【完結】R18 狂惑者の殉愛

ユリーカ

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第一部

第12話 ※

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「お義兄さま、屋敷に着くまで少し休まれて‥」

 そう言いかけたエルーシアの体をラルドが正面からきつく抱きしめた。突然の抱擁にエルーシアがラルドの腕の中で目を瞠った。それほどに気分が悪いのだろうか。

「お義兄さま?」
「すまない、少しだけでいい‥少しだけ」

 何を?そう問おうとした口をラルドに塞がれた。お休みのキス。毎夜口づけられていたが今は夜ではない。驚くエルーシアに構わずその口をラルドの親指が押し開く。開いたその隙間からぬるりと肉厚の舌が差し込まれた。そのキスをエルーシアは既にエデルから教えられていた。初めての義兄の深いキスにエルーシアの体がガチンと固まる。

「おにぃ‥ンンッ」

 馬車の壁に体ごと押し付けられ抵抗の声さえ塞がれた。固まるエルーシアの舌にラルドのそれがざらりと擦り付けられる。くちゅくちゅと口内を舐られ舌を絡め取られ、その気持ちよさに喉の奥から甘い声が出たがそれでもどうにかラルドから顔を背け口を離した。

「ンンッん‥‥ダメッ」
「シア‥?」
「ダメです‥こんな」
「兄妹のキスだ。問題ない」
「問題‥ない?」

 目を瞠るエルーシアを微笑んだラルドが優しく頭を撫でる。

「ああ、大丈夫だ。皆やっている」
「そう‥なのですか?」

 義兄の言うことはいつも間違いはなかった。エデルからは恋人のキスと教わっていたがそういうものなのだろうか?

「屋敷に着くまででいい。私を癒してくれないか」
「お疲れ‥なのですか?」
「ああ、だから私を慰めてくれ」

 癒す。慰める。毎晩のキスでラルドからそう言われていた。疲れている義兄が元気になるのなら‥‥

「そういう‥ことでしたら‥」
「ああ、怖いことはしないから大丈夫だ」

 再び性急に抱き寄せられ深く口づけられる。義兄を癒すためと抵抗なく素直に受け入れるエルーシアにラルドが嬉しそうに目を細めた。優しく淫らに口の中を舐られその愛撫にエルーシアは陶然となる。体を這っていた手が胸元のボタンを外していることにも気がつかなかった。

「ンッやッおにぃ」
「触れるだけだ。昔もしていただろう?」

 ボレロとドレスの胸の部分だけが開かれラルドの両手が服の中に差し込まれた。義兄の手でシュミーズの上から乳房を初めて揉まれた。身をひこうとするも既に壁側に追い込まれていて動けない。ゆっくり優しく撫でられているだけだがエデルの愛撫を思い出し勝手に息が上がってしまう。
 エデルとの逢瀬がなくなって二週間が経っていた。エルーシアの体は優しく触れられる愛撫に飢えていた。

「ぁん‥‥そこ‥ンンッ」
「気持ちいいだろう?お前は柔らかいな。私も癒される」
「ハァ‥ぁん‥癒さ‥れる‥のですか?」
「ああ、凄くいい」

 そう言われればますます抵抗できない。馬車の中だがカーテンが引かれ暗くなる空間は蹄や馬車の軋む音がなければ寝室の様だ。親指が柔らかい先端を掠めるたびに勝手に勃ちあがりエルーシアの体がびくびくと跳ねる。顔が、全身が熱い。手で口を塞ぎ必死に声を堪えるも鼓動が上がり甘い息が漏れる。全身をほてらせ浅い呼吸で陶然と乱れるエルーシアのその様子にラルドの笑みも深くなった。エルーシアはラルドの手の中でゆっくりと甘露な楽悦に落とされていた。

「シア‥」
「フ‥‥おにぃ‥さま‥そこ‥ゃん」
「ここがいいか?感じやすいな。もっと気持ちよくなれ、私の手で」

 優しく舌を絡めとられ大きな手で胸をやわやわと揉まれ硬く尖った先端を親指でくりくりと転がされ。いつしかエルーシアはラルドの胸に強請る様に縋りついていた。蹄の音が硬い石畳を走る音に変わる頃にようやくラルドはエルーシアを解放した。

