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Ⅰ ヒロイン、俺。
008: サイコパス、俺?
しおりを挟む血の気が引くとはこのことか。初めて体感した。何度考え直してもその結論にしかならん!あまりの悪い冗談に目眩すら感じるぞ!誰だこんな悪趣味な設定にしたやつは!
「げぇぇッ 違う違う!俺は絶ッ対アレじゃない!」
『完全なる人型を有する魔族は魔の王君のみでございます』
「わぁぁッ 魔の王君?!魔王って言ったか?俺やっぱ魔王なんかい?!」
『主が魔王で間違いございません』
「ないないッ絶対ない!俺は非戦闘要員!ダントツ弱いもん!そもそも!俺が魔族というのがまちがい‥‥」
俺の絶叫が尻すぼみになる。それもない。なぜなら俺はこいつと繋がっている。魔の一族と繋がれるのは魔族のみ。俺が魔族なのは間違いない。脳内でそこはすとんと落ちた。
魔族 ✕ 唯一の完全な人型=魔王?!
確かに俺は完全なる人型だ。え?
じゃあやっぱり俺魔王?
「え?俺本当に魔王?いやいや!違うだろ?!天敵の人族と同じ姿が魔王とか!」
『陛下のお姿は人族と同じではありません。神の器でございます』
「神の?器?」
『魔族に伝わる伝承です。魔族の王は神が選帝します。陛下は神に選ばれその宣旨を受けられ神と同じ姿を与えられています。そこに魔族の異議はございません』
「だッだとしても!でも俺、即位してないし?まだ王じゃ」
『神に選帝された時点で陛下は王です。魔族で人型を、神の器を有しているのがその証。即位など魔王降臨の布告の儀式に過ぎません」
神が魔王を選ぶ。そして俺が選ばれた。
つまり?俺はもう魔王?決定事項?拒否権ナシ?
だが!さっき変態たちから聞いた魔王の話と全然違うぞ!
「魔王は!ものすんごく強いんだろ?!歴代最強だってさっきあいつらがそう言っていたぞ?えーと?神殺し?そんなん激弱の俺ができるわけないだろ?!」
狼がコテンと首を傾げるもさくっと出た言葉はとんでもなかった。
『そこはどうしてか‥‥主は確かに魔王の気配を纏っておられるのですが‥‥魔王の能力が封じられておりますな。封印がなければそのお力で神を殺すことも可能でございましょう』
「はぁぁ?!俺が封じられてる?!」
いやその前に!俺神を殺せるんかーい!!
見た目は華奢可憐美少女!中身は魔王!ってか?!
こんなにへなちょこなのにどんだけ俺強いんだよ!!
俺を魔王に選んだ神を殺した?なんて罰当たりな!
俺ってば凶暴?サイコパス??!怖ッ
そこらへんの記憶も一切ない。事情がわからないし。この記憶喪失も嫌がらせか?神を殺せる程の強さの俺が封じられたって?誰が?なんで?どうやって?これこそが天罰?オシオキか?そうなのか?!
学園モテモテ→BL→乙女ゲーム→王道ハイファンタジー→百合+中国宦官系→スパイアクションからの?とうとう俺、神殺しでサイコパスな魔王?あんだけ苦労してフラグ回避して?究極のエンドフラグ!結局このオチかよ!!
『まあですから封印のおかげで勇者たちの前でも人族と身を偽れたようでございますな。あぁなるほど!そのお姿は擬態でしょうか!目的のためにそこまで御身を犠牲にされるとは!心服の至りです!』
「擬態?!擬態の意味わかってんのか?!こーんな!思わず抱きしめたくなるような!女神級の可愛さで擬態?!悪目立ちがひどすぎる!絶対隠密に向かないやつだ!フザけんなよ!!」
ぐわぁぁッと頭を抱えてキレキレで悶絶する俺の一方で、狼が再びコテンと首を傾げる。
『‥‥でしたら擬態を解かれてはいか』
「絶ッ対ダメだ!!」
狼の意見を秒で却下した。この顔が擬態というものだとしても解き方がわからん。わかっても解くもんか!この顔は鏡で出会える俺の嫁だ!素の俺の顔もわからんのに手放せるわけないだろ!少なくともこの美少女が見つかるまでは無理だ!この顔がなくなったら俺が禁断症状になるわッ!!
頭を抱えた俺はふぅとため息をついた。もう限界だ。
ガ——ッ 疲れた!もう無理!泣きそうだ!
今日はいろいろなことがありすぎて思考がキャパオーバーだってばもう!王子に聖女の件だけでも厄介だってのこれ以上は———
そこではたと気がついた。
俺はさっきの三文芝居であいつらを煽った。俺を助けるために魔王を倒せ、と。
ん?待てよ?
あいつら、俺を取り返すために俺を倒しに来るのか?そうなるよな?
あれえぇぇぇ?
俺ってば知らなかったとはいえいらんことした?
なんて会心の一撃な墓穴!面倒なことになったな!!
『陛下、まずは城に向かいましょう!ご案内いたします!』
「城?魔王の城?ダメッ 絶対行かないぞ!!」
『は?』
魔王の城なんて、魔王からルキアスを助けようと英雄二人が真っ先に向かう場所だ!そんな場所で鼻息荒いあいつらに王座の間でなんか出会って?俺が魔王だってバレてみろ!へなちょこな俺なんて秒で殺される!運良く殺されなくても一生あいつら変態の奴隷だ!
そうだ!このまま逃げよう!ちょうどよく俺は拐われて生死不明だし。こんな状況で戻って就活なんかしてる場合じゃない!
どうせコバンザメの未来も流れた。新しい世界で!魔王になれるくらいすごい俺(ただし封じられ中)の可能性に賭けよう!ナイス俺!
俺の事情なんぞ知らない狼が不思議そうに俺を見上げている。こいつは何やら俺=魔王に幻想を抱いてそうだ。魔王の威厳として、英雄が怖いとも言えない。ここはなんか良い言い訳を!
「えっとだな‥‥城に行くのはもう少し先にしてはどうだろうか?」
『何故でしょうか?』
「え?な?なぜ?なぜなぜ‥え———ッとだな‥‥、俺は今朝目が覚めたばかりで‥この世界のことをよく知らない。魔族の敵という人族のこともよくわからんわけだ」
『はぁ』
「つまり!敵を知る時間が欲しいのだ!城に戻っては外に出ることもままならなくなるだろう?ならば今しかチャンスはない!うん!人族は強敵だ。このまま弱点もわからず戦いを挑んでは魔族が壊滅してしまうかもしれない!これはそのための調査だ!決して城に行くのが嫌なわけじゃないぞ!」
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