【完結】ヒロイン、俺。

ユリーカ

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Ⅳ マドウシ、俺。

042: マンドラゴラ・キング

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 なんだかんだと二ヶ月逗留した山を降りて俺たちは以前滞在した温泉街にやってきた。スケさん達は日中外を歩けない。申し訳ないが元の世界に戻ってもらった。元々はるぅが治める死の国の住人だという。

 俺は久々にワンピースドレスを纏うがやはり俺の顔に衆目が集まるためフードを被っている。足元にはポメラニアンに変化へんげして見事なリーダーウォークを披露するポメ、俺のちょっと前を魔女っ子がてけてけ歩いている。

 たった二ヶ月とちょっとで街は随分と様変わりしていた。人が多い。ガテン系が多いのは例のマオウトンネルの街道工事に携わる人たちだろうか。商人の姿も見える。観光客の姿も増えた。これは魔王伝説で集まった人たちだろう。それに比例して店も随分増えた。まるで初めて来た街のように新しい店や屋台がひしめいている。これも魔王経済効果だとしたら恐ろしい。だがもうひとつ。

「魔導士が随分と増えた?」
「そうなのか?」

 いかにも魔導士の格好をした人がちらほら見られた。二ヶ月前はこんなことになっていなかった。なんでだろうか。
 こういう話は冒険者ギルドで聞いてみるのが一番いい。ひょっとしたらSランクパーティのお姉さん達もギルドにいるかもしれないし?ぐぅぅッ胃が!いてて!何も期待してないって!

「あら!ルキアスく‥ちゃん?!え?ホントにルキアスちゃん?!うそ!やだやだ!」
「こんにちは、ご無沙汰してます。ちょっと寄ってみました」
「久しぶり!びっくりしたわ!」

 冒険者ギルドの窓口のお姉さんがものすごくいい笑顔で迎えてくれた。薬草クエストやらでなんだかんだお世話になった人だ。俺を可愛がってくれたお姉さんの一人である。
 俺を見て相当びっくりしているようだ。突然帰っては来たけどそこまで驚くこと?
 それに?ギルド内装リフォームした?すごく立派になってる?お金持ち?

 受付で俺がフードを下ろすとギルド内がざわついた。まあ俺の美貌でざわつくのはいつものことなんだが、今回は様子がちょっと違う。男性冒険者たちから刺すような痛い視線が飛んできた。ヒソヒソ話し声も聞こえる。

 ん?なんだこれ?俺何かしたか?

「Ꮪランクの皆は今ちょっと遠征出てるのよ。しばらく帰ってこない予定。ルキアスちゃん帰ったって聞いたら残念がるわ」
「ありゃ、タイミング悪かったですね」

 それは残念、温泉プールが‥‥
 ゲフンゲフンッ まぁそれも仕方ない。

「あれからどうです?ここは羽振りよさそうですね」
「ふふ、まあね。ここキレイになったでしょ?ほら!ルキアスちゃんが売ってくれたマンドラゴラ!アレのおかげよ。 生命力強いから根を使ってもまた生えてくるって大ヒット!すごい勢いで売れてるの」
「あ!あいつ!最初のやつってどうなりました?!」
「奥にいるよ。会いに行く?」
「行きたいのじゃ!」

 カウンターの下でぴょんぴょん跳ねる魔女っ子に受付のお姉さんが微笑んだ。

「あら、この子は?ルキアスちゃんの妹?」
「えっと、親戚の子です」
「へるぅじゃ!」
「るぅちゃんね、可愛い!よろしくね」

 笑顔のお姉さんに頭を撫でてもらって魔女っ子は嬉しそうだ。俺の時と違ってさくっとるぅ呼びを許してるんだが?いいんかい?
 見たところムンク一族が支配している感じはしないんだが。あの異常なねずみ算増殖は止まったのかな?

 るぅは受付のお姉さんと手を繋いでウキウキとギルド裏の薬草畑に向かっている。動物園にワクワクでお出かけの幼女のようだが見に行くのはあの絶叫ムンクだし。
 裏庭もだいぶ様変わりしていた。畑には大量のマンドラゴラ、畑の向こうは温泉が引き込まれていて湯気が立っている。足湯スペースのようなエリアの奥に例のムンクが偉そうに足(根っこ)を湯に浸けて粒状のものを口に放り込んでいる。おそらく肥料か何かだろう。以前に比べればだいぶ太ったように見える。

 態度でけぇな、なんかムカつく。
 なに俺はやったぜ!っつー大物感を出してるんだ?

「これは確かに!マンドラゴラじゃ!こんなにたくさん!」
「マンドラゴラの注文が殺到しててね。バカ売れでギルドもすごく儲かってるんだよ。バックオーダーも凄くてね、生産追いつかなくて今街中の農家さんに栽培を依頼してるのよ」
「え?大丈夫なんですか?」

 マンドラゴラの絶叫は精神攻撃だ。本来大変危険な薬草なのだが。

「もちろん耳栓対策や結界は必須だけど。環境さえ整えばとても大人しいわ。ある肥料を与えると株が増えることもわかったから無限増殖も落ち着いたし。あ、でも急に引っこ抜いたりとかはダメよ?」
「バカ売れって、こいつら何に使うんですか?」

 こんなエグい薬草を何に使う?回復薬でもごめんだ。今晩のシチューにこれが入っていたら俺は間違いなくちゃぶ台をひっくり返すだろう。

「マンドラゴラは食えぬ、毒がある。麻酔にも使えるが錬金術の材料としてとっても貴重なものじゃ」
「うわぁ、るぅちゃん詳しいのね。錬金術士になりたいの?」
「わらわは魔女じゃ。魔女の呪いの秘薬にもマンドラゴラを使うのじゃ」
「すごい!そうなんだ!るぅちゃん賢いのね」
「それほどでもないのじゃ」

 一見幼稚園児と保母さんが話している風で内容は毒と呪いについて。なんだろうこれ?ハイファンタジーでは普通?

 ここで魔女っ子がうーんと唸った。

「しかし株が増えるのか。始祖級がおるのじゃな?」
「始祖級ってなんだ?」
「生命力が異常に強い個体種じゃ。そいつがおれば株分量産も可能じゃろうな。生まれ出でた株もまた強い生命力を持っておる。最初の株がまさにマンドラゴラキングじゃったんだろ」

 キング?あの根っこが?だが確かに活きはよかった。そしてあのねずみ算式増殖力ならあり得るかもしれない。

 


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