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信長編
第1話 信長、本能寺から異世界へ
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「此処は――」
城の 石垣の様に石の敷き詰められた地面に、何やら水の吹き出す恐らく石製の何か、道行く人も尾張や、その周辺では見たことも無い服装の人達ばかりだった。
「儂は今しがた死んだはず……」
先程までの自分の行動を思い起こしてみる。
天正十年 西暦1582年 6月21日
夜も更けてきて床について暫くしての事だった。
何やら外が騒がしく目を覚ますと、外では戦いが繰り広げられていた。
倒れ行くものの断末魔、刃と刃が交わる金属音。
部屋の出入口である襖の向こうに見慣れた側近のシルエットが見えた。
「何事だ!」
「はっ、明智光秀の謀反に御座います」
側近は静かにそう告げた。
「明智の軍勢は?」
「ざっと1万以上はあるかと」
今、この本能寺にいるのは全員で30人程度、この状況で明智に勝てる見込みは無い。
「恐らく狙いは儂の首じゃ。なら、タダでくれてやる訳にはいかん。火を放て!!」
「宜しいのですか?」
そのまま黙っていると側近は「御意」と言い、去っていった。木製の艶やかで重厚感のある箪笥|《たんす》を開け、切腹裃《せっぷくかみしも》を取り出す。
肌脱ぎをした状態で帯を占める。
短刀を手に取り、奉書紙を巻き付け腹に当てる。
辺りには既に火の手が回っているようで、しきりに火の粉が爆ぜる音が聞こえる。
近くでは慌ただしく廊下を走る足音が聞こえ、この部屋にいる事が悟られるのも時間の問題のようだ。
腹に当てた短刀をゆっくりと横に一閃する。
不思議と痛みは無く、感じるのは短刀の刀身部分の冷たさだけだった。
段々と意識が朦朧とし、遠のいていくのを感じる。
手先、足先、体と徐々に冷えていき、廊下を慌ただしく駆ける足音や火の粉の爆ぜる音がどんどん遠のいていく。
瞼も重くなり、視界は炎に染った――と思ったらこの場所に立っていた。
「おい女、此処はどこの国だ? 肥前か? それとも大隅か?」
声を掛けた女は不思議そうに首を傾げた。
「ヒゼン? オオスミ? 何ですかそれ? ここはルスキニアですよ」
女はさも当たり前かのように知らない単語を口にした。
そして女はふと思い立ったような顔で言った。
「あっ、もしかして旅のお方ですか? それならギルドに行くと良いですよ。それでは私はこれで」
女は小さく会釈し去って行った。
それからというものギルドとやらを探すために街ゆく人に聞き、ようやくギルドとやらに辿り着くことが出来た。
木製の扉をぎこちなく開けると、見た事も無い服装の老若男女がそこにはいた。
「新規冒険者加入の方はコチラでーす」
豊満な体つきをした女が口元に手を当て大声で言ったのが聞こえ、促されるように向かう。
「新規冒険者加入の方ですか?」
「冒険者とは何者だ?」
「冒険者をご存知でないのですね。では、こちらへどうぞ」
女に促され、脇息《きょうそく》と座布団が合わさった様な物に腰をかける。
それは座布団よりも柔らかく、沈み込み、どこか座っていて心地良かった。
女は向かい側に腰を掛け、数枚の紙を差し出し、喋り始めた。
「冒険者と言うのはですね、まぁ、いわゆる所の職業なんですよ。冒険者になると、武器の使用が許可されます。そして、これは一番の特徴なのですが、冒険者の方々はクエストが主な稼ぎ口です。クエストは、国民が困っている事などを達成難度に分けて、そちらにあるクエストボードに我々職員が貼っておきますので、その中から選んでもらって手続きしてもらって、達成した時点でギルドに報告すれば報酬を手渡します。――こんな所ですね。分かりましたか?」
女に尋ねられるが、正直な所理解不能な単語だらけで話が全く頭に入ってこなかった。
こんな話を長々と続けられても面倒なので、取り敢えず首を縦に降っておく。
すると、また女は「次はこちらへ」と言い、小さな部屋に入る。
そこには小さな椅子が一脚あるだけで、他には何も無い。
「そこにお掛け下さい」
促され、椅子に腰掛けると、女はこちらに向け手をかざし、何かブツブツと呟く。
暫くすると、目の前に幾つもの解読不能の文字が現れる。
女はかざした手を動かすと、目の前に出現した文字も手に合わせて動く。そのままその文字を一枚の紙に押し付けると、紙に先程の文字が映されていた。
そして次は、こちらの手首を持つと、手首に何かを書く動作をする。
すると、手首に見た事も無い家紋の様な模様が入った。
「ノブナガさんですね。冒険者としての登録が完了しました」
女は紙を一瞥すると、丸めて紐で結ぶ。
「それと、手首の模様ですが、そこに手をかざすと、ステータス、習得スキル、習得可能スキル、スキルポイントが見れますので」
そう言うと女はそそくさと部屋を後にした。
同じように部屋を後にし、ギルドからも出る。
大きく深呼吸をする。
何故かとても疲れたような気がする。
明日からもこんなことが続くのかと思うと憂鬱で仕方が無い。
「日本では無い……なら、此処はどこなのだ」
右も左も分からぬ状況で、どこか休める場所を求めて、異界の地の石畳の上を雑踏の中歩き続けた。
城の 石垣の様に石の敷き詰められた地面に、何やら水の吹き出す恐らく石製の何か、道行く人も尾張や、その周辺では見たことも無い服装の人達ばかりだった。
「儂は今しがた死んだはず……」
先程までの自分の行動を思い起こしてみる。
天正十年 西暦1582年 6月21日
夜も更けてきて床について暫くしての事だった。
何やら外が騒がしく目を覚ますと、外では戦いが繰り広げられていた。
倒れ行くものの断末魔、刃と刃が交わる金属音。
部屋の出入口である襖の向こうに見慣れた側近のシルエットが見えた。
「何事だ!」
「はっ、明智光秀の謀反に御座います」
側近は静かにそう告げた。
「明智の軍勢は?」
「ざっと1万以上はあるかと」
今、この本能寺にいるのは全員で30人程度、この状況で明智に勝てる見込みは無い。
「恐らく狙いは儂の首じゃ。なら、タダでくれてやる訳にはいかん。火を放て!!」
「宜しいのですか?」
そのまま黙っていると側近は「御意」と言い、去っていった。木製の艶やかで重厚感のある箪笥|《たんす》を開け、切腹裃《せっぷくかみしも》を取り出す。
肌脱ぎをした状態で帯を占める。
短刀を手に取り、奉書紙を巻き付け腹に当てる。
辺りには既に火の手が回っているようで、しきりに火の粉が爆ぜる音が聞こえる。
近くでは慌ただしく廊下を走る足音が聞こえ、この部屋にいる事が悟られるのも時間の問題のようだ。
腹に当てた短刀をゆっくりと横に一閃する。
不思議と痛みは無く、感じるのは短刀の刀身部分の冷たさだけだった。
段々と意識が朦朧とし、遠のいていくのを感じる。
手先、足先、体と徐々に冷えていき、廊下を慌ただしく駆ける足音や火の粉の爆ぜる音がどんどん遠のいていく。
瞼も重くなり、視界は炎に染った――と思ったらこの場所に立っていた。
「おい女、此処はどこの国だ? 肥前か? それとも大隅か?」
声を掛けた女は不思議そうに首を傾げた。
「ヒゼン? オオスミ? 何ですかそれ? ここはルスキニアですよ」
女はさも当たり前かのように知らない単語を口にした。
そして女はふと思い立ったような顔で言った。
「あっ、もしかして旅のお方ですか? それならギルドに行くと良いですよ。それでは私はこれで」
女は小さく会釈し去って行った。
それからというものギルドとやらを探すために街ゆく人に聞き、ようやくギルドとやらに辿り着くことが出来た。
木製の扉をぎこちなく開けると、見た事も無い服装の老若男女がそこにはいた。
「新規冒険者加入の方はコチラでーす」
豊満な体つきをした女が口元に手を当て大声で言ったのが聞こえ、促されるように向かう。
「新規冒険者加入の方ですか?」
「冒険者とは何者だ?」
「冒険者をご存知でないのですね。では、こちらへどうぞ」
女に促され、脇息《きょうそく》と座布団が合わさった様な物に腰をかける。
それは座布団よりも柔らかく、沈み込み、どこか座っていて心地良かった。
女は向かい側に腰を掛け、数枚の紙を差し出し、喋り始めた。
「冒険者と言うのはですね、まぁ、いわゆる所の職業なんですよ。冒険者になると、武器の使用が許可されます。そして、これは一番の特徴なのですが、冒険者の方々はクエストが主な稼ぎ口です。クエストは、国民が困っている事などを達成難度に分けて、そちらにあるクエストボードに我々職員が貼っておきますので、その中から選んでもらって手続きしてもらって、達成した時点でギルドに報告すれば報酬を手渡します。――こんな所ですね。分かりましたか?」
女に尋ねられるが、正直な所理解不能な単語だらけで話が全く頭に入ってこなかった。
こんな話を長々と続けられても面倒なので、取り敢えず首を縦に降っておく。
すると、また女は「次はこちらへ」と言い、小さな部屋に入る。
そこには小さな椅子が一脚あるだけで、他には何も無い。
「そこにお掛け下さい」
促され、椅子に腰掛けると、女はこちらに向け手をかざし、何かブツブツと呟く。
暫くすると、目の前に幾つもの解読不能の文字が現れる。
女はかざした手を動かすと、目の前に出現した文字も手に合わせて動く。そのままその文字を一枚の紙に押し付けると、紙に先程の文字が映されていた。
そして次は、こちらの手首を持つと、手首に何かを書く動作をする。
すると、手首に見た事も無い家紋の様な模様が入った。
「ノブナガさんですね。冒険者としての登録が完了しました」
女は紙を一瞥すると、丸めて紐で結ぶ。
「それと、手首の模様ですが、そこに手をかざすと、ステータス、習得スキル、習得可能スキル、スキルポイントが見れますので」
そう言うと女はそそくさと部屋を後にした。
同じように部屋を後にし、ギルドからも出る。
大きく深呼吸をする。
何故かとても疲れたような気がする。
明日からもこんなことが続くのかと思うと憂鬱で仕方が無い。
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右も左も分からぬ状況で、どこか休める場所を求めて、異界の地の石畳の上を雑踏の中歩き続けた。
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