5 / 8
5
しおりを挟む
「俺のこと、好き?」
僕の髪を、ゆっくり撫でながら霧矢くんが尋ねてきた。
「え、えっと……」
頭の中が真っ白になる。
どう答えたら正解なんだろう?
“好き!”って即答したい。けど、都合のいい男って、こういうとき即答するのは違う気がする。
たぶん、軽率に「だいすき♡」とか言ったらとか言っちゃダメじゃないかな?
「…………即答してくれないんだね」
霧矢くんの手が止まり、すっと離れた。
上から見下ろすその顔が、まるで別人みたいで。
5年も一緒にいたのに、こんな空気は初めてだ。
霧矢くんのベッドに寝かされたことは何度もあるのに——
今日だけは、何かが決定的に違う。
ふと、霧矢くんの手が伸びてくる。肩のあたりをなぞるように――優しいのに、怖い。その指先が、まるで自分でも制御できていないみたいだった。
「た、助けて……チャッキー……」
あ。やばい。
「………………………は?」
霧矢くんの目が見開かれ、時間が止まる。
永遠にも感じる沈黙。
——そして。
バンッ!
ベッドが揺れた。霧矢くんの手が、強くシーツを叩いた音。
僕の心臓が一瞬で縮こまる。
「……あは、はははははははは。」
突然、笑い出した。まるで壊れたオルゴールみたいに。
「あー……おかしい。人って、こんな簡単に奪われるんだ……」
目の焦点が合っていない。
そのまま立ち上がって、部屋の中をゆっくり見渡した。
「今日からこの部屋から出るの、禁止。」
……え?ええ???今、さらっととんでもないこと言ったよね???
「いや……違う。違う違う違う違う!!」
霧矢くんが両手で頭を抱える。
まるで自分の中の何かを押し戻すように。
「……俺、何考えてんだ。こんなの……最低だよな。」
苦しそうに笑う。
けど、瞳は笑っていない。
頭を抱え、何かと葛藤している。…大丈夫かな?
「でも……ああもう!!頭の中、めちゃくちゃだ……!」
一歩、二歩、後ずさる。
まるで“自分から僕を守る”みたいに。
「…とりあえず、チャッキーには会わせない。絶対に。」
低い声で、断言。
「じゃあ、俺は違う部屋で寝るから。おやすみ。」
背中越しにそう言って、部屋を出て行こうとする。
「ちょっ……い、一緒に寝ないの?」
言った瞬間、後悔した。
違う。都合のいい男は、そんなこと言わない。
でも、口が勝手に動いた。
「……今、隣にいたら、自分が何するかわかんないから。……頭、冷やしたい。」
霧矢くんは振り向かない。
その声は無表情で、静かだった。
「おやすみ。」
……ダメだ。このままじゃ、なにか壊れる。
「霧矢くん……!」
思わず腕を掴んだ。
すると、次の瞬間――すごい力で抱きしめられた。
「……あのさ、」
温度のない声が、首元に落ちる。
「俺、完璧だったよね?」
「……え?」
突然どうした?完璧?なんの話?
「嫉妬も束縛も我慢して、穏やかで優しくて。そういう“理想の恋人”でいようとしてた。それなのに……」
顔を上げた霧矢くんの瞳は、涙で濡れていた。
「チャッキーにも、その顔、声、仕草、体、全部見せたの?」
…………いや、無理。アプリです。物理的に無理です。
「……最初に付き合ったとき約束したこと、覚えてる?」
……何だっけ?
「…浮気したら、許さないって。」
……………???????
「ねぇ、答えてよ。俺と別れたい?」
「えっ、あ、いや、その……」
「奏に捨てられたら、俺、自分でも何するかわからない。ほんとは、部屋に閉じ込めて誰にも見せたくない。俺が養うから、奏は俺の帰りだけ待ってて欲しい。」
そう言いながら、僕を抱きしめる力を強めた。
「でも、奏、嫌だろう?違法だし。自由をなくしたいわけじゃない。でも、でも、でも、」
彼の声が震え、涙が頬を伝う。泣いた姿、初めて見たかも。
理性と衝動の境目で、霧矢くんは壊れそうだった。
「お願いだから一生そばにいて……」
縋りつく声。震える体。
僕の胸の奥で、何かが痛くなった。
「あ、あの……」
「嫌だ、聞きたくない。」
「う、浮気してません。」
「………………は?????」
霧矢くんの声が、部屋いっぱいに響き渡った。
僕の髪を、ゆっくり撫でながら霧矢くんが尋ねてきた。
「え、えっと……」
頭の中が真っ白になる。
どう答えたら正解なんだろう?
“好き!”って即答したい。けど、都合のいい男って、こういうとき即答するのは違う気がする。
たぶん、軽率に「だいすき♡」とか言ったらとか言っちゃダメじゃないかな?
