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すみれとあおい①
しおりを挟む俺、結城葵には毎朝の日課がある。
「これで良し」
それは朝一番に教室に来て、教壇の脇にある机に花を飾る事。
実家が花屋で、手伝いを始めた中学生の頃から母親に持たされているのだが、高校に入ってからは自分で好きな花を選んで持ってきている。
「うん、今日もキレイだな」
花瓶に生けられた花を見て満足して頷く。
生まれた時からずっと花に囲まれてきたから花をいじるのは嫌いじゃない。
けれど、俺みたいな地味な男と花なんて似合わないにも程がある。
だから誰にも見られないようにいつもこっそりと生けているのだ。
大抵の人はそこに花がある、くらいの認識だろう。
きっと誰が生けているかもいつ花が入れ替わっているのかも気付いていない。
俺はそう思っていたのだが……
「なあ、教室の花って誰が持ってきてんの?」
教室の中心から聞こえてきたそんなセリフに反応してしまった。
それを言ったのはクラス、いや学校で一番の人気者である笹野崇。
おじいさんがフランスだかイギリスだかとにかくヨーロッパ系の人らしく、背が高く体格も良く全体的に色素が薄い。
外国の血が入っているからだろうか、天真爛漫で誰に対しても愛想が良く、自分の意見を常にはっきりと主張している。
恵まれた容姿と人懐こい性格で彼はいつも大勢に囲まれていた。
そしてその大勢に交じり、ひっそりと俺が想いを寄せている相手でもある。
当然男同士だからどうこうなれるとは期待していない。
いないけれど。
(笹野って、花が好きなのかな?)
好きな相手との接点に思わず耳を傾ける。
俺が話しかけられた訳じゃないから、こっそりではあるのだが。
「花?そんなのあったっけ?」
「あるじゃん、ほら。てか前にあるのに気付いてなかったのかよ」
「あれ、本当だ」
「で、誰が持ってきてんだろ?毎日変わってるよな?」
「そうだっけ?」
友人達と交わしている会話。
(気付いてくれてたんだ、毎日変わってるって)
人知れずひっそりとしている事だが、やはりこうして気付いてくれると嬉しい。
思わず口元がニヤけてしまいそうで必死に引き締める。
「で?その花がどうしたんだよ?」
「どうっていうか、気になるじゃん」
「何で?」
「どんな人なんだろうなあとか、きっと心のキレイな人なんだろうなあとか、可愛い子なんだろうなあとか」
「はは!夢見てんじゃねえよ!」
「花が好きだから心がキレイとか可愛いとか!単純だなあ崇!」
「うるさいなあ、だって毎日だぜ?そんなの出来るのよっぽど花が好きじゃないとムリだろ!」
「まあ確かにそうだけどなあ」
笹野の言葉に周りがくすくすと笑む。
そして……
「俺、そういう子と付き合いたいなあ」
ぼそりと呟いた笹野の爆弾発言は、一気に教室を駆け巡り学校中に知れ渡った。
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