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Ⅱ メガミ、俺。
010: 白い夢
しおりを挟むさむい‥‥とても‥‥‥
仰向けで横になる体はとうに冷え切って動かない。眠りから浅く目覚めまどろむも、その寒さに小さな吐息が白く見えた。
またこの夢だ。ひどい目眩、目が回る。だがそれもこの寒さの比ではない。凍える寒さに俺は苦悶する。これは孤独感。ここから逃れたい。それでも体は動かない。指一本動けない。目の前には真っ白い世界。助けてくれと思うも声も出ない。誰もいない。助けを求める相手もいない。俺はただ一人、閉じ込められてここから動けない。
だが遠くに何かゆらりと色が見えた。
遠く揺らめく何か、目を必死に凝らせばそれは薔薇色の何か。それが髪だとわかったのは彼女がだいぶ俺に近づいたからだ。
今日もまた会えた‥‥なんて綺麗なんだ‥‥
凍える中でもそう思う。ローズピンクがかった長い銀髪、燃えるような深い青の瞳。この世のものとは思えない美しい少女が俺の前に現れた。
彼女に触れたくて、俺は手を必死に伸ばす。動かないはずの手が動いた。手を彼女に差し出す。もう少しで届きそう、彼女に触れたい。
だが俺と彼女の間に見えない障壁がある。彼女に触れる直前にひんやりとしたそれに俺の手が遮られた。透明な障壁越しに彼女も手を俺の手に這わせた。手と手が障壁越しに重なる。
彼女の唇が動いている。何か俺に言っているがよく聞こえない。切な気な表情が俺の胸を締め付けた。
え?何?何を言っているの?
そして彼女は俺を見つめて口を開いた。
『おはようございます、陛下』
「‥‥‥‥」
枕元では愛らしいポメラニアンが床に座って俺の顔を見上げている。
俺は宿のベッドの上で目を覚ました。うららかな朝、暖かい日差しが窓から差し込んでくる。
俺は仰向けの格好から右手を突き上げていた。夢の中で動いたと思った手は現実の自分の手だったわけだ。
まあね、俺も夢オチって夢でわかってた。
わかってたがな!!
『手を挙げられたのでお目覚めかと思いましたが』
「くっそッ あともうちょっとだったのに!!」
寝覚めから元気よく喚く俺にポメが不思議顔だ。
『は?』
「今日はもう少しで声聞けたとこだったのに!あともうちょっと!くそくそぅッ 手だって届きそうだったのに!何だあのガラス!昨日はなかったじゃん!お触り禁止ってか?!俺の夢なのになぜにお預け?!ちょっとハグして色々触るだけじゃん!減るもんじゃないし夢の中でなんかケチケチすんなよ!今日のはホントに!ガチガチに!悔しすぎる!ぐわぁぁッ」
枕を叩いて悔しがる俺をポメがやはり不思議そうに見ている。まあそうだわな。こいつは俺の事情がわからないだろう。
人族の偵察という態の豪遊観光旅行に出て二週間が経っていた。変態英雄二人と遭遇しないよう街を転々としつつも予算無制限ということで俺たちは物見遊山を楽しんでいた。
超絶美少女(男・魔王)とアイドル級のポメラニアン(オス・魔狼)なら魔族と怪しまれることはなかったが。まあ俺たち可愛すぎて悪目立ちはした。これは仕方ない。俺という女神級美少女だけでもヤバいのにさらにアイドル犬の可愛さ相乗効果セット。何十の男女を悶え殺したことだろうか。まさに大量殺人鬼級だ。
当然俺達に悪さをしようとする輩もいた。街といえど物騒な世の中だ。可愛い女の子の一人歩きなら普通なら人攫いからの奴隷市場真っ直ぐらだ。
俺、転生したら奴隷スタート?冗談じゃない!
つーことで。
これも世のため人のため。そういう奴らは人のいないところに誘い込んで魔狼に戻ったポメにキッチリお仕置きさせた。可愛い仔犬が暗がりで魔狼化。相当ビビってたし?あいつらこれで足を洗って堅気になれるんじゃね?チンピラ更生プログラム?イイコトシタナー
この程度のゴタゴタで旅は別段順調だった。
あの夢を見出すまでは。
意味深な夢を見出したのは一週間前から。最初はただ寒いだけの夢だったが日を追うごとに少しづつ夢が展開している。そして三日前から俺が恋い焦がれる嫁、国宝級美少女が夢に登場した。まあ顔は俺なんだが。
重ねていうが俺はナルシストじゃないからな!
彼女に会いたいという俺の願望が夢に出ていないとは言い切れんが。
新しい街に着く度に、俺にそっくりな女の子を見なかったか住民に聞いて回ったんだが手がかりなし。双子の妹という説明をつけたがそれでも相当に驚かれた。だよねー。こんな顔がもう一人いたら俺でもビックリだ。
でもどこかにいるはずなんだ!絶対見つけ出すぞ俺の嫁!街数ヶ所当たって空振っただけでガッカリしてる場合じゃない。
そんな中で見始めた謎の夢だ。色々考えてしまうだろ?
この夢の意味は?なんであんなに寒い夢なんだ?彼女は俺に何を伝えようとしている?
やはりよくわからない。日を追うごとに夢は進展はしている。焦らされ感満載だがもう少し様子を見てもいいだろう。明日こそはラブラブイチャイチャ展開を強く要望するぞ!!
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