復讐のはじまりは暗くて寒い

皐月亭 もっちりー

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166.

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「あっ!あそこっ咲いてるわ」

少女が指差す先の庭木には淡い黄色の花が一輪咲いていた

「あぁ本当ですね」

「…朝はまだ咲いてなかったのよ」

「そうでしたか…お気づきになられるとはさすがはお嬢様ですね」

一輪だけ咲いた花を指差し見上げるその少女の瞳には明るい光が宿っていた

「明日にはもっとたくさん咲いてるかな?」

その植木は一輪の咲いた花以外にもふくらんだつぼみを沢山付けていた

「そうですね。明日の朝が楽しみですね…」

リザリディスに笑顔で答えるルイザの心にも明るい花が咲くようだった

少し前のリザリディスは母を亡くしてからふさぎ込み口数も少なくなっていた

部屋に籠ってしまっていたリザリディスを診たモース医師の勧めで
リザリディスの落ちた食欲を促すためという理由をたてに
何故か暗く感じるようになり重苦しい雰囲気のする部屋から踞る少女を連れ出し
日に数度は庭を散策するようになった

はじめのうちリザリディスはとぼとぼとした足取りで繋いだ乳母の手に引かれるままにうつむきながら歩いていた
乳母が話しかけても緩く頭を振るだけで特に話すこともなく
乳母が止まれば同じく立ち止まり
周りには何も興味を示すこともなく暗い瞳で足元を見つめてただ立ち尽くす姿は萎れた花のようで憐れであった

母を亡くす前のリザリディスはこうではなかった
好奇心旺盛で庭に出れば待ちきれないと繋いだ手を振りほどく勢いでぐいぐいと進み
キョロキョロと辺りを見回しては少しの変化でも目敏く見つけてあれは何なのかと気がすむまで尋ねていた
活発で明るい少女だった

リザリディスの変化に心を痛めていても主家の令嬢である少女の心に不用意に踏み込む事は出来ず
見守る以外の術をを持たない乳母達は医師の勧めという大義名分を得てゆっくりと少女に話しかけながら明るい庭を歩き時にはただ静かにベンチに座り時間を潰した

そうして過ごすうちに少しずつリザリディスの様子に変化が訪れた
今では瞳には以前のような暗さは無くなり表情もいくぶん明るくなったように感じられた

以前のような繋いだ手をぐいぐいと引くほどの強さはないが何処へ行きたいと自分から言うようにり落ちていた食事の量も元に戻りつつあった

午後の僅かに傾いた日差しに少女の肌が焼けぬように日傘を差し掛け
リザリディスの小さな手を取り庭の散策へと赴いた

近しい親族が亡くなると喪中は一年ほど続き身を慎む事が常識とされている
そのためリザリディスも家の中でも落ち着いた色合いの簡素なワンピース姿であった
デザインは地味であっても流石に貴族の令嬢の身に付ける素材は高級品であり近くで見れば布と同系色の糸で刺された細やかな刺繍やレース飾りが施されてるのが見てとれた
足元は下ろし立てのような汚れも傷もない柔な素材の靴を履いていてストラップにはサイズは小さいが深い青色の高品質の宝石が飾られていた


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