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うりぼう

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※啓介視点



「びっくりしたよ、まさか啓介が真壁指名するなんて!」
「俺達もびっくりだって!」
「でもさあ、普通に断られちゃったじゃん」
「ぶははっ、フラれてやんの啓介!うける!」
「うるせー」

あの話し合いの最中、真壁を指名した俺は今言われた通りあっさりと断られてしまった。

『え、い、嫌だ』

小さくだがはっきりと、少しどもっていたがその口から出たのは拒否のセリフ。
びくびく震えているのがうさぎみたいで可愛かった。

真壁一也(まかべいちや)
今年初めて同じクラスになれたけど、実は中学の時からの同級生だ。
身長172cm、体重は多分60kgあるかないか。
いつも本を読んでるから、趣味は読書だと思う。
友達と漫画やゲームの話をしている事もあるからその辺も好きなんだろうな。
休みの日はほとんど家から出ないらしい。
俺は色々出掛けるから、その度に誘ってみたいのに全く声が掛けられない。
前に一回だけ、先生に提出するノートの束を真壁が持ってて、それを手伝おうとして手に触ってしまったことがある。
さらりとしていて温かくてすべすべで、俺よりも少しだけ小さい手の感触を未だに覚えている。
ここまで言えばわかるだろう、俺は真壁に惚れている。
いつからかはわからないけど、気付いたら惹かれていた。
真壁の一挙手一投足が可愛くて仕方がない。
今回のおしゃれチャレンジで誰が良いかと聞かれ、無意識に真壁の名前をあげていた。

「でもさすが啓介だよね」
「え?何が?」
「だって他の女子の名前言ったら後が面倒だから、あえて真壁くんの名前出したんでしょ?」
「でも地味だけど、確かに磨き甲斐はありそうだよね」
「わかる。真壁くんチョー肌ぷりぷりだもんね」
「真由香もそう思った?あたしも!」

良く連んでるギャル二人、真由香と愛莉がキャーキャー騒ぎ出す。
っておいおい聞き捨てならないぞ。
何でこいつらが真壁の肌のキレイさに気付いてるんだ。
まさか、狙っ……!?

「あの肌分けて欲しいー!」
「わかるー!」

……てはいないみたいだ。
良かった。

「でも断られちゃったもんね」
「どうするー?まあまだ次の話し合いまで時間あるから急ぎじゃないけど」
「あたしは友梨ちゃんも良いと思うんだよねー」
「友梨ちゃんだと頼み込めば絶対受けてくれるよね!いつも三つ編みしか見ないから色々やってみたい髪型あるんだよね!」
「え、友梨ちゃんと近付けるチャンス……!ひと夏の思い出、マドンナをゲットー!!」
「うわキモイ」
「ないわー」


田辺の名前に反応したこれまた良く連んでる譲に女子二人の視線が鋭く突き刺さり、もう一人の友人蓮二が呆れたような溜め息を吐き出す。

「でも良く考えたら男女一人ずつサンプルがいた方がいいよね?」
「まあなーお客は女の子だけじゃねえからな。まあ女の子だけでも良いけど!」
「黙れナンパ男」
「家で右手と遊んでろ」
「え、ちょ、さっきから真由香も愛莉も冷たくない?気のせい?」
「気のせいじゃない?」
「そっかー気のせいか!」

冷たいセリフを浴びた譲がさらりとそれを受け入れる。
うん、アホだけど悪い奴ではない。

「男女一人ずつだったら、啓介が口説いてくれば良いんじゃないか?」
「え?」

蓮二がぽつりと呟く。

「口説くって、誰を?」
「真壁を」
「えっ」
「良いじゃん良いじゃん!そうしようよー!」
「こう言っちゃ何だけど、他の男子だとちょっとアレだしね」
「まあ地味グループの中じゃ一番マシな方だしなあ」

譲てめぇこの野郎真壁のどこがマシな方なんだ可愛いだろどう見ても可愛いだろ気付け!いややっぱり気付くな!

「でもやると思う?今日の拒否っぷり見ると難しそうだけど」
「だからそこは啓介に頑張って貰うんだよ」
「いやいや何で俺が」

真壁と話せそうなきっかけをくれたのは嬉しい。
けど真壁が嫌がる事を強要したくはない。
悩む俺に蓮二と譲がニヤニヤと追い討ちをかけてくる。
真由香も愛莉も止めないところを見ると、恐らく意見は同じなのだろう。

「自信ねえの?」
「天下無敵のフェロモン男が情けねえなあ」
「誰がフェロモン男だ!」
「何も恋人にするために口説くわけじゃねえんだ。出来んだろ?」

いやむしろ恋人にするために口説きたい。
自分で指名しといてなんだけど、可愛い真壁の姿を全校生徒の前に晒すのは複雑だ。

「そっかあ、啓介は自信ないんだー?」
「じゃあしょうがないよね?」
「真壁くんに声掛けるのが嫌なんでしょー?」
「ばっ、違……!」
「そっかそっかあ、じゃああたし達で頼みに行ってみる?」
「真壁くんあんまり女慣れしてなさそうだし、ちょーっとやっちゃいますか」
「や、やっちゃうって、何を……」
「決まってんじゃん、こうしてボタンもう一個外して、真壁くんの腕にぎゅーっと抱き付いて……」

早い話が色仕掛けである。
真由香も愛莉も顔ばかりじゃなくスタイルも抜群。
その辺の男ならば間違いなくすれ違いざまに振り返ってしまう程だ。
しかも人懐っこい性格の二人はギャルを嫌いだと豪語する連中すらもいつの間にか虜にしてしまっている節がある。
万が一にもないと思いたいが、もしかしたら真壁も、と思うといてもたってもいられず。

「わかった!俺がやる!口説いてみせる!」

そう叫んでいた。
バカ、本当に俺のバカ。

「よーし、じゃあ俺はまた瞬殺で断られるに五百円!」
「あたしも断られるのに食券二枚」
「あたしもー」
「まあ頑張れよ。俺も断られると思うけど」
「ちょ、言い出しっぺ……!」
「啓介はどうする?」
「どうって……」

どうするも何も賭けなんかするか、とぐるりと見回 すと、当然乗っかるよな、と期待に満ち満ちた表情の友人達。
ああちくしょう賭ければいいんだろ!?

「……………絶対、断られないに食券10枚!」
「おお、いくねー」

半ばやけくそに叫んだ言葉に周囲が盛り上がる。
かくして、俺は翌日から真壁に付き纏う日々が始まった。



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