夢で彼氏寝取られた俺、まさかの正夢になりそうな件

あと

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3.過去

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「昼間はすみませんでした」

友樹が口を開く。現在、俺たちは夜ご飯を食べているところだ。料理上手な友樹は、簡単そうに手際よく料理を作り、食卓に並べていく。見ているだけで安心感がある。……本当にハイスペックだな。

「いやいや!結局どうなった?」

俺は平静を装いながら質問した。とりあえず、夢の通りにはさせられない。今は、夢に抗うための会話をすることが最優先だ。脳内作戦会議を後回しにして、とにかく別の話題を作ろうとする。

「ああ、あの後LINEが来て日取りが決まりました。マネージャーたちも了承してくれてます。……ただ、」

一拍置いて、少し言いにくそうに言う友樹。顔に微妙な影が差す。

「イベントのある1ヶ月後までは、打ち合わせなどで忙しくなりますので……二人の時間を取るのは難しくなります」

……ああ、やはり夢通りだ。このままだと、元カノと親密になる時間が増え、俺とは自然と疎遠になる。そして、最後には……。

「……いいぞ。その代わり、しっかりやり遂げろよ、イベント。生半可な仕事したら、承知しねーからな」

応援する気持ちは本当にある。友樹にとっても、これがステップアップになるのは間違いない。しかし、胸の奥にぽっかり穴が開くような寂しさもある。だが、そんな気持ちは口に出せない。カッコつけて応援するしかないのだ。

「……あれ?今、寂しいって思ってません?かーわーいーいー笑」

友樹がにやりと笑う。軽口を叩きつつも、目は楽しそうに輝いている。

「お、思ってねーよ!」

慌てて否定する。顔が熱くなるのを感じる。

「大丈夫ですよ。イベント終わったらいっぱいイチャイチャしましょうね。」

そう言ってくれる友樹は、少し生意気なところもあるけれど、優しい。言葉の一つ一つに思いやりがあるのがわかる。少しだけ胸の重みが軽くなった気がした。……夢と一緒だけど。

「……あ、あとさ……」

その瞬間、俺はふと気を引き締めた。このまま夢通りに事が進むことだけは避けたい。だから、ここからは夢とは違う方向に話を持っていく。少しでも現実を、俺の手で変えなければならない。

「あ、あの女の人のどこが好きだったの……?」

……な、何を聞いてるんだ俺は!!自分で言っておいて頭を抱えたくなる。普通こんな話、恋人同士でするか!?
案の定、友樹は少し訝しげな目を向けてくる。

「……は? もしかして、ありさのこと? そんなこと聞いて何になるんですか?」

ちょっと怒ってる。そりゃそうだ。現彼氏が元カノの好きだったところを聞くなんて、どう考えても地雷だ。

「ご、ごめん……気になって……」

口ごもりながら言い訳する。
というか、ありささんっていうのか。あの人。——夢と同じ名前じゃねぇか。

「……まず、顔が可愛い。あと、わがままで気が強いところも、当時は可愛い気がしてました。大学の同期だったんですけど、当時は駆け出しのモデルで、ミスコングランプリも取ってて……。そんな人に告白されるとか、“俺すげぇ”って思ってたんですよね。バカですね」

淡々と話す友樹の声が、どこか遠い。懐かしさと同時に、少し苦笑を含んでいる。

「……元カノの悪口言うのは良くないってわかってますけど、言わせてもらいます。あいつ、本当にわがままでした。パンケーキ食べたいって言うから探して予約したのに、当日になって“やっぱり和スイーツがいい”って言い出すし。アクセサリーをねだるから買ってやったら、“やっぱりいらない”って。……悪いやつじゃないけど、疲れました」

そう言って、友樹は額を押さえた。相当きつい恋愛だったのだろう。
……でも、そんな風に聞かされている自分の心が冷たくなるのを感じた。

「……そっか」

たったそれだけしか言えなかった。
友樹はイケメンだ。それこそモデル顔負けの容姿。性格は優しくて、面倒見がよく、料理も上手い。モテないはずがない。
でも、元カノとの思い出を聞くと胸がざわつく。俺以外の誰かが、同じ時間を共有して、笑って、隣で眠って、……もしかしたら、触れ合っていたのかもしれない。
そんなことを想像して、無性に苦しくなった。

年上なのに、嫉妬なんてしてる場合じゃないのに。……こんなダサいところ、見せたくない。

「……なに、妬いた?」

小首を傾げながら、わざとらしく笑う。

「妬いてねーよ! バーカ!」

また強がってしまう。可愛くない俺。ほんとに。

「……俺は……お前が全部初めてなのに……悔しい……」

隠してた本音が、遂に外に出てしまった,

「……はぁ、もう」

友樹が立ち上がり、俺の前に来て言った。

「ちょっと立ってください」

促されるままに立ち上がると、いきなり抱きしめられた。

「やきもち焼きの響さんには、ぎゅーってしてあげます」

柔らかく、けれどしっかりとした腕の力が背中を包む。
胸の奥に残っていた黒いもやが、少しずつ溶けていく。

「……やきもちなんか、焼いてねぇし……」

それでも、まだ意地を張る俺。一応年上のプライドがある。

「安心してください。もう昔の話です。今、俺が好きなのは——響さんだけです」

低く落ち着いた声で、まっすぐ言われる。
……ずるい。本気の目でそんなこと言われたら、反論なんかできるわけない。

「……ノンケが、すぐにゲイになるかよ」

不貞腐れたように呟く俺に、友樹は少し笑った。

「うーん、ゲイとかバイとかノンケとか、そういうのじゃなくて。俺は“響さんが好き”なんですよ」

そう言って、顔を俺の首筋に埋める。髪が頬をかすめてくすぐったい。

「……わ、わかったから……離れろよ……」

恥ずかしすぎて、顔が熱い。
なのに友樹は、離れるどころか頭を撫でながら笑って言った。

「はいはい。どうせ今夜も、響さんが俺にひっついて寝るんですもんね」

「……言うな、バカ!」

真っ赤になった俺の声が、部屋の中に響いた。
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