異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー

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異世界生活:王都レグナム編

名探偵レン

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孤児院の話しと装備新調の話を終え、最後に蓮が切り出したのはポーション事業にもかかわる重要なこと。

「ここからは慎重に話をしたいのですが、グリーデンよりもレグナムの方がポーションが安いのはなぜですか?」

蓮の前置きの言葉から、重要な内容であることは分かる。
しかし、王たちは質問の意図までは理解できていないようだ。

なぜそんなことを聞くのかという表情を浮かべている。

「武器やほかの道具に関してはレグナムの方が少し高いです。でもポーションだけはグリーデンよりもレグナムの方が安いんです」

通常は大都市の方が物価は高くなる。
維持費が高くなる分、単価を上げなくてはならないからだ。

グリーデンでのポーションの相場は
下級ポーションは銅貨3枚から大銅貨1枚。
中級ポーションは銀貨2枚から3枚。
上級ポーションは金貨1枚前後。
下級全種回復オールポーションであれば銀貨1枚から2枚
中級全種回復オールポーションは金貨1枚は下らない。

しかし、レグナムでは下級ポーションは銅貨2枚から3枚。
中級ポーションでも銀貨1枚と大銅貨1枚から、銀貨2枚程度だった。

レグナムではポーションが大量生産されており、単価が下がっているというのであれば安価な理由は分かる。
しかし、道具屋で聞き込みしたが大量生産はしていない。

レグナムの安価なポーションをグリーデンへ運んだ場合、輸送費や関税がかかるのであれば、レグナムよりも高価になる理由も分かる。
しかし、その場合にしても金額差が大きすぎる。

「この金額差のせいでどれだけの人が苦しんだと思いますか?」

蓮は憎しみ混じりに言葉にした。
グリーデンではポーションが高すぎる。
そのため装備や生活に回す金がない。
貧窮した生活と準備不足により冒険者の死亡率は高くなる。
そんな現状を打破すべく、グランの懇願から始まったポーション事業。

職人ギルドマスターのガバルも協力してくれたことで軌道に乗った製造工程。
今もなお、品種改良に努めてくれているフィーネたち。

「この金額差は、ポーション事業を行う者僕たちのの思いをコケにしているとしか思えません」

グリーデンの商人ギルドマスターのフォッターには詐欺のスキルがある。
しかもレベルは3。

3というレベルは、フェリクスが思い悩み続けて発生した状態異常の迷心と同じレベルだ。
蓮たちのように加護を受けた特殊な存在でなければ、スキルのレベルが上がるということが相当な修練と時間を要するということが分かる。

過去にガバルが鑑定した時点で3。
今はもっと上がっているのかもしれない。

それだけ悪事に手を染めてきたということだ。

レグナムでもグリーデンでも金額差があまりなく、ともに高額なのであれば、商人ギルドが自己利益を求めすぎているのだと考えられる。
しかし、グリーデンだけで高額。

「冒険者ギルド同様に、各ギルドで報告書が本部に送られるんですよね?」

蓮の問いに王とシリウスは頷いた。

ということは
・グリーデンの商人ギルドが嘘の報告書を書いている。
・グリーデンの商人ギルドとレグナムの商人ギルド本部が一緒になって収益を隠している。
・グリーデンの商人ギルドが領主に裏金を渡している。
・グリーデンの商人ギルドもレグナムの商人ギルド本部も領主も関与している。

「ぱっと思いつくだけでこの4通りがありますね」

蓮は更に怒りを増し、言葉にした。
今まで黙っていたリルが『少し抑えよ』と制止したほどだ。

元居た世界では妹たちを食わせるだけで精一杯だった。
しかし、今は違う。
何人なんびとも逆らわせないだけの力がある。
横暴は好かないが、言いたいことは言わせてもらう。
やりたいようにやらせてもらう。

蓮はそんな思いからほとばしる闘気を抑えながら『理想の邪魔になるなら全面的に争いますよ』と言葉を続けた。

「王として、また友人として、徹底的に調べることを約束しよう」

王は精鋭部隊の一人を呼び、グリーデンの領主から報告されている収支表と商人ギルドから報告されている収支表の入手と調査を指示。
さらに、明日中にグリーデンとレグナムの商人ギルドへ聞き込み調査を開始するように指示を出した。

「決して気取られる出ないぞ」

王が指示を出し終えると、精鋭部隊の男は退室。
廊下を走る音が聞こえたため、すぐさま行動に移したことが分かった。
さすがは王命だ。

「冒険者ギルドも全面的に協力いたします」

蓮が持ち込んだグリーデンでの果物ポーションの販売は冒険者ギルドが行っている。
従来のポーションによる収益と区別するためには必要な情報だ。
シリウスは、冒険者ギルドから明日中に提出することと、冒険者への聞き込みで情報収取を行うことを約束した。

シリウスはどころなくグランと似ており正義感の強さが感じ取れた。

「ちなみに領主ってどんな人ですか?」

「ふむ。ゴウヨークという一族に任せておる。レグナム三大貴族のうちに一つじゃ」

貿易を管理するウィンクラー家。
レグナムよりも北部から山脈までを管理するゴウヨーク家。
レグナムよりも南部から海までを管理するワーグナー家。

ウィンクラーはゲイルの一族で、ワーグナーはガーネットの一族。
ガーネットも色々苦労していそうだが、今はそれよりもゴウヨーク家だ。

「まぁ僕の居た世界ではが横行してましたからね」

蓮は明言を避けた。
しかし、王へは充分に伝わったようだ。

「管理体制の見直しと情報共有の方法を確立せねばならんな」

王は問題解決能力が長けているようだ。
レグナムでの相場がグリーデンで共有されていたり、グリーデンでの状況がレグナムに伝わっていれば未然に防げた可能性は高い。
また、内部告発しやすい環境であればもっと早くに発覚したはずだ。

「レン殿。何から何まですまないな。少し時間をくれ」

ポーション事業を気持ちよく始めるために。
蓮は王の意図を汲み取り、頷いた。
そして、調査は進めて良いが、その先は祝典後にしてほしいことを伝えた。

「グリーデンでは僕の果物ポーションが主流になって、従来のポーションは売れていません。それに追い打ちをかけるように調査が進めば……」

蓮はその先を言葉にしなかった。

しかし、普段から狙われる立場にある王はすぐに察した。
ポーションを高騰させた犯人が蓮たち家族に逆恨みを抱き、命を狙うかもしれない。
祝典など人が多い場所は暗殺の格好の機会となる。

王はゆっくりと頷き、シリウスとフェリクスにも緘口令をしいた。
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