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Ⅲ ハンター、俺。
031: 専用装備が✕✕✕✕でした。
しおりを挟むそんなこんなでキャンプを撤収後、俺たちは山の奥深くに入った。女神様は俺の手の中のコンパクトの中だ。姿見をいちいち出すのは面倒だ。コンパクトなら女の子マストアイテムだし普段女神様と話すならこの方が自然だろう。昨日のお買い物その2だ。
魔狼は険しい山道も構わず俺とるぅを乗せて走り抜ける。人の足なら何日必要だったか。ホントにポメには頭が下がる思いだ。
山の間を抜ける途中、緑の中に苔むした巨大な石像が見えた。石像の前で魔狼が足を止めその像を見上げた。ガイド本で読んでいたからこれが何なのか俺は知っていた。
ここら一帯が"神の棲家"と呼ばれた所以だ。古代文明がここを信仰の対象として神仏を築いたそうだ。巨大な像は擬人化された山神だろう。石像は皆どれも二つとないポーズをしていた。まるで今まで動いていたかのような躍動感。芸術性も高い。俺も石像を見るとつい条件反射で手を合わせてしまうのは前世の記憶のせいだろう。
「この自然全部が古代文明では信仰対象だったんですかね。こんな山奥にこれだけの数の石像とか、すごい文明だったんですね。しかもこんなに精巧な石像、すげぇ。この手とか今にも動き出しそう」
『あれ、私のゴーレムだから』
「‥‥‥‥ゴーレム?」
はい?なんですと?
女神様が鏡の中で遠い目をしている。
『ここらは特に荒れた土地だったから。ゴーレム作って総出で土壌改良したんだから。汚染土運び出したりしんどかったわ』
「はい?」
『土地を洗浄して、運び出して入れ替えて植えて。延々と地味作業が続いて私も途中で飽きちゃって。あとはゴーレムにさせてたんだけど』
「何をです?」
『殖林』
おおう!女神様自ら土壌改良に殖林?
え?二千年前になさっていた作業はガーデニングでしたか!ここは神の箱庭?そこで武器を落とされたと。ナルホド!
「せ、石像が点在しているのは?」
『やっと作業完了してやったーッてゴーレムの魔力を遮断したから』
「ゴーレム出しっぱなしですか?!」
『どうせ私の魔力が入らないと動かないし。終わったら壊す予定だったんだけど壊すにもコントローラーないしで、まあいっかなって。こんな険しいところに人族の街ができるとも思わなかったから』
魔力遮断で緊急停止。それがまたいい具合で石像の躍動感を表してるとか。動いていたなら躍動感は当たり前だ。
つまりゴーレムは今は電池が切れた状態ということ、ちょっとビビったがそういうことなら安全だ。途中結構な数の石像があったけど、あれ全部?巨大ゴーレム?全部動いて土木作業してたんか?
二千年前、俺の感覚では時間はかなり経っているが遥か昔のことが語られる神話としてはつい最近と言える。
そんな頃に女神様が土壌改良?汚染土?殖林?
この世界は何があったんだ?
再び走り出した魔狼の背の上でそんなことを考えていた俺の思考が女神の声で打ち切られた。
『だいぶ近くなってきたわ。そろそろ見えないかしら?』
「何がですか?」
『探し物でしょ』
見える?見えるって?
木が茂り森の中は薄暗い。もうコンパクトの中の女神様のナビ頼りだ。あっちだこっちだと女神様の指示で森の中を進む俺たち。ビーコン?手の中のコンパクトがもはや7つのボールを探すレーダーのようだ。しかしこの薄暗い森の中で何かを見つけるのは至難の業じゃないだろうか。
「参考までに、専用武器とはどういったもので?」
『武器?私、武器って言ったかしら』
「え?違うんですか?」
コンパクトの中で女神様がきょとんとしている。武器ではない?じゃあ俺たちは何を探している?
「んー、武器になり得る丈夫なもの?』
「えーと、具体的には?形とか」
『あれ、なんていうんだったかしら?こう柄がついててざくざくと』
「ざくざく?と何を?」
『地面を掘るやつ』
「地面を掘る?やつ?」
女神様の説明で俺の脳内にあるアイテムが浮かぶ、が。武器とそれが結びつかない。
え?それが女神様の専用武器?
『こちらから微かな気配が致します』
気配に敏感な魔狼が魔女っ子を背中に乗せて鼻を効かせている。魔狼と共に山道を登り、とうとう俺たちはそこに辿り着いた。
深い森を抜けると急に木が消えて開けた場所に出た。そこは大量の岩石が転がる岩場。岩は俺の身長サイズだ。そこそこ標高が高いここに自然に岩山ができるはずもない。綺麗に積み上げられたその岩山に疑問が湧く。
その中央、地面が丸く盛り上がりうっすら黒く焦げているようにも見える。岩場でひどく焼け爛れた大地、そのために草が生えていないのか。
そこにあったのは苔むした巨大な———
「———スコップ?」
スコップ?だよな?そうとしか言い表せない。
この形で他の道具ってあったっけ?
だが俺が女神様の説明でイメージしていたものと違っていた。俺の脳内には柄が長く足で体重をのせて地面を掘るスコップ。だがここにあるスコップは手に持ってしゃがんで土を掘る道具。ただしサイズは四階建てのビルクラスだ。それが自立して地面に半分突き刺さっている。周りの地面がクレーターのように抉れた跡がある。相当高いところから落ちてきてここに突き刺さった模様。
二千年前、雲を切って隕石のように落下してきただろう巨大物体がスコップ。シュールだ。
で?これのどこが武器?
俺と女神様、肝心なところの意思疎通ができていない。俺のエロエロとかそこは疎通しなくていいのに!
そんな思考の一方で。スコップのデカさから俺はある可能性に行き着いて愕然とした。
「女神様‥?」
『何よ』
「女神様‥‥ひょっとして‥巨人族ですか?」
『はぁ?何言ってるのよ?これは大きい方が効率がいいと思って大きくしただけよ。それに誰も持っていけないでしょ』
「これは流石に持っていけませんねぇ」
そして俺にも無理だ。
荒れた大地にこのスコップを天から下ろして女神様ガーデニング。その最中に女神様がうっかりぽろりと落とした巨大スコップがここにブッ刺さっていると。これぞまさに創世記!さすが神族、スケールデカい。
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