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Ⅳ マドウシ、俺。
047: 「私には無理ですぅぅぅッ」
しおりを挟む「ちょうどよい、これを使ってあそこでファイアを撃ってくればいい。わらわたちはここで結果を見ておるから」
「え?いきなりか?!」
「安心せい、デバフ発動は間違いないのじゃ」
まあいつかはどこかで撃たなきゃならんし。それなら完全防備の練習場の方が安全だな。‥‥だよな?時間もないしこれで行くしかない。
遠くで委員長が俺を呼んでいる。最後、俺の番のようだ。
「すみません、お待たせしましたぁ」
駆け戻りご機嫌取りにきゅるんと笑顔を見せれば男共から熱烈などよめきが起きる。あ、コレいらねー。そして女性陣からは冷たい視線。おっと、こういう反応が女子に嫌われるのか。ナルホド、気をつけないと。
「これがあなたの杖?バフ機能が全然ついていないじゃないの。これは杖じゃないわ。しかもこんなデザイン‥」
その通り、バフはない。あるのは呪いの鬼デバフ。
流石教師だけあって簡単に看破された。杖は普通、小ぶりの杖だ。魔道士との相性優先、装飾なんてものは普通ない。こんなゴテステッキ、俺がふざけていると思ったのだろう。これでもだいぶまともになったんだって。幸い呪いはバレていない。
「す、すみませんこれしかなくて!」
「仕方がないわね、貸出用の杖があるから」
げげげッ 普通の杖じゃ意味ないんだって!そんなん使ったら魔力15万の最終兵器発動じゃん!
「おおお、親の形見なんです!私にと残してくれました。是非これで!天国にいる両親に私の魔導を見せてあげたいです!」
「まあ‥そうだったの。そういうことなら」
あぶねぇ、泣き落としでなんとかなった。最近は即興演技にも慣れた。俺の口八丁も神がかってきたな。
「じゃあファイアを撃ってみましょう」
‥‥‥‥ってやっぱそれだけなん?
わざわざ金払って受講したのに。カネ返せ!まあこのステッキの試し撃ちと思えばいいか。
俺の喉がごくりとなる。目の前のろうそくに集中する。今回はるぅに女神様まで頑張ってくれたステッキだ。頼む!どうか火よ、贅沢言わないから!普通でいい!フツーに健やかについてくれ!
俺はいつも通り体内で魔力を錬成、解放させた。
「ファッファイア!」
一瞬がくんと脱力するような感覚がする。おそらくこれが魔力低下のデバフ発動、この俺でも流石に呪いが発動したか!GJステッキ!そのままそのまま!
しかし火はでない。だが俺も学習済だ。これは俺の魔導発動が遅いだけだ。辛抱強く待つこと10カウント。女子たちのクスクス笑いが聞こえてきた。そこで先生のため息まじりの声がした。
「‥‥‥‥失敗かしら?やはりその杖では」
「いえ、もう少し」
更に5カウント。何も起こらない。あれ?やっぱ失敗?デバフ発動したのに?遠くから見守っていたるぅたちも怪訝な顔だ。
「大丈夫ですよ、初めてではよくあることですから。諦めずにもう一度やってみましょう」
「はぁ」
おっかしいな?壊れたか?と、俺がステッキを覗き込もうとした時に。お約束のアレが発動した。だが今回は様子はちょっと違った。
構えたステッキからファイヤと呼ぶにはデカすぎる火の球が大量に吹き出した。おそらくこれは連射だ。爆風が砂塵を巻き上げる中で俺が目視で確認できたのは最初の3発、あとはわけがわからなかった。結果ドドドと鬼連射されたものが合体、超巨大な火の球となりろうそくを燭台ごとジュッと溶かし吹き飛ばした。
さらに火の球は地面を抉りながら上昇、練習場に張られた結界と衝突、火の球は空中でしばし停止、拮抗した後に結界を突き破り爆音と共に空の彼方に消えた。
俺が直前にステッキを覗き込もうとして上に向けたために火の球は上昇軌道を取ったようだ。上に行ってくれてよかった。
え?てか?練習場の結界、弱過ぎね?
砂塵が落ち着いてみれば練習場には真っ黒く焼け焦げてぽっかり抉られた地面が残っていた。
確かに呪いのデバフは発動した。出力低下して減速ガックンする感じはあった。ステッキは設計通りいい仕事をしたということだ。例のトンネル掘削機に比べれば格段の威力ダウンにはなっていた。なのにこれ?これのどこがファイア?
これはどういうことだ?!
わけもわからず顔面蒼白ガクブルの俺はこっそり覗き見していたるぅたちを睨みつけたが、あちらにも激震が走ったようだ。
ポメはいつものため息をついている?るぅは?暴れている?キレてるのか?遠くて聞こえないるぅの叫びを俺に伝えようとスケジの魔導筆談がここからでも見えるくらい拡大されて1文字ずつ吹き出しが走っている。
知 ル カ ボ ケ !
やっぱりキレていた。
あれだけ入念に備えてこの結果。無理もない。
原因不明。やっぱり俺ではソロキャンプ無理?!
これどうすんだよ?こんな大勢の前でいらんもん撃っちまった。場の静寂が痛いほどである。クスクス笑っていたイジワル女子たちは顔面蒼白。熱狂男子たちも完全に引いているわけで。委員長でさえ絶句だ。
そんな中で教師だけが立ち直っていた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥なんて素晴らしいのかしら」
「はい?」
「あなた才能があるわ!」
「はいぃぃ?!」
固まっていたスパルタ教師が目を爛々と輝かせて俺の両肩を掴んだ。興奮してちょっとイっちゃってる目だ。
おいおい、あれのどこが才能?暴走したぞ?
「これほどの魔力、王宮でも見たことないわ。あなたはとんでもない逸材よ!」
俺、唖然。やっぱ魔力150ダメだったじゃんか!
俺はただファイアの撃ち方を教わりたかっただけなのに!なぜにこうなった?!
「いいいいいえぇぇ、それほどでも」
「さっきの暴走も魔力が強すぎて発動が安定していないせいね。もっと魔導を磨くのよ!王都の学園に推薦状を書いてあげるから入学なさい!今英雄に魔導士はいないわ。あなたなら確実に国を救う英雄になれる!」
ぎゃぁぁッ 英雄!それだけは絶対ダメ!
それに俺、学園には在学していたし。そこに推薦入学してどうすんだよ?
魔力が強すぎるというのは正解。この教師、ところどころドンピシャをついてくる。だが推薦入学とか英雄とか、このままはマズイ!とにかく断れ!逃げ延びろ俺!
「ああああ、あの、でもうち貧乏で」
「奨学金制度があります!テストも絶対合格するわ!この才能をもっと伸ばすべきよ!」
教師の圧がものすごい。絶対逃さへんで!と俺に詰め寄ってくる。俺はしどろもどろの逃げ口上だ。
「でもあのその‥嫁に相談しないとなんとも」
嫁?嫁って誰の?外野の生徒からどよめきが上がる。あ、俺ってばまたいらんこと言っちゃった。
遠くで魔女っ子が手を振って構えている。あれはお得意の煙幕を出すつもりだ。大騒ぎになるやつじゃん。
げげげッ だからそれはダメだって!可及的速やかに俺撤退だ!
結果。
「私には無理ですぅぅぅッ」と俺は泣きながら逃走する羽目になった。
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