訳アリ勇者

ナナシ

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失われし記憶探しの旅

Episode2

Episode2

アイテル『ベリル…さん?』

ベリル『すまない、今は…教える事は出来ないんだ。だからお前自身で真実を見つけ出すしかない。お前の最終地点は記憶を取り戻すこと。分かったな?』

アイテルの最終地点、それは記憶を取り戻す事。
しかし取り戻す事は簡単には行かないし、力をつけなければ記憶は手に入らないと言う事は、アイテルも理解していた。

アイテル『…僕が…力を…?…ど、どうやったらいいんですか?』

不安だった、これから何をすれば良いのか、記憶を取り戻すヒントも無しに、どうやって記憶を探し出すのか。
全てが1ピースも埋まってすらいないパズルのような感覚だ

ベリル『いいか、よく聞くんだ。この世界では西…そしてここからも西方向にある国。
【インサニア】
に存在する
【インテリトゥス】
と言う名前の街に、君を連れて行く、インテリトゥスに滞在している一人の剣士、
【クレド・タリオニス】
と言う男を探すんだ…街は大きいし、探すのは大変だろうけど、人々に聞いていけばいずれ辿り着く事が出来る。
その男は…お前のこれからの旅に大きく役立つ存在だ』

この世界の…北の方向にある国【インサニア】…その国の中に存在する街の【インテリトゥス】
そこに居る【クレド】と言う男が、私を助けてくれるらしい。
…いきなり言われてもそんな男の事を信用出来るのだろうか…
いや、信用出来ないとかではない。今はもう【する】しかない。

ベリル『ここには定期的に魔物がこの澄森を襲ってくるから、君の身が危険なんだ、私も君を守りながら戦う事は出来ない
…だから君は今安全な場所に避難しなければいけないんだ』

アイテル『…本当…なんですか?』

彼女は何故か『何かの』嘘をついているような感じがした。
澄森に魔物…?とても綺麗な空気でそんな感じはしないけど…

しかし、彼女がアイテル自身を助けようとする心は本物だった

アイテル『…分かりました…そうとなれば…今すぐにでも向かいます…』

アイテルは北の方向にふらふらとした足つきで、歩いていった
それを見たベリルは慌ててアイテルを引き戻した

ベリル『ちょっと待て、ここから遠すぎる上に、ただでさえ魔物が少ないこの森も危険だと言うのに、外に出ればもっと多くの魔物がうじゃうじゃ出てくる…本当に危険だぞ』

この発言は嘘ではなかった。直感だけど、そんな気がした。

アイテル『そ、そうなんですか!?じゃあ…どうすれば…』

ベリル『少しだけ…時間をくれ』

彼女は少し、何かの呪文を口の中で唱えていた。それはアイテルにも聞き取れない、空気に交じるような声だった。

アイテル『……えぇっ!?』

アイテルの足元からほわっとした光が地面を囲んだ、その光はたちまち、眩い光へと変化し、アイテルの体を包み込んだ。

アイテル『まぶしっ……光……なに!?』

アイテルは彼女に呼びかけるように顔を向けると、彼女は迷い子を心配するかのような顔を一瞬見せると、直ぐに安心させるような笑顔をした。

ーインテリトゥスー

アイテル「ん……んぅう……」

アイテルはあまりの眩い光に目を閉じてしまっていた。もう一度目を開けると、そこは知らない街、いや、「インテリトゥス」だった。
目の前は知らない建物と人だかり、アイテルの見たことの無い世界が、そこには広がっていた。
新鮮な空気に匂いを嗅いでいると、目の前のベンチに眠っていたおじさんが目を覚まして、驚きながらアイテルの方へあるき始めた。

おじいさん『君…見ない顔だね?何処から来たのかな?』

知らない人に話しかけられ、多少焦るが、深く深呼吸をし、多少緊張しつつ、若干震えた口で冷静に答えた

アイテル『えっと…遠い森に住んでいる女性の方から……訪ねてきました』

それを聞いたおじいさんは少し驚きつつも、子供に話しかけるような口調で分かりやすく答えた

おじいさん『そうか、この街の近くに森は多くは無いんだが…結構遠い所から来たんだな、大変だっただろう?魔物に襲われたりしなかったかい?』

アイテル『いえ…さっきまで森に居たんですけど…その…ベリルさんって言う女性が…森から…ここへ…ごめんなさい、説明下手…ですよね』

それを聞いたおじいさんは信じられないような顔で少し慌てた口調でアイテルに問いかけた

おじいさん『さっきまで森に…?そのベリルって女の人がここまで?
君とは初めて出会うし、到底信じられないが…君みたいな真っ直ぐに澄んだ目をした少年が嘘をつくとも思えない…本当なんだな』

