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「……そろそろ外してほしいな……」
腕に食い込むタオルの感触に、ようやく慣れてきてしまった。
でも、流石に解いてほしい。胸の奥に小さな恐怖がじわじわと広がっている。
「え、やだよ。俺から離れない。前みたいに自由に嫉妬する。夏樹のアドバイスは忘れる。これを守ってくれないと、拘束は解かないよ」
淡々と告げられる条件。
冗談っぽく笑わないから、本気にしか聞こえない。
ピロロロロ ピロロロロ
着信音が部屋に響く。
冬夜くんは立ち上がり、スマホを手に取る。
「……うわぁ、夏樹だ。5分経っても連絡がなかったからかな?」
わざとらしいくらい嫌そうな顔。
「深緒ー。連絡先、消してよ。夏樹の」
振り返りざまに言った。
「む、無理だよ……か、貸して……」
縋るように懇願する。
「うーん………いいよ。拘束、解いてあげる。ただし、スピーカーにすること」
思わず息を飲んだ。さっきまであれほど解かないと言ってたのに。彼の考えが読めない。怖い。
冬夜くんがスマホを渡してくる。手首のタオルは解かれた。自由になったのに、心臓は逆に締め付けられていく。
「もしもし!」
震える声で電話に出る。
『おい遅いぞ深緒!何かあったのか?』
夏樹の焦った声に、思わずホッとする。
「名前呼びかー……ちょっとねー」
『……ん?あんた誰? 聞いたことある声してんね』
「はじめまして。彼氏の神永冬夜です。いつもお世話になってます」
「ちょっと! 冬夜くん!」
『! あんたが! ……つーかどういう状況?』
「今、彼と話し合い中です。……こちらとしては、深緒の“好きだったところ”が、あなたのアドバイスで変わってしまって。そのことについて議論をしている最中です」
やけに丁寧な言葉。
逆に怖い。
『……マジ? あんた趣味悪すぎん?』
若干引いてる夏樹の声。
「可愛いなぁ、愛されてるんだなって思ってました」
楽しそうに言う冬夜くん。
この状況で楽しそうって、どういう神経?
『……ダメだ……今をときめく人気俳優、神永冬夜の裏の顔とか知りたくなかった……』
電話越しにショックを受けている夏樹。無理もない。僕だって今、信じられないんだから。
「趣味ができるのは別に構いません。友達が増えるのも……まあ嫉妬しますが、俺から絶対に離れないと誓うならいいでしょう。問題は、俺以外の手によって深緒が変化したことです」
はっきりと、堂々と宣言した。その独占欲の濃さに、思わず息を呑む。……やっぱり、僕ら実はお似合いだったのかな。
『……ええと……俺、長生きしたいので……深緒ーー!元に戻れーー!!』
夏樹が電話口で叫んでいる。
「……大丈夫です。あなたに何かあったら深緒が悲しむので」
『は、はい……』
低く囁く声に、電話の向こうの夏樹が怯える気配が伝わる。
「ちょ、ちょっと待って! 夏樹のせいじゃなくて! 僕の意思で……僕は成長したんだよ!」
拘束が解かれたから、ようやく必死に声を張れる。
「……でもさっき、“夏樹のアドバイスのおかげ”って言ってた」
疑うような視線が刺さる。
『お前……そんなこと言ってたのかよ……』
夏樹が呆れたように言う。
「だ、だから! 夏樹がアドバイスくれたけど! 実行したのは僕だから! 実質僕の意思ってことで!」
苦しい言い訳。
でも今はそれしか言えない。
「……わかった。これ以上文句言ったら、別れるって言われそうだもんね」
あっけなく、彼は引き下がった。思わず肩から力が抜ける。
『と、とりあえず解決したんだな? そろそろ切るぞ!』
夏樹が言う。
「おかげさまで。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。今後も深緒をよろしくお願いいたします」
冬夜くんが電話越しに丁寧すぎる挨拶をして、通話が切れた。
「……夏樹と縁が切れたら、冬夜くんのせいだからね」
ため息混じりに僕が言う。
まあ、夏樹のことだから明日には「ネタができた!」って面白がって連絡してくるだろうけど。
「あはは、ごめんね」
ようやく彼が笑った。
よかった……いつもの冬夜くんに戻った。
「じゃあご飯食べよう。僕、お腹空いちゃった」
立ち上がり、リビングに向かう。
――ガチャ。
……開かない。
「っえ……?」
ガチャガチャガチャ。
何度回しても、ドアノブは動かない。鍵がかかっている。
「みーお」
背後から、柔らかいけれど決して逃れられない声が落ちてきた。
