5 / 114
Ⅰ ヒロイン、俺。
004: 実はゴリゴリファンタジーだった件
しおりを挟む負けじと聖女も王子に指を突きつける。聖女以外がこんなこと王子にしたら不敬罪で即処刑だろう。
「そのセリフ!こちらからお返ししますわ!こんな浮気男、こっちからお断りですのよ!王家からどうしてもというから温情で婚約してあげたのに、これだから王族は傲慢極まりないですわ!」
「どの口が言っている?!傲慢は貴様の方だこの腹黒!これのどこが聖女だ!」
「この脳筋な下品が王子?世も末ね、ふざけんじゃないわ!この私の輝かしい経歴によくも汚点を残しましたわね!絶対許しませんわ!」
えええ?!
お二人は婚約者?でしたか?
そうでしたっけ?全然知らんかった。
ん?じゃあ俺の今の立ち位置は??
「勅命でつい先週婚約が整ったばかりだ。お前に黙っていて済まなかった。だが愛しているのはお前だけだ、信じてくれ」
「え?いやあの?俺は別に」
殿下!先週婚約して今週早々に婚約破棄しちゃっていいんですか?流石にそれはまずいんじゃ?しかも国王陛下の勅命なのに?
いやそれよりも?
王子お気に入りの愛人(じゃないけど俺)にちょっかい(?)を出した悪役令嬢(聖女)にキレた王子が婚約破棄を言い渡す。
乙女ゲーム?これ乙女ゲームの有名な弾劾シーンか?その割に聖女がへこたれていないが。口論ならめっちゃ対等に戦ってる。マジでいいごん太根性だ。
いやいや、つーか?これって?
よく考えたらあれか?
俺ってば王子と婚約者の仲を引き裂く可憐令嬢?
俺、ヒロインポジ?三角関係?
ヒロイン、俺。マジか。マジもんか?!
王子に散々毒づいた聖女が駆け寄ってきて満面の笑みで俺の手を取った。そして更なる爆弾を落としやがった。
「もう一刻たりともこんな男のそばに大事なルキアス様を置いておけませんわ。さあ、私と共に参りましょう?」
「はい?」
「私、ずっとルキアス様をお慕いしておりましたの。この通り嫌な男との婚約も破棄しましたので私は今フリーできれいな身ですわ。どうぞ私のそばにいてくださいませ」
「はいぃぃ?」
「ルキアスの手を離せこの毒女が!!ルキアスは俺のものだ!!」
ゲッ 俺に流れ弾が飛んできた?!俺を巻き込まないでくれ!王子と聖女、二大権力相手にどっち断っても俺の首が飛ぶぞ?!
男ならモテモテだったらいいなと思うだろ?だがこれは断じて違う!勘弁してくれ!コレジャナイ!
「大体貴方勇者でしょう?勇者ならとっとと魔王討伐に行ってきたらどうなの?!」
その聖女のセリフに俺はガチンと固まった。目を見張り王子を見上げれば王子がバツの悪そうな顔をしていた。
「えと?殿下?今のは?」
「あー‥‥すまない。俺は勇者になった。これも先週宣旨を受けた」
「は?」
「お前が危険な場所が嫌いなのは知っていたから言い出せなかった。こんなことで別れるとか言わないでくれ!」
げぇぇぇぇッ
この王子!勇者になったんかい!道理で!王子のくせに異常にガタイがいいと思ったら勇者の素質があったんか!
てか?ふざけんなよ?別れる云々言う前に俺たちデキてないからな!!勝手に既成事実にすんじゃねぇ!!!
おっと。マジギレしてる場合じゃない。落ち着け。ここは冷静に考えねば。もうそこかしこ地雷だらけだ。一歩踏み間違えるととんでもないぞ!
俺はこの王子の側近候補で。王子が勇者として戦場に出るなら側近の俺もついていかなきゃならん。未来の就職先が安全地帯だと思ったら戦場最前線。俺の明るい未来!輝かしい就職先が!王子のそばが一番安全だと思ったのに!!
マズイ!これはとってもマズい!!
俺の幸せなコバンザメはどうなるんだ?!
もうこうなれば聖女のそばにいた方が安全か?!
やっぱ聖女側に寝返ろっかなーと心中ガチで悩む俺を動揺したと勘違いした王子はイケメンスマイルだ。だからそれ腹立たしいからやめろ!