おじいさんは信じられない光景を見るような表情だが、自己納得したのか、再び子供に話しかけるような口調で問いかけた

おじいさん『じゃあこの街で分からない事があったら遠慮なく人々に聞くといい…因みに私に聞きたいことはあるかね?』

聞きたい事、アイテルはチャンスだと思い、おじいさんに聞いた

アイテル『じ、自分!クレド・タリオニスと言う人物を探しておりまして…その人物は何処にいるかご存知でしょうか?』

おじいさんは【あぁ、あの人ね!】という表情でアイテルを手招きしながら

おじいさん『案内するよ、あっちの方角に彼の家が…』

その瞬間、痛々しく身体を鈍く殴るような音が響いた。
アイテルは驚きのあまり音の方を注意深く目を向けた

アイテル『何…?」』

目の前の光景は非常に痛々しい物だった。【一人の男が】二人の男に何度も腹や顔をなんども殴りつけている。殴られている吐血をしている

住民『お前の…一家の一人が…お嬢様を…』

住民『詫びろ…詫びて死ね」』

とてつもない怒りを殴られている男の方へ向けている、思わずアイテルが止めにかかろうとすると、おじさんが代わりに争いを制止した

おじいさん『やめろ…!二人の気持ちは分かるが、この男が何をした!?
この男本人がお嬢様を殺した訳じゃないだろ!』

暴力を振るっていた二人は舌打ちをしながら立ち去っていった、憎悪、怒りを込めているような表情をしており、その表情が、アイテルの心を深くえぐった

???『こんなこと初めてだぜ…すまねぇな。じいさん』

男は半殺し状態にされており、かろうじて頭を上げて、おじさんに感謝の言葉を述べた

アイテル『あの…大丈夫…ですか?血が…』

???『んー…多分大丈夫!』

半殺しにされている男の肩を触れようとするが、途端に止まってしまった…アイテルは初めてのショッキングな光景に思わず言葉を失っている。声が震えており、身体が小さく震えていた

???『ん?待てよ?…このちんちくりんは?』

アイテルの姿を見て、少しの警戒心
が交じる

おじいさん『この少年は…おっと、名前を聞いておらんかったな、名前は何て言うんだ?』

アイテルは震えた声で名前をゆっくりと言った、恐怖で震えているようだ。

アイテル『アイ…テル…です…』

初めて見る人間から出てくる生臭い体液と暴力が、アイテルの脳を刺激する。
恐怖と悲しみを混ぜ合わさった負の感情が感情が心の中に芽生え始めていた。

アイテル『すみません…ちょっと吐き気が…』

それを見かねた謎の男はアイテルの手を勢いよく

パンッ!!!

両手で挟むように叩く

???「落ち着けよちんちくりん。俺を見ろ」

っ!?と驚いたような声を出してしまう。しかし、そのおかげで先程の震えは止まったようだ

アイテル「は、はい!!」

謎の男は怪我した身体でゆっくりと立ち上がり、アイテルに名前を告げた。

クレド「俺の名前はクレド。
…クレド・タリオニス…ただのクレドだ、中々ショッキングなシーンを見しちまったな。
こんな俺は滅多に見られないからアンタはラッキーだぜ?」

クレドはニヤニヤしながら手を伸ばす。
殴られているはずなのに身体は震えていない…まるで慣れているかのようだった

クレド「おいおい…そんな目で俺を見るな!
本当に気にしてないっての!」

アイテルはゆっくりと手を伸ばし、握手をする。本当にクレドの手から震えは感じられず、本当にやられ慣れているかのようだった。
アイテルの心は安堵と同時に悲しみの心もあった。
こんなに明るくて優しそうな人が、酷い仕打ちを受けていたと言う事実に。

アイテル「滅多にってことは…たまにこんな…事されてるんですか…?」

クレドは沈黙したまま感情が読み取れない顔でアイテルの方を見つめた。

クレド(ミスったな、今日が初めてって言った方が良かったか…!
訂正したいとこだが…もう嘘はつけないな)

クレド『まぁ、そういう事だ。
だがそんなにガチ喧嘩ってわけじゃない、戯れてるだけと思えばいい』

…戯れてる…?どう考えても一方的に…

アイテルの頭を撫でながらおじさんの方へ向けて軽々しい口調で問いかけた。
そのアイテルへの撫で方はまるで壊れ物をやさしく撫でるような手付きだった

クレド『なぁじいさん、少しばかり、このちんちくりんを連れて行く』

アイテル『……え!?!?』

初めて撫でられる感触にアイテルは肩をびくっと震わせ、息を呑んだ。

これから始まる旅に、アイテルの純粋さは少し仇になるかもしれない


訳あり勇者
Episode2 完
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