異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー

文字の大きさ
52 / 118
異世界生活:グリーデン編

決着

しおりを挟む
ゴブリンロードの死をもって、冒険者ギルドから出ていたクエストは完了。
不屈の剣のブレイドを助けることはできなかったが、残りの3名とグラン達は生き残った。
さらにイースト村やグリーデンにゴブリンが流れ込むことを防いだ。
成果としては大金星といえるだろう。

「ユグドラシルさん。これ何とかできますか?」

そう言う蓮の視線の先にはリルが雷魔法で生み出した巨大な穴がある。

「仕方ありませんね」

そう言うと、ユグドラシルは地魔法と水魔法と植物魔法を駆使して、大地の穴を埋め、植物を生やした。
元の地形はわからないが、特に違和感のない状態にはなっているため、良しとさせてもらおう。

その光景に、周囲のものは驚愕し言葉を失った。
その中で最も強い異界の血を引くグランですら開いた口が塞がっていない。

魔法の規模が、人間の常識を遥かに超えているからだ。

大破壊をしたリルも凄いが、それをすぐに修復できるユグドラシルもまた蓮の遥か格上なのだと感じた。

「さぁ。帰りましょうか」

倫理的にブレイドの死体をアイテムボックスに入れる気にはなれないため、ユグドラシルに棺を用意してもらった。

ユグドラシルの結界魔法の上に乗ったままグリーデンへと凱旋。
グリーデンの北側の門前に降り立った。

「ギルマス!よかった!!!」

「おう!ビル!」

北の門番にして、斧を持つ筋肉隆々の金剛力士像のような男はビルという名前らしい。
地響きや爆風はこちらまで届いていたらしく、何かの大災害が発生して巻き込まれているのではないかと心配をしていたそうだ。

「そうか。ブレイドはダメだったか」

生き残った者たちと棺を見て、ビルはすぐに気がついた。

「ああ。でも、こいつは運が良いよ」

そう言葉にするのは不屈の剣のレベッカ。
冒険者は死と隣り合わせ。
ほとんど場合、死体は魔物に食われる。
それに引き換え、ブレイドは仲間の元に戻り、精霊の用意した棺に入れられているのだ。

「ブレイドは良いリーダーだった。早く弔ってやりたい」

この世界に来てから人族の良い話しは聞いていなかったが、死者に対する礼節や仲間に対する思いやりはあるようだ。

街のハズレに墓場があるらしく、不屈の剣の者たちは先にブレイドの埋葬へ。

蓮たちは冒険者ギルドへと向かった。

「マスター!レン様!」

中に入るとすぐにミミィが声を発し、周囲の者も驚き振り返った。

殺奪のゴブリンキングが出現したという情報は広がり、もし蓮やグランが戻らなければ、総動員で助けに行かなければならないのではないかという噂が流れていたのだ。

「帰って来たってことは倒したってことか?」

「や、やっぱり精霊様がやったのかな?」

「いや、あの男も凄腕らしいぞ」

色々なところから聞こえる話し声。
注目を浴びるのが苦手な蓮は、どう振る舞えば良いのか迷っていた。

「心配をかけて済まない!殺奪はここにいるレンが倒した!もう大丈夫だ!」

状況を治めるために、グランがが高らか宣言。
ギルド内は歓声に包まれた。

「レン様。ありがとうございます。本当に……」

受付をしていたミミィとソフィは、感謝を伝え、深く頭を下げた。

蓮は頭を上げるように伝え、桜と向日葵の所在を確認。
奥の部屋へと移動した。

「何者か居ますね」

奥に進む通路でユグドラシルが言葉にした。
蓮も気配探知で気がついていたため、頷き答えた。
奥の部屋で誰かが倒れている。
大きさで桜や向日葵では無い。
側にドラコやメイの気配はある。
一体誰だ。

「失礼します!レン様たちが戻られました!」

ミミィがドアを開け、中に入ると、桜と向日葵が駆け寄り蓮に抱きつく。
相当心配したのだろう。
泣く2人を宥める。
2人の気を紛らわせるのが大変だっただろうとドラコに感謝を伝えると、ドラコは優しい表情で『何もしてないわよ』と答えた。

蓮たちと同様に、メイはフェンとローとの再会を喜ぶ。
その光景を見て、本当に助けることができてよかったと蓮は思った。

「よくぞご無事で」

「ああ。心配をかけたな……。それで、そこに倒れているのはシュバルツか?」

聞いたことのない名。
グランの知り合いなのだろう。
大男が床で大の字に倒れている。
頭部にはかなり大きなコブができている。

何故こうなったかはわからないが、誰がやったのかは、何かのスキルを使わなくてもわかる。
蓮はドラコを見た。

「わ、私は悪くないわよ!」

私は悪くないと言うことは、殴ったのは自分であると認めると言うこと。

理由を聞くと『こ、こいつが生意気だったから……』と答えにくそうに、教師に怒られるヤンキーのような理由を口した。

「ドラコが理由なく暴力を振るわないのはわかってるよ」

蓮がそう言うと、ドラコが頬をあからる。
しかしそれには気づかず蓮は桜に視線を向けた。

「この人がね……」

桜によれば、シュバルツと呼ばれた倒れている大男は、蓮がゴブリン討伐に向かうのと入れ違いで王都レグナムから来たそうだ。

視察隊の編成には時間がかかるため、伝説のマンティコアを倒した蓮を一眼見たいと、先行して1人でやって来た。

「俺は強い奴が好きでな。伝説のマンティコアを倒した野郎と、戦ってみてぇんだ」

と蓮と戦う気満々だったそうだ。
それに対してドラコが『無駄だからやめておけ』と制止。
鑑定するまでもなく、シュバルツと蓮との実力差が開き過ぎていたからだ。 

「わかってねぇなぁ。これだから女って奴は。勝負ってのはな?やってみなきゃ分かんねぇんだよ!」

ドラコが制止した理由は、シュバルツを想ってのことではない。
こんなバカでも殺してしまったら蓮は気にするだろうと、蓮を気遣っての事だ。

「人間って雑魚ほど話しが通じないのね」

ドラコが興味を失った表情と口調で伝えると、シュバルツも後に引けなくなり言い合いはエスカレート。

大柄の角の生えた男が口調を荒立てていることに向日葵が怯え、涙ぐんだため、ドラゴが殴って黙らせたそうだ。

「なるほどね。ドラコ。ナイス」

向日葵を怯えさせるものに善人はいない。
蓮は自身のことを気遣ったことと、向日葵のために拳を振るったことに、親指を立てて賞賛した。

「こいつは四魔帝テトラゴーノンと呼ばれる王都最上位魔法師の闇雷帝あんらいていシュバルツ・ケラウノスだ」

グランによれば、闇魔法と雷魔法が得意で国のトップまでたどり着いた鬼人族の男性だそうだ。

鬼人族は強靭な肉体と、闇または雷の属性に対して高い適性を持っていることが多い。
特に肉体の強さは数ある種族の投げで上位だそうだ。

通常は闇または、雷のどちらか一方だが、シュバルツは闇と雷の両方ともに高い適性を持っている。

近づけば肉弾戦。
離れれば魔法戦と使い分けができるらしい。
見た目にそぐわぬ器用さを持っているようだ。

「まぁ相手がドラコ殿ではこうなるのも仕方がない」

大きく運ぶのも大変なため、そのまま放置して目を覚ますのを待つ。

時刻はもう少しで4度目の鐘が鳴なる頃だ。

蓮は調合師3人の到着を待つ間に、解体場に向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。

くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。 しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた! しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!? よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?! 「これ…スローライフ目指せるのか?」 この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。