、オレはまだ何もしてないぜ・・・そうビビるなよ」
ニコラはまったく余裕の態度です。
もっとも彼ほどの実力者なら、私の構えを見ただけでも私の実力が恐れるに足りないことくらいは見抜いたでしょう。
・・・くそっ。一泡吹かしてやる・・・
私は身の程知らずにもそう考えました。いつもの私ならもっとビビってしまうところなのですが、このときは不思議なことに、全仏三位のニコラ相手に倒すつもりになっていました。
・・・この床の上なら・・・勝てる!
ニコラの顔が急に真剣になります。
スッと一歩踏み込むと同時に後ろ足を引き寄せます。送り足からの蹴りが来る!
とっさに私は飛びのきます。あと7マス分下がらなければ当たる。
ニコラの信じられないスピードの左の蹴りが私の腹部を狙ってきました。
蹴りの伸びきる瞬間に軸足を返して蹴り足を突っ込んできます。
・・・当たるか?!・・・
しかしニコラの足は本当に紙一重で私の腹部に届きませんでした。
私はその蹴り足を下段払いで浮け流すと同時に蹴りの外側に逃げます。
ニコラはやや体勢を崩しました。
本来なら、このように蹴り足が流れて相手がバランスを崩したなら、思い切って飛び込むのがセオリーなのですが・・・出来ません。
ニコラの足が長いため、飛び込むには距離が遠すぎるのです。
無理に飛び込んでも、その間にニコラは体勢を立て直し私は秒殺されるでしょう。
私はなにしろ、こういう身体の大きな外国人と組手するのは初めてでした。
こんなに間合いが違うものなのか・・・しかも相手は自分よりはるかに格上です。
それでも・・・私はまだ倒れていません。
最初の一撃をはずしバランスを崩させたので、ニコラも連撃を打つことが出来ないでいる。
私はニコラの背後に回るように動きましたので、ニコラがあわててこちらに向き直ります。
信じられないことに、ここまでは私のペースだ。全仏三位を相手に!
信じられないのはニコラも同様だったようです。
あれだけのスピードの蹴りをかわされるとは思わなかったでしょう。
おまけに連打を封じられるなどとは・・・ニコラは構えなおしながら少し首をかしげました。
しかし私にとってはここからが本当のピンチです。
ニコラは今の一瞬の攻防で私に対する油断を解きました。
ここからは本気になる。私は再び14マスの間合いを取ります。
この間合いをキープしている限り、ニコラの技は私には当たらない!
ニコラは今度は慎重に足を使って動きます。
私は彼の動きに合わせて、間合いが詰まらないように動く。
が、つぎの瞬間・・・ニコラが勢い良く踏み込んで来ました。
私は下がらずに回りこむつもりで足を使う。下がらなくてもギリギリ当たらない読みがあったからです。
が、しかし・・・ニコラの踏み込みは真っ直ぐではなく、円を描くように足を送りました。
さらに左右の足を素早く踏みかえる。一瞬にして距離が詰まっています。
全仏の三位というのを私はナメていました。
・・・あ!
次の瞬間・・・ぱっとフラッシュが光ったように目の前が急に白くなったかと思うと、すぐに真っ暗になる。
・・・いかん・・目を見張れ・・・一瞬の後、闇が晴れて見えたものは、道場の天井でした。
どうやら私はニコラの上段回し蹴りをモロに貰ったようです。
いわゆる「落ちた」状態です。朽木倒しのように仰向けにバタンと倒れたのでしょう。
私は必死で意識を戻しました。
見るとニコラは腕組みをして突っ立ったまま、上から私を見下ろしていました。
「うわあーっ!」
私は悲鳴だか気合だか分からない声を上げて、床をゴロゴロと転がりニコラから離れます。
そし床に手を着いて立ち上がろうとする。
足が言うことを聞きません。膝関節が抜けたように力が入らない。
しかし、とにかく立たねば。
「おい、もう終わったんだぜ。お前も思ったより頑張ったがオレの相手じゃねえ。一本だ」
そんな私を見てニコラが言いました。
・・・ダメだ。そういうわけにはいかない。カッサバ先生の言うとおり、負けを認めなければ負けじゃない。これは試合じゃないんだから。
全身の気合を足に込めて、私は無理に立ち上がりました。
膝がガクガクしていますがとにかく立った。
「ニコラ、まだだ。僕はまだ負けてないぞ。これは試合じゃないんだから審判はいない。一本なんてないんだ」
ニコラが呆れ顔で言います。
「お前、気は確かか?そんなこと言ったらオレは今度はお前を倒した後にトドメを刺さなきゃならんぞ。お前それでもいいのか?」
私はもともとインチキ空手大道芸人です。
自分を追い込むほどの稽古をしたこともない、根性無しです。
それが本格的なトップレベルの選手相手に戦うこと事態、無謀なのですが、私は生まれて初めて思いました。
・・・絶対負けない・・・こいつに勝つ!