「…………即答してくれないんだね」
霧矢くんの手が止まり、すっと離れた。
上から見下ろすその顔が、まるで別人みたいで。
5年も一緒にいたのに、こんな空気は初めてだ。
霧矢くんのベッドに寝かされたことは何度もあるのに——
今日だけは、何かが決定的に違う。
ふと、霧矢くんの手が伸びてくる。肩のあたりをなぞるように――優しいのに、怖い。その指先が、まるで自分でも制御できていないみたいだった。
「た、助けて……チャッキー……」
あ。やばい。
「………………………は?」
霧矢くんの目が見開かれ、時間が止まる。
永遠にも感じる沈黙。
——そして。
バンッ!
ベッドが揺れた。霧矢くんの手が、強くシーツを叩いた音。
僕の心臓が一瞬で縮こまる。
「……あは、はははははははは。」
突然、笑い出した。まるで壊れたオルゴールみたいに。
「あー……おかしい。人って、こんな簡単に奪われるんだ……」
目の焦点が合っていない。
そのまま立ち上がって、部屋の中をゆっくり見渡した。
「今日からこの部屋から出るの、禁止。」
……え?ええ???今、さらっととんでもないこと言ったよね???
「いや……違う。違う違う違う違う!!」
霧矢くんが両手で頭を抱える。
まるで自分の中の何かを押し戻すように。
「……俺、何考えてんだ。こんなの……最低だよな。」
苦しそうに笑う。
けど、瞳は笑っていない。
頭を抱え、何かと葛藤している。…大丈夫かな?
「でも……ああもう!!頭の中、めちゃくちゃだ……!」
一歩、二歩、後ずさる。
まるで“自分から僕を守る”みたいに。
「…とりあえず、チャッキーには会わせない。絶対に。」
低い声で、断言。
「じゃあ、俺は違う部屋で寝るから。おやすみ。」
背中越しにそう言って、部屋を出て行こうとする。
「ちょっ……い、一緒に寝ないの?」
言った瞬間、後悔した。
違う。都合のいい男は、そんなこと言わない。
でも、口が勝手に動いた。
「……今、隣にいたら、自分が何するかわかんないから。……頭、冷やしたい。」
霧矢くんは振り向かない。
その声は無表情で、静かだった。
「おやすみ。」
……ダメだ。このままじゃ、なにか壊れる。
「霧矢くん……!」
思わず腕を掴んだ。
すると、次の瞬間――すごい力で抱きしめられた。
「……あのさ、」
温度のない声が、首元に落ちる。
「俺、完璧だったよね?」
「……え?」
突然どうした?完璧?なんの話?
「嫉妬も束縛も我慢して、穏やかで優しくて。そういう“理想の恋人”でいようとしてた。それなのに……」
顔を上げた霧矢くんの瞳は、涙で濡れていた。
「チャッキーにも、その顔、声、仕草、体、全部見せたの?」
…………いや、無理。アプリです。物理的に無理です。
「……最初に付き合ったとき約束したこと、覚えてる?」
……何だっけ?
「…浮気したら、許さないって。」
……………???????
「ねぇ、答えてよ。俺と別れたい?」
「えっ、あ、いや、その……」
「奏に捨てられたら、俺、自分でも何するかわからない。ほんとは、部屋に閉じ込めて誰にも見せたくない。俺が養うから、奏は俺の帰りだけ待ってて欲しい。」
そう言いながら、僕を抱きしめる力を強めた。
「でも、奏、嫌だろう?違法だし。自由をなくしたいわけじゃない。でも、でも、でも、」
彼の声が震え、涙が頬を伝う。泣いた姿、初めて見たかも。
理性と衝動の境目で、霧矢くんは壊れそうだった。
「お願いだから一生そばにいて……」
縋りつく声。震える体。
僕の胸の奥で、何かが痛くなった。
「あ、あの……」
「嫌だ、聞きたくない。」
「う、浮気してません。」
「………………は?????」
霧矢くんの声が、部屋いっぱいに響き渡った。
670
あなたにおすすめの小説
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。
勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。
アプリで元カノを気にしなくなるくらい魅力的になろうとした結果、彼氏がフリーズしました
あと
BL
「目指せ!!魅力的な彼氏!!」
誰にでも優しいように見えて重い…?攻め×天然な受け
⚠️攻めの元カノが出て来ます。
⚠️強い執着・ストーカー的表現があります。
⚠️細かいことが気になる人には向いてません。
合わないと感じた方は自衛をお願いします。
受けは、恋人が元カノと同級生と過去の付き合いについて話している場面に出くわしてしまう。失意の中、人生相談アプリの存在を知る。実は、なぜか苗字呼び、家に入れてもらえない、手を出さないといった不思議がある。こうして、元カノなんか気にしなくなるほど魅力的になろうとするための受けの戦いが始まった…。
攻め:進藤郁也
受け:天野翔
※誤字脱字・表現の修正はサイレントで行う場合があります。
※タグは定期的に整理します。
※批判・中傷コメントはご遠慮ください。
俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した
あと
BL
「また物が置かれてる!」
最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…?
⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。
攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。
ちょっと怖い場面が含まれています。
ミステリー要素があります。
一応ハピエンです。
主人公:七瀬明
幼馴染:月城颯
ストーカー:不明
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【8話完結】いじめられっ子だった僕が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる