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Ⅲ ハンター、俺。
030: 大いなる魔女の娘
しおりを挟む「お、戻ったか。ちょうど焼けたところじゃ」
魚が焼けるいい匂いに驚いた。魔女っ子が一人でビルドコンロを使いこなしている。枝から削られた串に刺さった魚が六本、食べ頃の焼き加減だ。おまけに備蓄のパンとドライソーセージにサラダ菜のような葉っぱのサンドイッチまである。このサラダ菜どっから出てきた?コンロの脇にはコンソメスープ。
なんだこれ?ご馳走?グランピングかよ?
「んん?これ?お前がやったのか?」
「なに、偉大なる魔女の娘なら造作もない」
串焼きの魚は内蔵も綺麗にされている。満遍なく塩も振られている。まさに職人技なのだが。
こいつドヤ顔だが?どう見ても料理できないだろ。俺たちの小一時間ほどの散策で?こいつ一人で魚6匹釣ってさばいて焼いた?サンドイッチとスープは?どんな魔法だよ?だがハラヘリには勝てない。ポメと共に焼きたての串焼きにかぶりついた。
「お!うまい!」
「だろう?あやつの料理は絶品じゃ」
「あやつ?」
「ゲフンゲフンッ そうじゃ、スープもあるぞ?」
魔女っ子のスープをよそう手が危なっかしくて俺がやった。こいつ、明らかに料理ド素人だ。何かおかしい。まあメシウマならいいんだが。秘密があるようだがどうやら種明かしはしたくないようだ。
『おぉ、るぅよ、腕を上げたな』
「はい!頑張りました!」
なにを?兄妹にしかわからん会話をするなよ。
食後のコーヒーまで準備されていたが魔女っ子に熱湯を注げるわけもなく。危なっかしくて見ていられない。結局俺が淹れた。魔女っ子の魔法で着火した焚き火(俺の着火では障りがあるため自重)を囲んだコーヒー、これぞキャンプ!これで俺が火をつけられたら完璧なんだが。その後テントに敷いたフカフカ布団で皆で雑魚寝爆睡してからの翌朝。
ポメとるぅが寄り添って眠る中、俺はこっそり起きて姿見を覗き込んだ。これで二人きりだ!兄妹を起こさないように俺はいそいそと念話で話しかけたんだが。
『おはようございますー!女神様!』
『‥‥‥‥』
女神様はまたもやご立腹だった。
あれー?なんでだー?と思ったが。
話を聞けば昨日の俺の、女神様スライム触手絡みからのR18エロエロ妄想のせいだった。俺は悪くない、あれは勇者のせいだし。また半日放置後に、エッチだ不潔だとこっ酷く女神様のお叱りを受けたんだが。
スライム触手攻めと言われて?十代後半の性に目覚めた健全な男子ならエロエロ妄想しないわけないじゃん?男の性!これは仕方ないんだって!もう俺の脳内見ないでよ!
ちなみに女神様スライム触手エロ攻めは俺の脳内で大事にスチール保存しているが女神様に見つからずにこれを一人で使うタイミングがない。心底残念だ!
『ええと、そろそろ女神様の装備の在処を教えていただきたいのですが』
『そうだったわね』
なんとか話を逸らすことに成功した。が、女神様から予想外の言葉が出た。
『よくわからないわ』
『はい?』
『落としちゃったのは随分前だし、上から見るのと下からじゃ感じが違うし』
『お?落としちゃったとは?』
「つるっとどこかに』
『どこかに?!』
『ここらなのは確かなのよ。ここで作業はしていたから』
女神様が“随分前”に何やら“作業“していて?”つるっとどこか“に”落とした“もの。見つけるの無理ゲーじゃね?
『ちなみに随分前?とは?』
『一‥‥二千年くらい前かしら?』
かしら?
可愛らしく首を傾げておいでだが。
創世記?一?二千年前?そんな前に落としたものを今見つけることができるのだろうか?やっぱ無理ゲーじゃ?
『近づけばなんとなくわかると思うからとりあえず山の中行ってくれる?』
『山の中って‥‥雑ですね。もう誰かが拾っている可能性は?』
『それはないわ。私専用だから』
そこでモゾモゾと魔女っ子が起き出した。寝癖頭で目を擦ってぼーッと寝ぼけていたが、鏡の中の女神様を見てパァと笑顔を弾けさせた。俺をガン無視で鏡に秒速でにじり寄った。
「女神様!キャァァッ女神様!」
『お前は‥‥末の魔女か?』
「はい!お初にお目にかかります、お母様!やっとお会いできました!」
おかあさま?女神様がお母様?
はて?
流石に俺も鼻で笑ってしまった。
「いやいやおいおい、お母様って何を寝ぼけてるんだよ」
「何を言っておる。ねぼているのはお前じゃ。女神様はわらわの母上じゃ」
母上?え?女神様がお母さん?
大いなる魔女の娘って?女神様の娘って意味?
魔女っ子も可愛いし?この二人なんとなく?どことなく似てる?
鏡を見れば女神様が頬を染めてすすと俺から視線を外した。その意味は?俺からザザザッと血の気が引いた。
まさかまさか?
魔女っ子を押し除け俺が姿見ににじり寄った。
「ええええ?!女神様!誰?誰との子供?!」
『ええ?誰って?』
「相手誰なんですか?女神様既婚者?旦那がいるの?これって不倫?俺とは遊び?それともシングルマザー?いつの子供なんですか?別に女神様がバージンじゃないからって別れないし怒らないから教えてください!」
『ばばば?!』
「お前は何を言っておるのじゃ?」
『どうぞお気を落ち着かせてくだされ、陛下』
いつの間にか起きてきた魔狼にため息まじりに宥められたが俺はそれどころじゃない。
魔女っ子が女神様の娘ならポメもそういうこと?え?俺、女神様との再婚で子持ちになるのか?!勝手にソロキャンプと思っていたが実は賑やか4人家族キャンプだった?
「人族の親子とは違う。わらわは女神様の御血をいただいたという意味じゃ」
「血?」
『いやぁ、そこは深いわけがありまして』
「わけって何?」
ポメがごにょごにょ濁している。なんでそこ誤魔化すの?ってところで女神様も勢いよく被せてきた。
「女神が結婚できるわけないでしょ!あ、相手とかいないし。貴方が思うようなことにはなってないから!』
日本神話だと男神と女神がすったもんだして八百万神が生まれるってところだが?確かギリシャ神話の原神で闇のニュクスは一人で子を成していたな。つまり女神様はお一人で子を成した?
血を与えたってどっかの鬼マンガ?輸血でもしたんですか?ここはハイファンタジーの世界、神族・魔族は人族と子作りシステムが違うのかもしれない。
女神は結婚できない?じゃあ相手いないんか?ん?ということは俺とも結婚できない?いやいや、そこは深く考えるな!
つまり?女神様はフリー?
ここで初めて俺は安堵のため息をついた。
「女神様未婚‥ヨカッタ‥ヨカッタヨォ‥‥あ!でも!バツがついててもシングルマザーでもバリバリ経験者でも!どんな女神様でも俺は受け入れる覚悟があるので安心s」
『だから違うって言ってるでしょ!!!』
スパコーン!とお約束のエアデコピンが俺の眉間に華麗に決まった。
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