【完結】ヒロイン、俺。

ユリーカ

文字の大きさ
51 / 114
Ⅳ マドウシ、俺。

046: ステキなステッキ(改)

しおりを挟む



「なんだよ、今授業中だって」
「忘れ物じゃ」
「ん?」
「ルキのステッキじゃ。間に合ってよかった。魔導士は杖が必要なのじゃろ?これを使うのじゃ!」

 魔女っ子の杖、瘴気を吐く悪魔のステッキだ。
 先日の悪夢が脳裏をよぎる。あんな呪い全開なステッキ、人前で使えたもんじゃないだろうが!放送禁止のモザイクものだって。あのステッキを持ってったら魔導放つ前にあそこにいる俺以外の全員が死ぬぞ。深い深いため息が出た。

「安心せい、今回は大丈夫なのじゃ」
「何が大丈夫?」
「じゃじゃじゃじゃーん♪」
「これは———」

 俺の目の前に現れたのは前回のステッキと打って変わってシンプルになっていた。オープンハートにコウモリの翼は同じデザイン、だが黒光りして随分と高級感がある。柄にはLUKI-B4.031のシリアルNo.の様な刻印が何やらカッコいい。オープンハートの付け根、中央の黒石の模様がムンクの叫び顔を彷彿とさせるのは気のせいか。

 点が3つあると人の顔に見える心霊写真御用達のアレ?目の錯覚?ただのシミュラクラ現象だよな?だが以前あった禍々しい瘴気や呪いのオーラは消えている。パッと見にはちょっと趣味が悪いステッキにしか見えない。これはすごい進化だ。

 俺の手にとってみても怖気は来ない。魔女っ子も自信作なのだろう。満面の笑みだ。

「素晴らしい出来じゃろ?ルキ専用ステッキ・プロトタイプBコンバットHGモデルVer.4.031、通称ルキステじゃ」
「‥‥‥‥なんつーか、すッげぇソレっぽい名前になったな」
「今回のステッキは一味も二味も違うのじゃ。オリハルコンとダイヤモンドカーボンを魔導融合しブラックプラチナコーティングすることでタフさを保ちつつ軽量化にも成功した戦闘用ハイグレードモデル、センターにはブラックパールとマンドラゴラを魔導錬成した魔石をあしらっておる。デバフのためにデータを精査し再計算した上で設計と理論はお母様にも手伝ってもらった会心のステッキじゃ」
「え?!女神様が?!」

 前半何言ってるか全然わからんかったがなんかすげぇ?
 女神様が設計段階から参加?あんなに魔法少女ステッキ嫌がってたのに?どういう風の吹き回しだ?

「今回のコンセプトはズバリ徹底的な効率化じゃ」
「んんん?」
「装飾は控えめにしてシンプルに、余計な魔力の散乱を抑えたのじゃ。それにステッキから漏れ出していた無駄な瘴気もステッキに取り込んで魔力に再変換することでロスなくステッキのパワー増強ができたのじゃ。流石はお母様じゃ、着眼点が違うのじゃ」

 瘴気再利用?あー、だからドス黒い瘴気が消えたのか。瘴気を取り込んで魔力再変換?焼却炉排熱の二次利用的な?循環型?また随分とエコな。

 なんか真ん中の石の顔がムンクっぽいのが気になるが、装飾がシンプルになったのはいい。

「デザインについてはまだシンプル化の余地があるぞ。もっと効率化できそうだ」
「んー、これ以上バッサリするとなんだか味気なくないかの?」
「いや!そこ気にするとこか?!」
「それはお母様と激論済みじゃ。魔法ステッキはこう、もっと可愛くあるじゃろ。そうじゃ!プロトタイプAへるぅモデルもある。お母様は効率優先でB推しじゃったがこちらも悪くないぞ。どうじゃ?可愛いじゃろ?」

 目の前に出て来たもう一本のゴッテゴテのグロステッキに俺は絶句だ。コレのどこが可愛いって?グロ具合がさらに進化しとる。最初の方が対比でマトモに見えるぞ。

「‥‥‥‥あー、俺も効率優先で」
「そうなのか?遊びゴコロがないのー」

 すでにべき論で魔女っ子と意見が合っていない。
 俺と女神様の認識は一致していると見た。るぅは不満げだがスペック解説は続いている。

「マンドラゴラが大量に手に入ったから呪いかけ放題じゃ。今回デバフ発動率は11/12、実験段階で兄者やスケジにも試してもらって太鼓判をもらった。これならほぼデバフ発動間違いないのじゃ」

 呪いかけ放題。マンドラゴラが大量に?そういやここ最近ムンクに会ってないがあいつ無事か?るぅにぎゅうぎゅうに絞られてそうだ。

 呪い発動が11/12、百分率にして91.6%
 まさかの呪い90%超え。恐ろしくパワーアップしている。バフでさえこんな高確率聞いたことない。流石の俺の当てる確率1/2でも当てられないかもしれない。
 どんだけあの人面根ムンクをステッキに練り込んだんだ?ムンクの 怨詛えんそと呪詛が聞こえるようだ。そっちの方が恐ろしい。

 るぅの背後の草むらで魔狼とスケルトン・ヒーローが頷いている。二人が実証実験済み。ここまで追い込んでいる。完璧じゃないか。魔女っ子の自信に納得だ。

「前回のルキのファイアの規模からルキの魔力を計算したらおよそ15万となった。じゃから魔力低下デバフの設定値も改善して1/300から1/1000に引き上げた。これでデバフ発動時のルキ魔力想定値が150に抑えられるのじゃ。人族の王宮魔導士の魔力が大体100前後じゃからそこら辺まで抑えられる計算じゃ」

 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥マジか。
 俺の魔力15万。俺がっつりバケモンだった。
 魔力高いとは思っていたけどさ。

 学園では「ルキアス」の魔力が高いとは言われていたが強並弱のレベル判定のみで数値化はされていなかった。だが程度というもんがあるだろ?魔王初期化で消えなかったからこれは素の俺の魔力だ。だがこれはヒドイ。

 道理で俺のファイアが世紀末兵器になるわけだよ。初めて納得がいった。魔王や女神様は天地創造クラスの魔導使いだろうからファイアなんて撃てなくてもいいんだろうけどね。マッチのないこの世界でファイアはソロキャンプには必須なんだよなぁ。マッチがあっても使うつもりはないが。せっかく異世界来たのに風情がないじゃん。

 そしてデバフ1/1000発動でもまだ俺はチートには変わりない。って?アークリッチの魔女っ子から見たら100も150も誤差の範疇か?

 あれ?じゃあ俺手ぶらの素でファイア放ってたら魔力15万でヤバかったんか?あッぶねぇ、俺の人生いつも綱渡りだな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...