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隼人くんが住むマンションの前に来た。
……気づけば日が暮れた。
それでも僕は待ち続けた。
「何、、してんの?」
隼人くんが、声だけで僕を捕らえた。
時刻は0時を過ぎている。
その目には光はなく、深い闇の底に沈んでいるみたいだった。
首筋に見える赤い痕……目を逸らしても、体の奥で嫌でも震える。
「俺ら別れたでしょ?何?」
「早く帰りなよ。」
その言葉に、僕の胸の奥が痛く締め付けられる。
でも、終電はもう行ってしまった。
僕は逃げ場を失い、ただ立ち尽くすしかなかった。
「話そ?」
「話すことなんてない」
「あるよ」
「……とりあえず、もう夜中だから、中入って」
「ねぇ隼人くん」
「……その呼び方?」
「……え?」
「石川は呼び捨てなのに俺はいつもくん付だったよね。なんでなのかな?俺より石川の方が大事?石川とは付き合った?幸せ?俺より?報告にきたの?いらないよ?」
「違うよ!!付き合ってないよ!僕は隼人くんが好き!くん付けなのが嫌なら呼び捨てにするから!!」
ガン!
壁を叩く音がする
「せっかく君のために手を離したのに、また現れて…」
「はぁ、もういいや」
のらりのらりと歩いてリビングに行く。
僕は玄関に取り残されたままだ。
帰ってきたら彼の手にはカッターが握られていた。
「……へ」
「君が悪いんだよ…また現れたら、俺もう手を離せないじゃん…これで…もうどこにいかないよね…」
カッターで壁ドンされる。
刃物に縁がある男だな、僕も。
「取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで」
その瞳に光はなく、真っ黒だ。
でも、目が離せなかった。
怖いのに、胸の奥が熱くて震える。
「で、でもさ!女の人と寝てきたよね!」
「ああうん久々にね。別れたし、もうどうでもよくなって。でもなんの感情も出なかった。ただ単に行為しただけだった」
「な、なんで」
「………」
「なんで僕にはやってくれないのに……?」
「……っ」
カッターが床に転がる音がした瞬間、唇が強引に奪われた。
「んっ……! んんっ……っ!」
荒々しく、必死で、唇を貪られる。
歯がぶつかりそうな勢いで、息ができない。
けれど離れてほしくない――そんな矛盾が胸を焼いた。
「はぁ、はぁ……光希……可愛い、可愛いよ、ほんと……」
隼人くんの声は掠れて、泣きそうで、でも狂おしいほど甘かった。
舌がまた伸びてきて、僕は訳も分からず口を開く。
ぬるりと侵入してきた熱が、僕の舌に絡みついた。
「ん……っ、あ、や……っ」
頭が痺れる。
濃厚な口づけに思考が吹き飛んでいく。
やっと離れた時には、僕の唇は腫れて、息も絶え絶えだった。
「……俺ね、性行為、好きじゃないんだ」
「……え?」
「おかしいよね?経験人数2桁超えてるのに。3桁いくかもなのに。昔は寂しくて寂しくて、女を抱いてる時だけは寂しさがなかった。でも、」
「君に出会って、寂しくなくなった」
「…………」
「大学生になって、入学式で君に出会った。道迷っていた君を案内した時は、運命だと思った。可愛くて可愛くて、一目惚れ、それからずっと君の虜。付き合えた時は本当に嬉しかった。」
「…………」
「でも手を出すことだけはできなかった。俺にとっては寂しいからやるものだし、寂しくないのにやるって変な感じで。ただの欲望になるだろ?あと手を出したら前の女たちと同じになりそうで、嫌で、そういうのなしで好きなってもらいたくて…わがままでごめんね。君は……特別だから」
「……そういうことだったんだね」
謎が解けた。彼が頑なに拒んでいた理由が。
「捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで」
彼は何かに取り憑かれたようにぶつぶつ呟いた。
「……捨てないよ…」
僕は彼を抱きしめた。
「っ!光希!!!光希光希光希ぃ!!」
「ごめんね…実は、最初は僕から君と別れようとしたんだ…君の幸せのために…」
そう言葉を吐いた瞬間、目の前の彼の顔が絶望に染まった。
――まるで世界そのものが崩れ落ちたみたいに。
「な、何それ」
声が掠れている。信じられない、そんな目をしていた。
「君が僕を抱いてくれないから、他に本命いるのかと思って」
彼の態度に罪悪感が湧いてくる。
「……俺は彼氏失格だったんだね…君のこと不安にさせてばっかりで…」
俯いた横顔が、驚くほど脆く見えた。
「違うよ…君は本当に優しい彼氏だ…」
震える声で必死に否定した。
心の底からの本音だった。
「……そう言ってくれるのは君だけだよ」
俯いた横顔が、寂しげだった。
「で、優希のこと好きなのかと思っちゃうし」
僕の口から名前が出た瞬間、彼の目が鋭く光った。
優希の話題になると、彼の視線は一瞬だけ冷たくなる。
「そんな訳ないじゃん…むしろ石川くんは真面目だから、俺のこと敵視していたよ。俺も興味なかったし」
彼はあっさりと言い切った。
胸の奥にあった小さな棘が、少しだけ抜けていく気がした。
「うん…」
勘違いがどんどん解けていく。
「僕ら、似たもの同士だね」
お互いのことを思って別れようとするところとか。
まあ僕は未遂だったけど。
「だからさ…隼人くん、」
「別れるなんて言わないで」
「また付き合おう?」
「僕を抱いて…」
そういうと、今度は僕からキスした。
拙いキスだったと思う。
でも彼は幸せそうだった。
……気づけば日が暮れた。
それでも僕は待ち続けた。
「何、、してんの?」
隼人くんが、声だけで僕を捕らえた。
時刻は0時を過ぎている。
その目には光はなく、深い闇の底に沈んでいるみたいだった。
首筋に見える赤い痕……目を逸らしても、体の奥で嫌でも震える。
「俺ら別れたでしょ?何?」
「早く帰りなよ。」
その言葉に、僕の胸の奥が痛く締め付けられる。
でも、終電はもう行ってしまった。
僕は逃げ場を失い、ただ立ち尽くすしかなかった。
「話そ?」
「話すことなんてない」
「あるよ」
「……とりあえず、もう夜中だから、中入って」
「ねぇ隼人くん」
「……その呼び方?」
「……え?」
「石川は呼び捨てなのに俺はいつもくん付だったよね。なんでなのかな?俺より石川の方が大事?石川とは付き合った?幸せ?俺より?報告にきたの?いらないよ?」
「違うよ!!付き合ってないよ!僕は隼人くんが好き!くん付けなのが嫌なら呼び捨てにするから!!」
ガン!
