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5.俺を救うんだよ
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でも。
「……っ、だっ…ダメだよ」
必死に声を絞り出す。喉が乾いて言葉が掠れる。
「あっ!最近熱愛報道あったじゃん……。彼女さん悲しむよ」
「熱愛報道?あんなガセ信じてるの?」
「ガ、ガセだったの?」
「当たり前じゃん。」
驚いた。お似合いだって思ったから。
……何でだろう。
安堵の気持ちがドッと湧いてきた。
僕なんかがそんなことを気にする資格、ないのに。
「さあ、どうなの?」
どんどん逃げ道がなくなっていく。
「そ、それに、ぼ、僕なんかじゃ……お兄ちゃんの足を引っ張るだけだから……」
あの人は、ゆっくりと歩み寄る。
そして、片手で僕の顎を掴んだ。
「足を引っ張る?違う。君は俺を救うんだよ」
「……っ」
目が合う。吸い込まれる。
強くて、でもどこか壊れそうな光を宿した瞳。
テレビの中で誰もが憧れる完璧な笑顔を浮かべている時のあの人とは違う。
今目の前にいるのは、たった一人の“僕の兄だった人”だった。
「……俺はね、嘘ばっかりの言葉で、嘘ばっかりの愛想を振りまいてばかり……。本当に笑えたのは、君と一緒にいる時だけだった」
吐息が近い。
心臓が早鐘のように鳴る。
ダメだ、抗えない。
「……だからさ、彼方。俺をまた笑わせてよ。君は俺を救うんだよ、いい子でしょ?」
彼の手が僕の頬を撫でる。
優しく、でも逃がさない力で。
「……俺以外の人のところに行ったら、どうなると思う?」
「えっ……?」
「考えたくもないけど……俺、耐えられないよ」
笑いながら、指先で僕の首筋をなぞる。
震えが止まらない。
「君が誰かに触れられたら……俺はそいつを壊すかもしれない」
ぞっとした。
でも同時に、心の奥で熱くなった。
……嬉しいと思ってしまった。
ああ、やっぱり僕は救いようがない。こんな言葉に喜んでしまうなんて。
「……俺から逃げるの、もうやめて」
――その瞬間。
スマホがけたたましく震えた。
僕は飛び上がるように距離を取る。
「っ……!」
画面には「笠寺圭太」の文字。
助け舟のように見えて、同時に罪悪感が押し寄せる。
この電話に出れば、まだ“ダメダメの僕”でいられるかもしれない。
でも、出た瞬間に——僕はもう二度と、この人の隣には立てないかもしれない。
震える指が、受話器のマークに伸びていく。
あの人は、静かに微笑んでいた。
それはまるで「どっちを選んでも逃がさない」と言わんばかりの、余裕の笑みだった。
やがて電話は切れた。
僕は選べなかった。
そしたらあの人はバツが悪そうに笑った。
「……なんてね」
「えっ」
「怖がらせてごめんね。電話かけ直していいよ」
あまりにもあっさりした声に、逆に戸惑う。
僕を縛ろうとした手を、すぐにほどいてくれるなんて。
「…いいの?」
「うん。その代わりの条件として、連絡先交換して」
「……は?」
思わず声が上ずった。逃げ場を塞がれた気がした。
「……俺はね、彼方が心配なんだよ…お父さんが亡くなって、1人になってしまって…。せめて連絡先は交換させてよ。11年間家族だったじゃん」
その声音があまりに優しくて。
僕の心の弱いところを、正確に突いてきて。
逃げ道なんて、最初からなかった。
「……うんわかったよ…」
連絡先を交換する指が震えた。
罠みたいだ。逃げられなくなる。
でも、嬉しいと思ってしまった。最低だ。
別れ際、囁かれた。
「……彼方。もう二度と、俺から逃げないで」
そう囁いた笑顔は、完璧な俳優のものじゃなくて。
ただ僕の“兄だった人”のものだった。
胸がまた痛む。
嬉しくて、苦しくて、逃げたいのに、縛られていた。
