【完結】ヒロイン、俺。

ユリーカ

文字の大きさ
12 / 114
Ⅱ メガミ、俺。

010: 白い夢

しおりを挟む



 さむい‥‥とても‥‥‥


 仰向けで横になる体はとうに冷え切って動かない。眠りから浅く目覚めまどろむも、その寒さに小さな吐息が白く見えた。

 またこの夢だ。ひどい目眩、目が回る。だがそれもこの寒さの比ではない。凍える寒さに俺は苦悶する。これは孤独感。ここから逃れたい。それでも体は動かない。指一本動けない。目の前には真っ白い世界。助けてくれと思うも声も出ない。誰もいない。助けを求める相手もいない。俺はただ一人、閉じ込められてここから動けない。

 だが遠くに何かゆらりと色が見えた。

 遠く揺らめく何か、目を必死に凝らせばそれは薔薇色の何か。それが髪だとわかったのは彼女がだいぶ俺に近づいたからだ。

 今日もまた会えた‥‥なんて綺麗なんだ‥‥

 凍える中でもそう思う。ローズピンクがかった長い銀髪、燃えるような深い青の瞳。この世のものとは思えない美しい少女が俺の前に現れた。
 彼女に触れたくて、俺は手を必死に伸ばす。動かないはずの手が動いた。手を彼女に差し出す。もう少しで届きそう、彼女に触れたい。
 だが俺と彼女の間に見えない障壁がある。彼女に触れる直前にひんやりとしたそれに俺の手が遮られた。透明な障壁越しに彼女も手を俺の手に這わせた。手と手が障壁越しに重なる。

 彼女の唇が動いている。何か俺に言っているがよく聞こえない。切な気な表情が俺の胸を締め付けた。

 え?何?何を言っているの?

 そして彼女は俺を見つめて口を開いた。




『おはようございます、陛下』
「‥‥‥‥」

 枕元では愛らしいポメラニアンが床に座って俺の顔を見上げている。

 俺は宿のベッドの上で目を覚ました。うららかな朝、暖かい日差しが窓から差し込んでくる。
 俺は仰向けの格好から右手を突き上げていた。夢の中で動いたと思った手は現実の自分の手だったわけだ。

 まあね、俺も夢オチって夢でわかってた。
 わかってたがな!!

『手を挙げられたのでお目覚めかと思いましたが』
「くっそッ あともうちょっとだったのに!!」

 寝覚めから元気よく喚く俺にポメが不思議顔だ。

『は?』
「今日はもう少しで声聞けたとこだったのに!あともうちょっと!くそくそぅッ 手だって届きそうだったのに!何だあのガラス!昨日はなかったじゃん!お触り禁止ってか?!俺の夢なのになぜにお預け?!ちょっとハグして色々触るだけじゃん!減るもんじゃないし夢の中でなんかケチケチすんなよ!今日のはホントに!ガチガチに!悔しすぎる!ぐわぁぁッ」

 枕を叩いて悔しがる俺をポメがやはり不思議そうに見ている。まあそうだわな。こいつは俺の事情がわからないだろう。

 人族の偵察というていの豪遊観光旅行に出て二週間が経っていた。変態英雄二人と遭遇しないよう街を転々としつつも予算無制限ということで俺たちは物見遊山を楽しんでいた。
 超絶美少女(男・魔王)とアイドル級のポメラニアン(オス・魔狼)なら魔族と怪しまれることはなかったが。まあ俺たち可愛すぎて悪目立ちはした。これは仕方ない。俺という女神級美少女だけでもヤバいのにさらにアイドル犬の可愛さ相乗効果セット。何十の男女を悶え殺したことだろうか。まさに大量殺人鬼シリアルキラー級だ。

 当然俺達に悪さをしようとする輩もいた。街といえど物騒な世の中だ。可愛い女の子の一人歩きなら普通なら人攫いからの奴隷市場真っ直ぐらだ。

 俺、転生したら奴隷スタート?冗談じゃない!

 つーことで。

 これも世のため人のため。そういう奴らは人のいないところに誘い込んで魔狼に戻ったポメにキッチリお仕置きさせた。可愛い仔犬が暗がりで魔狼化。相当ビビってたし?あいつらこれで足を洗って堅気カタギになれるんじゃね?チンピラ更生プログラム?イイコトシタナー

 この程度のゴタゴタで旅は別段順調だった。
 あの夢を見出すまでは。

 意味深な夢を見出したのは一週間前から。最初はただ寒いだけの夢だったが日を追うごとに少しづつ夢が展開している。そして三日前から俺が恋い焦がれる嫁、国宝級美少女が夢に登場した。まあ顔は俺なんだが。

 重ねていうが俺はナルシストじゃないからな!
 彼女に会いたいという俺の願望が夢に出ていないとは言い切れんが。

 新しい街に着く度に、俺にそっくりな女の子を見なかったか住民に聞いて回ったんだが手がかりなし。双子の妹という説明をつけたがそれでも相当に驚かれた。だよねー。こんな顔がもう一人いたら俺でもビックリだ。
 でもどこかにいるはずなんだ!絶対見つけ出すぞ俺の嫁!街数ヶ所当たって空振っただけでガッカリしてる場合じゃない。

 そんな中で見始めた謎の夢だ。色々考えてしまうだろ?

 この夢の意味は?なんであんなに寒い夢なんだ?彼女は俺に何を伝えようとしている?

 やはりよくわからない。日を追うごとに夢は進展はしている。焦らされ感満載だがもう少し様子を見てもいいだろう。明日こそはラブラブイチャイチャ展開を強く要望するぞ!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

物置小屋

黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。 けれど、もうやりたかった仕事を目指せない…。 そもそも、もう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。 どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。 ──ここは、そんな作者が希望や絶望をこめた台詞や台本の物置小屋。 1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。 時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。 使いたいものがあれば声をかけてください。 リクエスト、常時受け付けます。 お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...