「屋敷についたようだ」
「ハァ‥おにぃ‥さま‥ご気分は?」
「ああ、ありがとう。お陰で癒されたよ」

 だがエルーシアはトロトロに蕩かされていた。ラルドは微笑んですっかり蕩かされたエルーシアから手を抜きドレスのボタンを閉じた。そこで馬車が緩やかに止まった。

「すまない、少しやりすぎたか。歩けるか?」
「大丈夫‥です」
「危ない。こちらにおいで」

 馬車から先に降りたラルドに腰を持ち上げられ子供のように抱き下ろされた。これでも同じ年なのに。出迎えの執事がいる前では気恥ずかしい。思わず頬が赤くなった。

「もう!お義兄さま!子供扱いはやめて!」
「私から見ればまだまだ子供だがな」
「同じ年なのに!」
「そう言えばそうだったな」

 声を立てて笑いエルーシアから離れ執事と話す義兄の後ろ姿をむぅと睨みつけてやった。いつになったら自分は大人の女性扱いしてもらえるのだろうか?

 その時背後から伸びた手にエルーシアは掻っ攫われる。抱き込まれ屋敷の裏に連れていかれ見上げればエデルが見下ろしていた。今日は二回も会えた!と笑顔で抱きつこうとするもエデルの雰囲気がいつもと違う。伸ばしかけた手が止まる。エデルは目を細め口調も鋭いものだった。

「‥‥一体何をしてたんですか?!」
「‥何‥って?」
「なぜ旦那様と同じ馬車に?!供はいないのですか?!」

 いつも優しく礼儀正しいエデル、そのエデルが怒っているのをエルーシアは初めて見た。どうやら義兄と同じ馬車に乗っていたことが気に入らない様だが、それでもエデルの激昂の訳がわからない。掴まれた二の腕が痛い。怖い。逃れようと身を捩るもエデルは手を放さなかった。

「‥‥お‥お義兄さまと遠乗りに行っただけ‥」
「遠乗りだけでなんで旦那様の香りがこんなに移ってるんですか?!一体馬車の中で何を?!」
「え?だって‥」

 疲れている義兄を癒しただけ、そう言おうとしたところできつく抱き寄せられその口を塞がれた。突然の抱擁と舌で口内を貪る深い口づけにエルーシアは目を瞠る。

「ンッンンッ」

 初めて外で口づけられた。ここは隠れ家ではない。屋敷の物陰だが昼間で誰が見ているかわからない。いつも冷静で紳士なエデルと信じられなかった。そのまま壁に押し付けられ胸を弄られ奪うように荒々しく口内を舐られた。呼吸もままならない。エデルの手荒い愛撫に鼻から甘い声が漏れた。スカートが捲られ太ももに直にエデルの手が這えば、ラルドに既に蕩かされた体は簡単に反応して全身を快感が駆け抜けた。
 愛撫に流され遠のく意識の中で義兄がエルーシアを呼ぶ声がした。その声が近づいてくるがエデルは抱擁を、口づけを解かない。

「エデル‥‥ダメ‥義兄が」

 顔を逸らしなんとかそう伝えればエデルの腕が緩んだ。その腕から逃れエデルに背を向けて駆け出した。エデルを見られてはいけない。ラルドがたどり着く前にエルーシアは飛び出して義兄の腕の中に飛び込んだ。

「シア、よかった、ここにいたか」
「お話は終わりましたか?喉が渇いたわ。ご一緒にお茶になさいませんか?」
「そうだな、準備させよう。また迷子になってはいけない。一緒においで」
「もう!迷子ではありませんわ!」

 エルーシアは義兄の腕を取りそこから離れる様に手をひいた。エデルに振り返りたい衝動を必死に堪える。エントランスから入る瞬間にちらりと背後を見やったが、既にそこにエデルの姿はなかった。

 
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