壁を叩く音がする
「せっかく君のために手を離したのに、また現れて…」
「はぁ、もういいや」
のらりのらりと歩いてリビングに行く。
僕は玄関に取り残されたままだ。
帰ってきたら彼の手にはカッターが握られていた。
「……へ」
「君が悪いんだよ…また現れたら、俺もう手を離せないじゃん…これで…もうどこにいかないよね…」
カッターで壁ドンされる。
刃物に縁がある男だな、僕も。
「取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで取らないで」
その瞳に光はなく、真っ黒だ。
でも、目が離せなかった。
怖いのに、胸の奥が熱くて震える。
「で、でもさ!女の人と寝てきたよね!」
「ああうん久々にね。別れたし、もうどうでもよくなって。でもなんの感情も出なかった。ただ単に行為しただけだった」
「な、なんで」
「………」
「なんで僕にはやってくれないのに……?」
「……っ」
カッターが床に転がる音がした瞬間、唇が強引に奪われた。
「んっ……! んんっ……っ!」
荒々しく、必死で、唇を貪られる。
歯がぶつかりそうな勢いで、息ができない。
けれど離れてほしくない――そんな矛盾が胸を焼いた。
「はぁ、はぁ……光希……可愛い、可愛いよ、ほんと……」
隼人くんの声は掠れて、泣きそうで、でも狂おしいほど甘かった。
舌がまた伸びてきて、僕は訳も分からず口を開く。
ぬるりと侵入してきた熱が、僕の舌に絡みついた。
「ん……っ、あ、や……っ」
頭が痺れる。
濃厚な口づけに思考が吹き飛んでいく。
やっと離れた時には、僕の唇は腫れて、息も絶え絶えだった。
「……俺ね、性行為、好きじゃないんだ」
「……え?」
「おかしいよね?経験人数2桁超えてるのに。3桁いくかもなのに。昔は寂しくて寂しくて、女を抱いてる時だけは寂しさがなかった。でも、」
「君に出会って、寂しくなくなった」
「…………」
「大学生になって、入学式で君に出会った。道迷っていた君を案内した時は、運命だと思った。可愛くて可愛くて、一目惚れ、それからずっと君の虜。付き合えた時は本当に嬉しかった。」
「…………」
「でも手を出すことだけはできなかった。俺にとっては寂しいからやるものだし、寂しくないのにやるって変な感じで。ただの欲望になるだろ?あと手を出したら前の女たちと同じになりそうで、嫌で、そういうのなしで好きなってもらいたくて…わがままでごめんね。君は……特別だから」
「……そういうことだったんだね」
謎が解けた。彼が頑なに拒んでいた理由が。
「捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで」
彼は何かに取り憑かれたようにぶつぶつ呟いた。
「……捨てないよ…」
僕は彼を抱きしめた。
「っ!光希!!!光希光希光希ぃ!!」
「ごめんね…実は、最初は僕から君と別れようとしたんだ…君の幸せのために…」
そう言葉を吐いた瞬間、目の前の彼の顔が絶望に染まった。
――まるで世界そのものが崩れ落ちたみたいに。
「な、何それ」
声が掠れている。信じられない、そんな目をしていた。
「君が僕を抱いてくれないから、他に本命いるのかと思って」
彼の態度に罪悪感が湧いてくる。
「……俺は彼氏失格だったんだね…君のこと不安にさせてばっかりで…」
俯いた横顔が、驚くほど脆く見えた。
「違うよ…君は本当に優しい彼氏だ…」
震える声で必死に否定した。
心の底からの本音だった。
「……そう言ってくれるのは君だけだよ」
俯いた横顔が、寂しげだった。
「で、優希のこと好きなのかと思っちゃうし」
僕の口から名前が出た瞬間、彼の目が鋭く光った。
優希の話題になると、彼の視線は一瞬だけ冷たくなる。
「そんな訳ないじゃん…むしろ石川くんは真面目だから、俺のこと敵視していたよ。俺も興味なかったし」
彼はあっさりと言い切った。
胸の奥にあった小さな棘が、少しだけ抜けていく気がした。
「うん…」
勘違いがどんどん解けていく。
「僕ら、似たもの同士だね」
お互いのことを思って別れようとするところとか。
まあ僕は未遂だったけど。
「だからさ…隼人くん、」
「別れるなんて言わないで」
「また付き合おう?」
「僕を抱いて…」
そういうと、今度は僕からキスした。
拙いキスだったと思う。
でも彼は幸せそうだった。
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