――僕はやっぱり、どうしようもなく卑怯で、どうしようもなく彼が好きなんだ。
「……っ、だっ…ダメだよ」
必死に声を絞り出す。喉が乾いて言葉が掠れる。
「あっ!最近熱愛報道あったじゃん……。彼女さん悲しむよ」
「熱愛報道?あんなガセ信じてるの?」
「ガ、ガセだったの?」
「当たり前じゃん。」
驚いた。お似合いだって思ったから。
……何でだろう。
安堵の気持ちがドッと湧いてきた。
僕なんかがそんなことを気にする資格、ないのに。
「さあ、どうなの?」
どんどん逃げ道がなくなっていく。
「そ、それに、ぼ、僕なんかじゃ……お兄ちゃんの足を引っ張るだけだから……」
あの人は、ゆっくりと歩み寄る。
そして、片手で僕の顎を掴んだ。
「足を引っ張る?違う。君は俺を救うんだよ」
「……っ」
目が合う。吸い込まれる。
強くて、でもどこか壊れそうな光を宿した瞳。
テレビの中で誰もが憧れる完璧な笑顔を浮かべている時のあの人とは違う。
今目の前にいるのは、たった一人の“僕の兄だった人”だった。
「……俺はね、嘘ばっかりの言葉で、嘘ばっかりの愛想を振りまいてばかり……。本当に笑えたのは、君と一緒にいる時だけだった」
吐息が近い。
心臓が早鐘のように鳴る。
ダメだ、抗えない。
「……だからさ、彼方。俺をまた笑わせてよ。君は俺を救うんだよ、いい子でしょ?」
彼の手が僕の頬を撫でる。
優しく、でも逃がさない力で。
「……俺以外の人のところに行ったら、どうなると思う?」
「えっ……?」
「考えたくもないけど……俺、耐えられないよ」
笑いながら、指先で僕の首筋をなぞる。
震えが止まらない。
「君が誰かに触れられたら……俺はそいつを壊すかもしれない」
ぞっとした。
でも同時に、心の奥で熱くなった。
……嬉しいと思ってしまった。
ああ、やっぱり僕は救いようがない。こんな言葉に喜んでしまうなんて。
「……俺から逃げるの、もうやめて」
――その瞬間。
スマホがけたたましく震えた。
僕は飛び上がるように距離を取る。
「っ……!」
画面には「笠寺圭太」の文字。
助け舟のように見えて、同時に罪悪感が押し寄せる。
この電話に出れば、まだ“ダメダメの僕”でいられるかもしれない。
でも、出た瞬間に——僕はもう二度と、この人の隣には立てないかもしれない。
震える指が、受話器のマークに伸びていく。
あの人は、静かに微笑んでいた。
それはまるで「どっちを選んでも逃がさない」と言わんばかりの、余裕の笑みだった。
やがて電話は切れた。
僕は選べなかった。
そしたらあの人はバツが悪そうに笑った。
「……なんてね」
「えっ」
「怖がらせてごめんね。電話かけ直していいよ」
あまりにもあっさりした声に、逆に戸惑う。
僕を縛ろうとした手を、すぐにほどいてくれるなんて。
「…いいの?」
「うん。その代わりの条件として、連絡先交換して」
「……は?」
思わず声が上ずった。逃げ場を塞がれた気がした。
「……俺はね、彼方が心配なんだよ…お父さんが亡くなって、1人になってしまって…。せめて連絡先は交換させてよ。11年間家族だったじゃん」
その声音があまりに優しくて。
僕の心の弱いところを、正確に突いてきて。
逃げ道なんて、最初からなかった。
「……うんわかったよ…」
連絡先を交換する指が震えた。
罠みたいだ。逃げられなくなる。
でも、嬉しいと思ってしまった。最低だ。
別れ際、囁かれた。
「……彼方。もう二度と、俺から逃げないで」
そう囁いた笑顔は、完璧な俳優のものじゃなくて。
ただ僕の“兄だった人”のものだった。
胸がまた痛む。
嬉しくて、苦しくて、逃げたいのに、縛られていた。
――僕はやっぱり、どうしようもなく卑怯で、どうしようもなく彼が好きなんだ。
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