「お話し、終わってないよ」
腕に食い込むタオルの感触に、ようやく慣れてきてしまった。
でも、流石に解いてほしい。胸の奥に小さな恐怖がじわじわと広がっている。
「え、やだよ。俺から離れない。前みたいに自由に嫉妬する。夏樹のアドバイスは忘れる。これを守ってくれないと、拘束は解かないよ」
淡々と告げられる条件。
冗談っぽく笑わないから、本気にしか聞こえない。
ピロロロロ ピロロロロ
着信音が部屋に響く。
冬夜くんは立ち上がり、スマホを手に取る。
「……うわぁ、夏樹だ。5分経っても連絡がなかったからかな?」
わざとらしいくらい嫌そうな顔。
「深緒ー。連絡先、消してよ。夏樹の」
振り返りざまに言った。
「む、無理だよ……か、貸して……」
縋るように懇願する。
「うーん………いいよ。拘束、解いてあげる。ただし、スピーカーにすること」
思わず息を飲んだ。さっきまであれほど解かないと言ってたのに。彼の考えが読めない。怖い。
冬夜くんがスマホを渡してくる。手首のタオルは解かれた。自由になったのに、心臓は逆に締め付けられていく。
「もしもし!」
震える声で電話に出る。
『おい遅いぞ深緒!何かあったのか?』
夏樹の焦った声に、思わずホッとする。
「名前呼びかー……ちょっとねー」
『……ん?あんた誰? 聞いたことある声してんね』
「はじめまして。彼氏の神永冬夜です。いつもお世話になってます」
「ちょっと! 冬夜くん!」
『! あんたが! ……つーかどういう状況?』
「今、彼と話し合い中です。……こちらとしては、深緒の“好きだったところ”が、あなたのアドバイスで変わってしまって。そのことについて議論をしている最中です」
やけに丁寧な言葉。
逆に怖い。
『……マジ? あんた趣味悪すぎん?』
若干引いてる夏樹の声。
「可愛いなぁ、愛されてるんだなって思ってました」
楽しそうに言う冬夜くん。
この状況で楽しそうって、どういう神経?
『……ダメだ……今をときめく人気俳優、神永冬夜の裏の顔とか知りたくなかった……』
電話越しにショックを受けている夏樹。無理もない。僕だって今、信じられないんだから。
「趣味ができるのは別に構いません。友達が増えるのも……まあ嫉妬しますが、俺から絶対に離れないと誓うならいいでしょう。問題は、俺以外の手によって深緒が変化したことです」
はっきりと、堂々と宣言した。その独占欲の濃さに、思わず息を呑む。……やっぱり、僕ら実はお似合いだったのかな。
『……ええと……俺、長生きしたいので……深緒ーー!元に戻れーー!!』
夏樹が電話口で叫んでいる。
「……大丈夫です。あなたに何かあったら深緒が悲しむので」
『は、はい……』
低く囁く声に、電話の向こうの夏樹が怯える気配が伝わる。
「ちょ、ちょっと待って! 夏樹のせいじゃなくて! 僕の意思で……僕は成長したんだよ!」
拘束が解かれたから、ようやく必死に声を張れる。
「……でもさっき、“夏樹のアドバイスのおかげ”って言ってた」
疑うような視線が刺さる。
『お前……そんなこと言ってたのかよ……』
夏樹が呆れたように言う。
「だ、だから! 夏樹がアドバイスくれたけど! 実行したのは僕だから! 実質僕の意思ってことで!」
苦しい言い訳。
でも今はそれしか言えない。
「……わかった。これ以上文句言ったら、別れるって言われそうだもんね」
あっけなく、彼は引き下がった。思わず肩から力が抜ける。
『と、とりあえず解決したんだな? そろそろ切るぞ!』
夏樹が言う。
「おかげさまで。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。今後も深緒をよろしくお願いいたします」
冬夜くんが電話越しに丁寧すぎる挨拶をして、通話が切れた。
「……夏樹と縁が切れたら、冬夜くんのせいだからね」
ため息混じりに僕が言う。
まあ、夏樹のことだから明日には「ネタができた!」って面白がって連絡してくるだろうけど。
「あはは、ごめんね」
ようやく彼が笑った。
よかった……いつもの冬夜くんに戻った。
「じゃあご飯食べよう。僕、お腹空いちゃった」
立ち上がり、リビングに向かう。
――ガチャ。
……開かない。
「っえ……?」
ガチャガチャガチャ。
何度回しても、ドアノブは動かない。鍵がかかっている。
「みーお」
背後から、柔らかいけれど決して逃れられない声が落ちてきた。
「お話し、終わってないよ」
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