情緒不安定な僕が心を入れ替えて嫉妬をやめたら、彼氏に囚われそうになった

あと

文字の大きさ
4 / 6

4

しおりを挟む
「あのさー、俺のこと好き?」

唐突に放たれた問い。
彼の目はどこか無邪気そうで、それが逆に怖い。何を試されているんだろう。

「あ、当たり前じゃん」

即答したつもりだった。けれど声は裏返っていた。

「なら俺の好きなところ、10個以上言って」

にやりと笑って、まるでゲームの課題を出すみたいに言う。

「……え?」

頭が真っ白になる。
どうして急に? そんなの言葉にしなくても伝わってると思ってたのに。

「ほら、早く~。俺のこと好きなんでしょ?」

楽しそうな声色。けれど、その目の奥は笑っていなかった。
胸が締めつけられる。

「え、えっと……」

必死に考えるのに、言葉が出てこない。心臓の音ばかりが大きく響いて、頭の中がぐちゃぐちゃになる。

「はい、時間切れ」

軽い調子で切り捨てる。唇に浮かぶのは、楽しんでいるような笑み。
でも、その響きには冷たい影が混じっていた。

「俺のこと、そこまで好きじゃなかったんだね。……今までずっと、"自分が捨てられるのが嫌だから"嫉妬してただけ」

まるで結論を突きつけられたみたいに言われて、心臓がずしんと沈む。

「ち、違うよ!! 大好きだよ!! 愛してる!!」

手首を縛られたまま、必死で身体を起こす。
声が裏返っても、必死に叫ばずにはいられなかった。

「ふーーん」

彼は少し首を傾け、まるで観察するように僕を見下ろす。

「じゃあ、今から俺が女と寝てくるって言ったらどうする?」

胸が締めつけられる。
冗談だとわかっても、その言葉は刃みたいに突き刺さる。

「じょ、冗談でもそんなこと言うのやめて……!」

声が震える。涙が頬を伝う。止まらない。

「僕は……冬夜くんと、ずっと一緒にいたいだけなのに……!」

涙がぼたぼた落ちて、視界が滲む。
なんでこんなことになってるんだ。さっきまで普通にご飯を食べるつもりだったのに。

彼は黙って僕を抱きしめた。腕の力が強くて、苦しいのに離れられない。

「……悲しませて、ごめん」

耳元で低い声が囁く。

「そんなことしないよ。女と寝るなんてあり得ない。よかった……深緒が本当に俺のこと好きだって、やっと確認できた」

心臓がきゅっと掴まれる。安心させる言葉なのに、どこか歪んで聞こえた。

「……もしかして、今までの熱愛報道も……わざと?」

恐る恐る問いかける。
胸の奥にずっとあった疑念が、勝手に口からこぼれた。

「いや、それは違うよ」

即答だった。声に迷いはない。

「嫉妬するかもな~とは思ったけど、わざとじゃない」

少し間を置いて、彼は唇の端を吊り上げた。

「だってさ……」

囁くように近づいてきて、耳元で笑う。

「養殖より、天然の方が美味しいじゃん」

耳元でその言葉が落ちた瞬間、ぞくりと背筋が震えた。冗談めかしているのに、言葉の裏に隠れた本音が恐ろしいほどに生々しかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。  そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。   最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m

長年の恋に終止符を

mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。 そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。 男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。 それがあの人のモットーというやつでしょう。 どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。 これで終らせることが出来る、そう思っていました。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

【BL】無償の愛と愛を知らない僕。

ありま氷炎
BL
何かしないと、人は僕を愛してくれない。 それが嫌で、僕は家を飛び出した。 僕を拾ってくれた人は、何も言わず家に置いてくれた。 両親が迎えにきて、仕方なく家に帰った。 それから十数年後、僕は彼と再会した。

息の合うゲーム友達とリア凸した結果プロポーズされました。

ふわりんしず。
BL
“じゃあ会ってみる?今度の日曜日” ゲーム内で1番気の合う相棒に突然誘われた。リアルで会ったことはなく、 ただゲーム中にボイスを付けて遊ぶ仲だった 一瞬の葛藤とほんの少しのワクワク。 結局俺が選んだのは、 “いいね!あそぼーよ”   もし人生の分岐点があるのなら、きっとこと時だったのかもしれないと 後から思うのだった。

幼馴染は俺がくっついてるから誰とも付き合えないらしい

中屋沙鳥
BL
井之原朱鷺は幼馴染の北村航平のことを好きだという伊東汐里から「いつも井之原がくっついてたら北村だって誰とも付き合えないじゃん。親友なら考えてあげなよ」と言われて考え込んでしまう。俺は航平の邪魔をしているのか?実は片思いをしているけど航平のためを考えた方が良いのかもしれない。それをきっかけに2人の関係が変化していく…/高校生が順調(?)に愛を深めます

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

処理中です...