【完結】ヒロイン、俺。

ユリーカ

文字の大きさ
9 / 114
Ⅰ ヒロイン、俺。

008: サイコパス、俺?

しおりを挟む



 血の気が引くとはこのことか。初めて体感した。何度考え直してもその結論にしかならん!あまりの悪い冗談に目眩すら感じるぞ!誰だこんな悪趣味な設定にしたやつは!

「げぇぇッ 違う違う!俺は絶ッ対アレじゃない!」
『完全なる人型を有する魔族は魔の王君のみでございます』
「わぁぁッ 魔の王君?!魔王って言ったか?俺やっぱ魔王なんかい?!」
『主が魔王で間違いございません』
「ないないッ絶対ない!俺は非戦闘要員!ダントツ弱いもん!そもそも!俺が魔族というのがまちがい‥‥」

 俺の絶叫が尻すぼみになる。それもない。なぜなら俺はこいつと繋がっている。魔の一族と繋がれるのは魔族のみ。俺が魔族なのは間違いない。脳内でそこはすとんと落ちた。
 
 魔族 ✕ 唯一の完全な人型=魔王?!
 確かに俺は完全なる人型だ。え?

 じゃあやっぱり俺魔王?

「え?俺本当に魔王?いやいや!違うだろ?!天敵の人族と同じ姿が魔王とか!」
『陛下のお姿は人族と同じではありません。神の器でございます』
「神の?器?」
『魔族に伝わる伝承です。魔族の王は神が選帝します。陛下は神に選ばれその宣旨を受けられ神と同じ姿を与えられています。そこに魔族の異議はございません』
「だッだとしても!でも俺、即位してないし?まだ王じゃ」
『神に選帝された時点で陛下は王です。魔族で人型を、神の器を有しているのがその証。即位など魔王降臨の布告の儀式に過ぎません」

 神が魔王を選ぶ。そして俺が選ばれた。
 つまり?俺はもう魔王?決定事項?拒否権ナシ?

 だが!さっき変態たちから聞いた魔王の話と全然違うぞ!

「魔王は!ものすんごく強いんだろ?!歴代最強だってさっきあいつらがそう言っていたぞ?えーと?神殺し?そんなん激弱の俺ができるわけないだろ?!」

 狼がコテンと首を傾げるもさくっと出た言葉はとんでもなかった。

『そこはどうしてか‥‥主は確かに魔王の気配を纏っておられるのですが‥‥魔王の能力が封じられておりますな。封印がなければそのお力で神を殺すことも可能でございましょう』
「はぁぁ?!俺が封じられてる?!」

 いやその前に!俺神を殺せるんかーい!!
 見た目は華奢可憐美少女!中身は魔王!ってか?!
 こんなにへなちょこなのにどんだけ俺強いんだよ!!

 俺を魔王に選んだ神を殺した?なんて罰当たりな!
 俺ってば凶暴?サイコパス??!怖ッ

 そこらへんの記憶も一切ない。事情がわからないし。この記憶喪失も嫌がらせか?神を殺せる程の強さの俺が封じられたって?誰が?なんで?どうやって?これこそが天罰?オシオキか?そうなのか?!

 学園モテモテ→BL→乙女ゲーム→王道ハイファンタジー→百合+中国宦官かんがん系→スパイアクションからの?とうとう俺、神殺しでサイコパスな魔王ラスボス?あんだけ苦労してフラグ回避して?究極のエンドフラグ!結局このオチかよ!!

『まあですから封印のおかげで勇者たちの前でも人族と身を偽れたようでございますな。あぁなるほど!そのお姿は擬態でしょうか!目的のためにそこまで御身を犠牲にされるとは!心服の至りです!』
「擬態?!擬態の意味わかってんのか?!こーんな!思わず抱きしめたくなるような!女神級の可愛さで擬態?!悪目立ちがひどすぎる!絶対隠密に向かないやつだ!フザけんなよ!!」

 ぐわぁぁッと頭を抱えてキレキレで悶絶する俺の一方で、狼が再びコテンと首を傾げる。

『‥‥でしたら擬態を解かれてはいか』
「絶ッ対ダメだ!!」

 狼の意見を秒で却下した。この顔が擬態というものだとしても解き方がわからん。わかっても解くもんか!この顔は鏡で出会える俺の嫁だ!素の俺の顔もわからんのに手放せるわけないだろ!少なくともこの美少女が見つかるまでは無理だ!この顔がなくなったら俺が禁断症状になるわッ!!

 頭を抱えた俺はふぅとため息をついた。もう限界だ。

 ガ——ッ 疲れた!もう無理!泣きそうだ!
 今日はいろいろなことがありすぎて思考がキャパオーバーだってばもう!王子に聖女の件だけでも厄介だってのこれ以上は———

 そこではたと気がついた。
 俺はさっきの三文芝居であいつらを煽った。俺を助けるために魔王を倒せ、と。

 ん?待てよ?
 あいつら、ルキアスを取り返すために魔王を倒しに来るのか?そうなるよな?

 あれえぇぇぇ?
 俺ってば知らなかったとはいえいらんことした?
 なんて会心の一撃クリティカルヒットな墓穴!面倒なことになったな!!

『陛下、まずは城に向かいましょう!ご案内いたします!』
「城?魔王の城?ダメッ 絶対行かないぞ!!」
『は?』

 魔王の城なんて、魔王からルキアスを助けようと英雄二人が真っ先に向かう場所だ!そんな場所で鼻息荒いあいつらに王座の間でなんか出会って?俺が魔王だってバレてみろ!へなちょこな俺なんて秒で殺される!運良く殺されなくても一生あいつら変態の奴隷だ!

 そうだ!このまま逃げよう!ちょうどよく俺は拐われて生死不明だし。こんな状況で戻って就活なんかしてる場合じゃない!
 どうせコバンザメの未来も流れた。新しい世界で!魔王になれるくらいすごい俺(ただし封じられ中)の可能性に賭けよう!ナイス俺!

  俺の事情なんぞ知らない狼が不思議そうに俺を見上げている。こいつは何やら俺=魔王に幻想を抱いてそうだ。魔王の威厳として、英雄が怖いとも言えない。ここはなんか良い言い訳を!

「えっとだな‥‥城に行くのはもう少し先にしてはどうだろうか?」
『何故でしょうか?』
「え?な?なぜ?なぜなぜ‥え———ッとだな‥‥、俺は今朝目が覚めたばかりで‥この世界のことをよく知らない。魔族の敵という人族のこともよくわからんわけだ」
『はぁ』
「つまり!敵を知る時間が欲しいのだ!城に戻っては外に出ることもままならなくなるだろう?ならば今しかチャンスはない!うん!人族は強敵だ。このまま弱点もわからず戦いを挑んでは魔族が壊滅してしまうかもしれない!これはそのための調査だ!決して城に行くのが嫌なわけじゃないぞ!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...