勇者の料理番

うりぼう

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魔獣は食べられるか否か

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第二騎士団の面々と別れ、テントをしまい俺達は森の更に奥へと向かった。

残ったのは第一騎士団の精鋭10人とウェイン王子、太陽、俺、たまの計14人。
これは実際に魔獣に対峙する人達であり、他の騎士団の人達は引き続き魔獣の捜索や足止めに駆り出される。
足止めといっても結界を張り、それ以上の進行を止める役割である。
小さい魔獣であればなんとか倒せるが、昨日程の大きさのものは難しい。
騎士団にはそれぞれ位置情報を知らせる魔法具が持たされていて、手に負えない、結界が破られそうな魔獣が現れた時は即座に俺達討伐部隊が向かう手はずになっている。

転移魔法を使うのは難しくても馬車の動きを速める魔法は使えるからかなりのスピードで向かえる。
ゴンチャロフさん達料理人も他の駐屯地へと次々に向かう予定だ。

俺は太陽専用だからずっと太陽にくっついて歩く予定。
他に助手が必要か聞かれたが、この人数なら一人でも大丈夫なはずだ。
大変だったらたまに手伝ってもらえば良いし。

そして準備が済んだ俺達は、ここからもう少し森の奥に入った場所にいるとされる魔獣の元へと向かっている最中だ。
ガタゴトと揺れる馬車の中、俺達はやることもなくのんびりと過ごしていた。

「カレーパン美味かったなあ」
「成功して良かった。朝から揚げパンってどうかと思ったけどみんなばくばく食べてくれたし」
「ゴンチャロフさんのオムレツも美味しかったよな。また辛いのが出てきたらどうしようかと思ったけど」
「辛いのも美味しそうっちゃ美味しそうだけどね」

討伐に向かっているというのにこののんびりとした雰囲気は何なんだろうか。
まるでピクニックにでも行くような雰囲気だ。

「ていうか朝日はさっきから何やってんの?」
「下拵えだよ。昼ご飯用の」

馬車で揺れるので刃物は使えない。
けれどもやしの根っこを取るくらいは出来るのでせっせと取り続けているのだ。
それはそうと、俺は昨日から、いや前から気になる事があるのだ。

「ウェイン王子、俺ずっと気になってる事があるんです」
「ん?何?魔法の事?それとも討伐の事?何か不安な事でもあった?」
「いえ、不安とかじゃないんです」

そう、不安とかじゃない。
魔法の事でもない。
これ聞いて良いのか?
聞いて引かれたりしないだろうか。
いやでもここは聞かなければ、今後の為に!

「あの、魔獣なんですけど」
「うん?」
「あれって、食べたり出来ないんですか?」
「……………………ん?」

笑顔のまま固まるウェイン王子。
太陽も口をあんぐりと開いている。
変わらないのはたまだけだ。
うん、予想はしてたよその反応。

「…………ごめんね、もう一回聞いても良い?」
「だから、魔獣って食べれないんですか?」
「聞き間違えじゃなかったんだね」

聞かないフリをしたかと思ったら今度は頭を抱え出した。
やばい事を聞いたとは思ったが頭を抱える程なんだろうか。
この反応を見る限り、恐らく食べた事ないんだろうな。
でも魔獣大発生が数年に一度あるんだから一人や二人食べてそうな人がいそうな気がするんだけど。

「食べれそうな気がするんですよね、昨日のだっておっきい猪みたいなもんじゃないですか。ボタン鍋とか最高だろうなあ」
「アレが猪……」
「太陽だって食べてみたくない?ボタン鍋」
「朝日、似てるけど猪じゃねえぞ?食べてみたいけど」
「でしょ?やっぱ太陽はそう言うと思った!」
「た、太陽まで」
「ウェイン王子が食べたいかどうかは置いておいて、食べられるかどうかだけでも知りたいんですけど」
「食べられるだろう。何度か食べている所を見た事があるぞ」
「本当!?」

たまのセリフに即座に反応。
そしてウェイン王子の返事を待つべくそちらに視線を向けると……

「……うん、食べれない事はない、と思うよ」
「!」

歯切れの悪い返事だが、食べられるとの答えに目が輝く。

あ、もやし終わっちゃった。
次はキャベツにするか。
包丁で切るのも良いけど俺は手で地道にちぎるのが好きなんだよね。
という訳でバリバリとキャベツを引きちぎっていく。

「食えるんだ!わー食べたいなあ」
「一応、魔獣が発生する度に珍味として売り出されてるんだ」
「珍味!」
「干し肉に加工するとお酒に良く合うんだって」

ふむふむ、干し肉か。
ジャーキーみたいな感じかな。

「ただそのままのお肉は臭みが凄くてね、中々調理して食べるって人はいないかな」
「臭み、ですか」

臭み、臭みかあ。
普通のお肉でも処理が甘いと臭みでるしなあ。
魔獣の場合は討伐してから処理するまで時間かかるから余計に臭みが出やすいのかも。

「毒がある訳じゃないんですよね?」
「昨日のあの魔獣にはないよ」
「ん?昨日のって……魔獣って色んな種類いるのか?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてねえ!」

毒がない!とガッツポーズをする俺に対し、太陽はウェイン王子のセリフに引っかかっている。
そうか、魔獣にも色んな種類があるんだ。
毒がある魔獣はちょっと怖くて手出せないけど、それ以外なら食べてみたいな。

(だって魔獣食べるなんて日本じゃ絶対出来ないし!)

魔獣どころか野生の動物を狩ってその場で捌いて食べるというのすら現代っ子には難しい。
食肉加工の映像なんて見ていられない。
魚を捌くのは平気だけど。
昨日の魔獣はさすがにもう無理だろうから、次の魔獣で試してみよう。

「ウェイン王子、お願いがあるんですが」
「……この話の流れだと嫌な予感しかしないけど一応聞こうかな」
「はい、次魔獣退治したら、すぐに食肉加工して欲しいです!」
「ああ、やっぱり……」

加工は誰かにお願いしたいが、無理なら魔法でなんとか……な、何とかしてみせる。
そうと決まれば。

「太陽!魔獣の脳天目掛けて一撃必殺よろしくね!」
「何で一撃必殺?」
「太陽と戦ってストレス溜まったら美味しさが逃げちゃうじゃん」
「……了解」

お肉にはノーストレス推奨。

(うへへ、楽しみだなあ)

「……お主、よだれ出てるぞ」
「おっと、いけないいけない」

たまに指摘されてじゅるりと垂れたよだれを手の甲で拭った。
ちゃんと魔法で手をキレイにします、はい。

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