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Ⅱ メガミ、俺。
021: オーバーロード
しおりを挟むその後、動けるようになった俺を魔導士のお姉さんが街に転送してくれた。盗賊のお姉さんには抱きつかれてわんわん泣かれてしまった。お姉さん、無事でよかった。怪我をした自分を庇ったせいと思ったのだろうが、これは俺が勝手にやったことだ。
街に転送された俺は小型犬に戻ったポメを抱いて温泉に直行。血まみれなのを薬草のせいと言い訳して風呂を貸切りサッパリした。新しいワンピースに着替えて冒険者ギルド経由で宿屋に戻って。そして三日間存分に食って寝て読んで寝た。だって俺、疲れたんだもん。
とってきた薬草は戻った日にギルドに渡してきた。大量の薬草を前に受付のお姉さんに相当驚かれた。だろうね。報酬換算にはしばらくかかるというので俺は宿屋で待機状態だ。どうせぐーたら寝てたし。
人面根は依頼になかったがギルドで買い取れるか聞いてみた。袋に入った現物を見せようとしたら受付のお姉さんから悲鳴が上がった。どうやら相当ヤバいヤツらしい。
魔導士の立ち合いの元、結界を張り全員耳栓装備で袋の中の人面根と対面。ムンクの叫びは披露されたが皆無事だった。その後ムンクはギルド裏の薬草畑に突っ込まれた。しばらく様子を見ていたがムンクが歩き出す様子もない。畑が気に入ったのか葉ツヤもいい。ご満悦のようにも見える。言うことを聞かなかったら一発殴るところだったが。
薬草ムンクの名はマンドラゴラ。貴重な薬草かつ特に活きがいいとのことで高価買取である。
気になって翌日ギルドを覗いたらムンクの株は2つになっていた。その翌日には4つ、そして今朝は8つ。どうやら畑の土とふんだんの肥料、温泉地熱がムンクに合ったらしい。ギルドの薬草担当はホクホク顔だが、増え方がねずみ算のようでゾッとしたのは俺だけだろうか。いつかこの街はムンク一族に支配されるんじゃないか?
後にこの街はマンドラゴラの一大生産地となったのだが、それはもう少し先の話だ。
Sランクお姉さんたちはまだ街に戻ってきていない。ゴブリン討伐と思いきや実はドラゴンが裏で糸を引いていた。と、そっちの方が大騒ぎだったらしい。
つまりギルドの業務斡旋ミスということらしいが?いやいや、これ無理くね?まあ冒険者側にとってもギルド提供の情報を信じるしかなく、結果今回のようなことも起こりうるっちゃ起こりえるんだが。幸いにも今回命を落とした冒険者はいなかったらしいが、冒険者のための労災保険の実況見分と警備隊の現場検証でお姉さんたちはまだ戻れていないそうだ。
魔王が竜を倒した云々は証拠不十分なのもあり一蹴されたが、噂が風のように伝わり魔王が現れた最寄の街ということで観光客が押し寄せている。これもどうよ?
魔王が開けたとされる穴は"マオウトンネル"と名付けられ急ピッチで道路開発が行われる計画だ。ここ二、三日で電光石火で決定したと宿屋でもその話題でもちきりだ。新ルートはトンネルがキモで王都までの輸送日程が半減するほどの相当な物流革命らしい。これはこの街が王都の食物庫になれるということを意味する。こっちは商人の期待が大きそうだ。仕事を求めて人も集まって来るだろう。
魔王の経済効果怖ぇ。そしてみんな暇人だな。
そんな騒ぎを他所に当事者の俺は大人しくしているだけだ。
そして今。
俺は自室の鏡の前で愛しの嫁とティータイムだ。
デレデレする俺にツンデレ女神様はむぅとしつつも付き合ってくれている。テーブルにはカップが左右二つ、俺が右を飲んで女神様が鏡に映った左を飲むという心遣いだ!俺すごい!
「女神様と念願のお茶‥‥夢みたいですぅ!」
『これ、楽しい?』
「楽しいですぅ!嬉しいですぅ!頑張った甲斐がありましたぁ!」
そう!今回俺頑張った!レベルはなんと!一日で45まで一気に上がった。祝!脱初心者!たった一日で爆上げである。下っ端騎士くらいには強くなった計算になるそうだ。まぁドラゴン倒したし?
大怪我して死にそうなほど痛い思いをした割にそれほど上がってなくね?と思ったのは内緒だ。まあ痛かったのは原因別だし。レベリングイマイチな要因は俺(魔王)一人でドラゴンを狩ったわけじゃないからと、これは推測だが魔王自体のレベルが上がりにくいのかもしれない。強力キャラは育成が遅いのはお約束だ。俺、耐性だけでもチートクラスだし。あとはあのドラゴン自体がああ見えて雑魚だったから。見掛け倒しの雑魚とはいえ人族には十分脅威であったが。
俺が魔王のレベルに戻れるのはいつのことやら。
『まあ?ちょっとは強くなったかしら?』
‥‥俺の嫁、鬼嫁。スパルタばっかじゃなくてちょっとは俺のこと褒めてくれてよくね?よく頑張ったねダーリン!からのご褒美なでなでとかラブラブチュッチュとか?鏡越しでもできるし?俺は褒められて育つんだよー?
そんな思いでおねだり電波を送るも俺の妻は華麗に無視。ツンと塩対応だ。しょっぱいな!
でもまあ?女神様のそんなところもいい!
「でも少し俺との時間が伸びたんですよね?」
『そうね、でもまだまだだわ。過負荷も酷かったでしょ?』
過負荷———
俺の器が弱すぎる、女神様がそう言っていた意味がこれだ。
俺の体に封印された魔王が現れた。レベル4852の魔王がレベル1の肉体に降臨したわけで。短時間だったが強すぎる力に俺の肉体が耐えられるはずもない。よって魔王消失直後に過負荷の反動が来た。
四肢が少しずつ粉々のバラバラにじょりじょり大根おろしで削られるような全身苦痛、何の拷問?筆舌に尽くしがたい?涙無しには語れない?トラウマ級ガクブル恐怖体験だ。あれはマジでキツかった。もう勘弁である。俺が神の器で死なないというあたりがさらに質が悪い。まさに生地獄。失神できてよかったよ、グッジョブ俺!
兵士は拷問対策で意識が飛びやすいように気絶訓練しているらしいが、俺もそれやろうかな?
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