現代物短編中編

うりぼう

文字の大きさ
3 / 33

すみれとあおい①

しおりを挟む



俺、結城葵には毎朝の日課がある。

「これで良し」

それは朝一番に教室に来て、教壇の脇にある机に花を飾る事。
実家が花屋で、手伝いを始めた中学生の頃から母親に持たされているのだが、高校に入ってからは自分で好きな花を選んで持ってきている。

「うん、今日もキレイだな」

花瓶に生けられた花を見て満足して頷く。
生まれた時からずっと花に囲まれてきたから花をいじるのは嫌いじゃない。
けれど、俺みたいな地味な男と花なんて似合わないにも程がある。
だから誰にも見られないようにいつもこっそりと生けているのだ。
大抵の人はそこに花がある、くらいの認識だろう。
きっと誰が生けているかもいつ花が入れ替わっているのかも気付いていない。
俺はそう思っていたのだが……

「なあ、教室の花って誰が持ってきてんの?」

教室の中心から聞こえてきたそんなセリフに反応してしまった。
それを言ったのはクラス、いや学校で一番の人気者である笹野崇。
おじいさんがフランスだかイギリスだかとにかくヨーロッパ系の人らしく、背が高く体格も良く全体的に色素が薄い。
外国の血が入っているからだろうか、天真爛漫で誰に対しても愛想が良く、自分の意見を常にはっきりと主張している。
恵まれた容姿と人懐こい性格で彼はいつも大勢に囲まれていた。
そしてその大勢に交じり、ひっそりと俺が想いを寄せている相手でもある。
当然男同士だからどうこうなれるとは期待していない。
いないけれど。

(笹野って、花が好きなのかな?)

好きな相手との接点に思わず耳を傾ける。
俺が話しかけられた訳じゃないから、こっそりではあるのだが。

「花?そんなのあったっけ?」
「あるじゃん、ほら。てか前にあるのに気付いてなかったのかよ」
「あれ、本当だ」
「で、誰が持ってきてんだろ?毎日変わってるよな?」
「そうだっけ?」

友人達と交わしている会話。

(気付いてくれてたんだ、毎日変わってるって)

人知れずひっそりとしている事だが、やはりこうして気付いてくれると嬉しい。
思わず口元がニヤけてしまいそうで必死に引き締める。

「で?その花がどうしたんだよ?」
「どうっていうか、気になるじゃん」
「何で?」
「どんな人なんだろうなあとか、きっと心のキレイな人なんだろうなあとか、可愛い子なんだろうなあとか」
「はは!夢見てんじゃねえよ!」
「花が好きだから心がキレイとか可愛いとか!単純だなあ崇!」
「うるさいなあ、だって毎日だぜ?そんなの出来るのよっぽど花が好きじゃないとムリだろ!」
「まあ確かにそうだけどなあ」

笹野の言葉に周りがくすくすと笑む。
そして……

「俺、そういう子と付き合いたいなあ」

ぼそりと呟いた笹野の爆弾発言は、一気に教室を駆け巡り学校中に知れ渡った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

人並みに嫉妬くらいします

米奏よぞら
BL
流されやすい攻め×激重受け 高校時代に学校一のモテ男から告白されて付き合ったはいいものの、交際四年目に彼の束縛の強さに我慢の限界がきてしまった主人公のお話です。

ファントムペイン

粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。 理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。 主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。 手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった…… 手足を失った恋人との生活。鬱系BL。 ※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...