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第一部
第13話 ※
しおりを挟むエルーシアはベッドの中で深いため息をついた。
今日はエデルを怒らせてしまった。あんなエデルを見たのは初めてだった。未だにエデルが怒った意味がわからない。エデルが働いているのに義兄と遊びに行ったことがやはりよくなかったのだろうか。その上謝ることもせずそのまま立ち去ってしまった。明日の午後は会いにきてくれるだろうか。ちゃんと話をしてきちんと謝らないといけない。
うつらうつらとそんなことを考え、ふとエルーシアは自分の頭を撫でる手に目を覚ました。目を擦り見上げればエデルが立っていた。エデルは全身黒服を着ていた。ランプを灯したまま寝てしまったため剥き出しの顔だけ闇から浮かんだ様だった。
「エデル?!」
「夜中にすみません」
「全然平気よ?どうしたの?」
会いたかった愛しい恋人が目の前にいる。機嫌は収まっただろうか。エルーシアを送り届けるために寝室に入ることはあったが会いに来てくれたことは初めてだ。それがとても嬉しい。
「その‥昼間つまらないことで怒ってしまい‥謝りに‥」
自分を気遣いわざわざ謝りに来てくれたの?視線を逸らし言い淀むエデルが愛おしい。エデルの手を取れば随分と冷たい。夏も終わりかけ、外は寒かったのだろうか。
「怒ってないわ。私こそごめんなさい」
「いえエルシャ様は何も‥」
「嬉しい‥会いたかったのよエデル」
「エルシャ様‥」
温めてあげたい。ベッドに抱き寄せればエデルがのしかかってくる。その体を上掛けで包んだ。
「体冷えてる。寒かった?」
「いえ‥そういうわけでは‥エルシャ様は暖かいですね」
体を撫でる冷えた手に甘い声が出そうになるが必死に堪える。エデルとベッドで触れ合うのは初めてだ。しかもここは自分の寝室。その背徳感でさらに鼓動が跳ねる。エデルの親指がエルーシアの唇を撫でた。
「エデル‥」
「少しだけ‥すぐ帰ります‥」
帰らないで。そう囁けばエデルの体が強張った。二週間、昼も夜も触れ合えず焦れに焦れていた。抱きしめられ口を塞がれ全身を撫でられる。性急に夜着の中に手が入れられ胸を揉まれまだ柔らかい頂を転がされればすぐに硬く勃ち上がる。エルーシアの鼻から甘い声が抜けた。久し振りに抱き合い触れ合える。異常に興奮しているのはエデルもだろうか。少し荒い愛撫もそう思えば嬉しい。求められていると感じられた。
「エデル‥大好き‥」
「エルシャ様‥」
冷たい手が太ももを辿り付け根を撫でる。眠る前の剥き出しのそこにエルーシアは頬を染めて顔を背けるがエデルが笑みを深めた。
「あん‥」
「今日も履いてないんですね」
「だって‥眠るところだったから‥」
「いつも僕を迎えてくれるようで嬉しいです」
「エデル‥」
「でも他の男には晒してはダメですよ?この体も‥」
夜着越しにひんやりとした手が這わされエルーシアがビクビクと反応する。触れられただけで快感が走る。体が与えられる愉悦に反応した。だがエデルの手がノックの音で止まる。
「シア?まだ起きていたのかい?」
ランプの灯りが漏れていたせいだろう、ラルドが扉を開けて寝室に入ってきた。エルーシアの体に触れていたエデルがびくりと震える。エデルは黒服を着ていたが白い寝具の上では目立ってしまう。エルーシアは慌てて寝具を乱しエデルを隠した。もう夜も更けている。あまり遅いとラルドはエルーシアの部屋に顔を出さない。今晩は来ないと思い込んでいた。
「エルシャさ‥」
「黙って!動かないで!」
エルーシアは寝具の中で膝を立てエデルの空間を確保する。こんなところにいるエデルが義兄に見つかったら殺されてしまう。エルーシアは背筋をぞくりと震わせた。
「シア?」
「えっと‥寝付けなくて‥‥」
下手に拒絶しては勘繰られそうだ。半身を起こしラルドに笑顔を向ける。その笑顔に誘われるようにラルドが近づいてきた。
「お休みが言えてよかったが今日は遠乗りで疲れただろう?」
「た、楽しかったから興奮してるのかも‥‥」
自然に会話しようとすればするほどわざとらしく感じられ焦りまくる。ラルドはそれに気づいていないのかベッドに腰を下ろし横になるエルーシアの頭を撫でた。ラルドがもう少しでエデルに触れそうでエルーシアがガチンと固まった。
「そうか、ならばまた時間をとって出かけようか」
「そう‥です‥ね」
エルーシアの言葉が詰まったのはエデルの手がエルーシアの太ももを這ったから。その悩ましい動きはまるでエルーシアの答えはダメだと罰しているようだ。
「もう休みなさい。明日はゆっくりすればいい」
「はい、ありがとうございます」
そして頭を撫でていたラルドがエルーシアを抱き寄せするりと優しく口づけてきた。いつものおやすみのキスだが今は側にエデルがいる。エルーシアは息をのんだ。だがここで抵抗すれば怪しまれる。この口づけを大人しく受け入れるしかない。
抵抗しないエルーシアにラルドが目を細めベッドに押し倒すように覆いかぶさってきた。
え?これは‥‥?
エルーシアは喉の奥から声を漏らしたがラルドはさらに大きな体でのしかかり唇を塞ぐ。普段は抱きしめるだけ、ベッドに押し倒されたことはない。初めての展開に頭が真っ白になった。
エデルがいる‥悟られちゃ‥‥抵抗しちゃダメ‥‥
されるがままにキスを受け入れていれば、さらに口を親指で割られて舌が滑り込んできた。舌で口内を愛撫される。
「ん‥‥ふ‥ンンッ」
昼間に受け入れたばかりのそれをラルドが当然のようにしてくる。口内を舌で弄られ感じやすい歯の裏をなぞられエルーシアはぶるりと震えてしまった。そこはエデルのキスで気持ちがいいと教えられている。
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