「大丈夫だ!お前を置いて旅に出ないから安心しろ。魔王討伐はこいつに行かせるから」
こいつって聖女様?
え?勇者がそれでいいんかい?
勇者は行かないで聖女一人で?
言ってること鬼畜だな。
「はぁ?!聖女の私が行くわけありませんわ!」
「教会からも魔王討伐指示が出ているのは王宮にも聞こえている!歴代最強な聖女なんだろ?さっさと行って魔王倒してこいよ!」
「ルキアス様を置いていくわけありません!私のいない間にルキアス様独り占めとか許せませんわ!貴方こそ勇者ならとっとと討伐へ行って来たらどうなの?!後のことは私が受け持ちますわ!」
げげげッ 聖女にも魔王討伐指示が出てるのか?!乗り換え不可?!どっちも安全地帯じゃなくなったじゃないか!!
魔王降臨。国の‥人類の存亡の危機に勇者と聖女が魔王討伐をなすりつけあっている。この王子と聖女は国民に大人気なんだがな。国民がこれ見たら泣くぞ?だがハイファンタジーマニアの俺としてはもう一つのキーワードが無性に気になった。
「‥‥‥‥あの、魔王?というのは?」
「ああ、つい最近目覚めたようだ。伝承のとおりだな。まだ極秘情報だから内密に頼む。魔王自体まだ未確認らしい。だが備えとして俺に勇者の宣旨が出た」
なるほど。それで王子が急に勇者か。
勇者、聖女、魔王。
おおぅ!なんか急にゴリゴリファンタジーになってきた!
「かつて降臨した魔王は古代都市を壊滅させたと言い伝えられています。今回降臨した魔王は過去類を見ない強さとのことですわ。すでに『神殺し』の二つ名がついています」
「ええ?『神殺し』?!」
「目覚めた際に畏れ多くも万物の支配者たる神を倒したらしい。とんでもないやつだ」
それってめっちゃくちゃ強そう。でもこの二人も強いのはわかる。王子は俺が護衛の技なんか要らないと思うほどに普通に強い。自分の身は自分で守れるやつだ。聖女も聖属性魔法が強力だ。この二人が組んだらめっちゃ強くなんじゃね?
あ!だからこの二人の婚約?とことん反りのあわない二人を少しでも仲良くさせようと苦肉の策?勅命まで出して無理矢理婚約させて魔王討伐パーティ?王宮と教会の苦悩が垣間見えたような気がしたぞ。
だがそれも俺のせいで秒速の婚約破棄。
これ逆効果だったようですわー
犬猿の仲の二人を取り持つなら共通の敵だろう。魔王討伐はちょうど良さそうだがそれだけじゃダメそうだな。
仕方ない。俺も一国民として国のために一肌脱ぐか。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
幻想プラシーボの治療〜坊主頭の奇妙な校則〜
蜂峰 文助
ファンタジー
〈髪型を選ぶ権利を自由と言うのなら、選ぶことのできない人間は不自由だとでも言うのかしら? だとしたら、それは不平等じゃないですか、世界は平等であるべきなんです〉
薄池高校には、奇妙な校則があった。
それは『当校に関わる者は、一人の例外なく坊主頭にすべし』というものだ。
不思議なことに薄池高校では、この奇妙な校則に、生徒たちどころか、教師たち、事務員の人間までもが大人しく従っているのだ。
坊主頭の人間ばかりの校内は異様な雰囲気に包まれている。
その要因は……【幻想プラシーボ】という病によるものだ。
【幻想プラシーボ】――――人間の思い込みを、現実にしてしまう病。
病である以上、治療しなくてはならない。
『幻想現象対策部隊』に所属している、白宮 龍正《しろみや りゅうせい》 は、その病を治療するべく、薄池高校へ潜入捜査をすることとなる。
転校生――喜田 博利《きた ひろとし》。
不登校生――赤神 円《あかがみ まどか》。
相棒――木ノ下 凛子《きのした りんこ》達と共に、問題解決へ向けてスタートを切る。
①『幻想プラシーボ』の感染源を見つけだすこと。
②『幻想プラシーボ』が発動した理由を把握すること。
③その理由を○○すること。
以上③ステップが、問題解決への道筋だ。
立ちはだかる困難に立ち向かいながら、白宮龍正たちは、感染源である人物に辿り着き、治療を果たすことができるのだろうか?
そしてその背後には、強大な組織の影が……。
現代オカルトファンタジーな物語! いざ開幕!!
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる