高塚くんと森くん

うりぼう

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席替えと変態とダチ

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「お、らっきー」

引いたくじの番号と、黒板に書かれた番号とを見て呟く。

今日は六時間目が自習になったので、席替えをする事になったのだ。
オレの新しい席は窓際の後ろから二番目。
一番後ろじゃないのは残念だけど十分良い席だ。

「いいなあ森。オレと変われよ」
「やーだね。つかお前ど真ん中かよ!可哀想ー」
「くっそー恨むぞ森」
「何でだよ」

ガタガタと机と椅子を移動させている最中に友人の佐木に声を掛けられる。
教卓の真正面に次いで嫌な席を当ててしまったらしい佐木に吹き出し大声で笑う。
ざまーみろ。

オレは自分のくじ運の良さにガッツポーズだ。
これはきっとあの変態に付き纏われているオレに対する神様からの贈り物だ。
神様ありがとう。

鼻歌を口ずさむ勢いでうきうきと移動する。
前は女子で、隣は確か変態と仲の良い奴だ。
さて、窓際最後尾の特等席をゲットしたのはどこのどいつか、と振り返り、固まった。

「……ゲ」
「あれ、前の席って森?」

何故なら物凄く嬉しそうな笑みを浮かべた変態こと高塚が机を移動していたからだ。

何でだ。
何でよりによってコイツだ。
せっかくの素敵昼寝スポットが台無しだ。
いらねえ、こんな偶然なんか全っ然いらねえ。
神様のばかやろう。

「らっきー!!これからは遠慮なくいちゃいちゃ出来るね森ちゃん!」

にこにこしてんじゃねえ。
こっちの心中はお前の笑顔とは全く正反対の位置にある。

「……誰か席変わってくんねえかな」

ぼそりと呟くと。

「あ、じゃあ私が……」
「森、諦めろ男らしくねーぞ!」
「……っ」

せっかく。
せっかく前の席のコが申し出てくれたのに。
誰だ今のセリフ言いやがったのは。
声の方を見ると、犯人は佐木。
他の連中をはやし立てていやがる。
あのやろうさっき笑った事根に持ってるな。

その女子ともどもそいつに殺気のこもった視線を寄越す。
結局はそこの席に決まってしまった。

ニヤニヤと笑っているのが気配でわかる。

「後ろから視線感じても心配すんなよ、オレだから」
「お前だから心配だ」
「森がオレのコト心配してくれるなんて……!」
「心配なのはオレの繊細な硝子のハートがテメェのそのねっとり絡みつく視線に耐えられるかどうかだボケ」
「じゃあそのハートが壊れないようにずーっと見守ってるね!」
「人の話を聞けえええ!!」

誰かコイツに理解力というものを躾てくれ。
マジで。

「高塚、ちょっと来いよ!」
「えーせっかく森といちゃいちゃしてんのにー」
「とっとと行け」

胸倉を掴みそうになったところで廊下側からお声がかかり、渋る高塚を無理矢理にそちらへ行かせた。

「ははっ、大変だなあ森ー」

大きな溜め息を吐きずるずると背もたれに凭れたところで、隣の奴が笑いながら言ってきた。
そう思うんならなんとかしてくれあのバカを。

「あ、ちゃんと話すの初めてだよな?オレ、石野。変態のダチ」

変態、という言葉に笑ってしまった。
オレも毎日言っているがまさかツレにまで言われるとは。

「はははっ、変態って!」
「その通りだろ?」
「確かに」

顔を見合わせ笑い合う。
なんだ、高塚の友達だから同じようなタイプだと思っていたのに良い奴じゃないか。
見た目は派手だが話しやすい。
というか、何だか波長が合うというか。
意外にも音楽の好みや好きなテレビが被っていて、話していて楽しい。

そういえば最近は高塚に追われて、周りとの会話もその事に集中していたからこういう会話は久しぶりだ。
凄い癒されている気がする。

隣が石野で良かった。
後ろはアレだけど。

「あー!ちょ、何森と話してんだよ!」
「あ?オレが誰と話そうが関係ねえだろ」
「はッ!!石野、もしかしてお前も森の事狙っ……」
「「お前と一緒にすんなボケ」」
「な……!?」

ツッコミのセリフが重なり再び顔を見合わせ笑い合う。

「ぶはっ、ハモってるし!」
「真似すんなよ森ー」
「どっちが!」
「な、な、なんなんだよハモっちゃってさ!仲良しかよ!何、オレだけ除け者!?森ってばオレというものがありながら!浮気者!!!」
「お前と付き合った覚えもなけりゃ浮気した覚えもねえっつんだ勘違い野郎」

はっ、と鼻で笑い冷たく言い放つ。
すると何を思ったか高塚は背後からオレの頭を抱え込むように抱きついてきて。

「こんなに愛してるのに!」
「抱きつくなー!!」
「ぐふっ……も、森の愛が痛いぜ……っ」

もちろんすぐさま鉄拳制裁。
腹に肘をめり込ませた。

女子からのブーイングが聞こえた気がしないでもないが、気にしちゃいられない。

顔の形が変わるくらい殴ったわけでもあるまいし、そもそも本人に大したダメージがないのだ。
気にするだけ無駄というもの。

「……お前マジで森の事好きなんだなあ」

今のやりとりを間近で見た石野が苦笑いを浮かべて言う。

「当然!手出すなよ?」
「出さねーよ。興味ねえし」
「……」

じと、と疑いの目を向ける高塚。
心配しなくても男のオレを口説きたがる頭イカレてる輩はお前くらいのものだ。
なんでもかんでも自分を基準に考えるんじゃねえ。

「でもさ、何で森?何かきっかけとかあったワケ?」
「え」

そういえば。
何で高塚はオレなんかに。
きっかけと言われてもオレに思い当たる節なんて全くない。

オレもつい気になって、石野共々高塚を見つめた。

「……っ」

視線がかち合った瞬間、高塚が物凄い勢いで顔を逸らした。
手で真っ赤になった顔の下半分を覆っている。

あれ、なんかこの光景前にも見た事があるような。

「……高塚?」
「やっばい……!」
「あ?」
「上目遣い……上目遣いやばい、超かわいっ」
「「………は?」」

言われれば確かに。
椅子に座った状態のオレと立ったままの高塚との視線が合えば、必然的に上目にはなる。
なるがしかし男の上目遣いなんかでそこまで顔を真っ赤にさせて悶える必要が一体どこにあるというのだ高塚。

戻ってこい。
正気に戻れ。

「やっばいマジもえた超可愛い最高今の森で余裕で五回はいけ」
「し、下ネタ反対!!!」

皆まで言う前にオレの声で掻き消す。
教室でなんて事言おうとしていやがるんだコイツは。

本当にもう誰かこいつをなんとかしてくれ。
もう何度思ったかしれないそんな思いにうなだれるオレの横で。

「……つーかきっかけは?」
「ナイショ」
「ははっ、何それうざ」

人差し指を唇に当て、ハートマークが飛び散らんばかりにウィンクをして答える高塚に対して冷静かつ満面の笑みでもって返す石野に、コイツとは仲良くなれそうだなと思った。

この時あっさりと流されてしまった、高塚がオレに惚れたきっかけ。
それをオレが知るのは、まだもう少し先の事。





end.

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