「やっとやる気になったか。まあ心配するな、すぐに終わるからよ・・痛くないように眠らせてやる」
言うと長い足を前後に伸ばすように広いスタンスで構えます。
ニコラが構えると同時に私は飛びのくようにして距離をとります。
ニコラの足先から床の格子模様14マス。
カッサバ先生の理論なら、この間合いをキープしている限りニコラが踏み込んでの突きでも蹴りでもギリギリ当たらないはずです。
「おいおい、オレはまだ何もしてないぜ・・・そうビビるなよ」
ニコラはまったく余裕の態度です。
もっとも彼ほどの実力者なら、私の構えを見ただけでも私の実力が恐れるに足りないことくらいは見抜いたでしょう。
・・・くそっ。一泡吹かしてやる・・・
私は身の程知らずにもそう考えました。いつもの私ならもっとビビってしまうところなのですが、このときは不思議なことに、全仏三位のニコラ相手に倒すつもりになっていました。
・・・この床の上なら・・・勝てる!
ニコラの顔が急に真剣になります。
スッと一歩踏み込むと同時に後ろ足を引き寄せます。送り足からの蹴りが来る!
とっさに私は飛びのきます。あと7マス分下がらなければ当たる。
ニコラの信じられないスピードの左の蹴りが私の腹部を狙ってきました。
蹴りの伸びきる瞬間に軸足を返して蹴り足を突っ込んできます。
・・・当たるか?!・・・
しかしニコラの足は本当に紙一重で私の腹部に届きませんでした。
私はその蹴り足を下段払いで浮け流すと同時に蹴りの外側に逃げます。
ニコラはやや体勢を崩しました。
本来なら、このように蹴り足が流れて相手がバランスを崩したなら、思い切って飛び込むのがセオリーなのですが・・・出来ません。
ニコラの足が長いため、飛び込むには距離が遠すぎるのです。
無理に飛び込んでも、その間にニコラは体勢を立て直し私は秒殺されるでしょう。
私はなにしろ、こういう身体の大きな外国人と組手するのは初めてでした。
こんなに間合いが違うものなのか・・・しかも相手は自分よりはるかに格上です。
それでも・・・私はまだ倒れていません。
最初の一撃をはずしバランスを崩させたので、ニコラも連撃を打つことが出来ないでいる。
私はニコラの背後に回るように動きましたので、ニコラがあわててこちらに向き直ります。
信じられないことに、ここまでは私のペースだ。全仏三位を相手に!
信じられないのはニコラも同様だったようです。
あれだけのスピードの蹴りをかわされるとは思わなかったでしょう。
おまけに連打を封じられるなどとは・・・ニコラは構えなおしながら少し首をかしげました。
しかし私にとってはここからが本当のピンチです。
ニコラは今の一瞬の攻防で私に対する油断を解きました。
ここからは本気になる。私は再び14マスの間合いを取ります。
この間合いをキープしている限り、ニコラの技は私には当たらない!
ニコラは今度は慎重に足を使って動きます。
私は彼の動きに合わせて、間合いが詰まらないように動く。
が、つぎの瞬間・・・ニコラが勢い良く踏み込んで来ました。
私は下がらずに回りこむつもりで足を使う。下がらなくてもギリギリ当たらない読みがあったからです。
が、しかし・・・ニコラの踏み込みは真っ直ぐではなく、円を描くように足を送りました。
さらに左右の足を素早く踏みかえる。一瞬にして距離が詰まっています。
全仏の三位というのを私はナメていました。
・・・あ!
次の瞬間・・・ぱっとフラッシュが光ったように目の前が急に白くなったかと思うと、すぐに真っ暗になる。
・・・いかん・・目を見張れ・・・一瞬の後、闇が晴れて見えたものは、道場の天井でした。
どうやら私はニコラの上段回し蹴りをモロに貰ったようです。
いわゆる「落ちた」状態です。朽木倒しのように仰向けにバタンと倒れたのでしょう。
私は必死で意識を戻しました。
見るとニコラは腕組みをして突っ立ったまま、上から私を見下ろしていました。
「うわあーっ!」
私は悲鳴だか気合だか分からない声を上げて、床をゴロゴロと転がりニコラから離れます。
そし床に手を着いて立ち上がろうとする。
足が言うことを聞きません。膝関節が抜けたように力が入らない。
しかし、とにかく立たねば。
「おい、もう終わったんだぜ。お前も思ったより頑張ったがオレの相手じゃねえ。一本だ」
そんな私を見てニコラが言いました。
・・・ダメだ。そういうわけにはいかない。カッサバ先生の言うとおり、負けを認めなければ負けじゃない。これは試合じゃないんだから。
全身の気合を足に込めて、私は無理に立ち上がりました。
膝がガクガクしていますがとにかく立った。
「ニコラ、まだだ。僕はまだ負けてないぞ。これは試合じゃないんだから審判はいない。一本なんてないんだ」
ニコラが呆れ顔で言います。
「お前、気は確かか?そんなこと言ったらオレは今度はお前を倒した後にトドメを刺さなきゃならんぞ。お前それでもいいのか?」
私はもともとインチキ空手大道芸人です。
自分を追い込むほどの稽古をしたこともない、根性無しです。
それが本格的なトップレベルの選手相手に戦うこと事態、無謀なのですが、私は生まれて初めて思いました。
・・・絶対負けない・・・こいつに勝つ!
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