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Ⅴ メシア、俺。
051: ハコビヤ、俺。
しおりを挟むしぶるポメを説得し俺たちは次なる目的地、王都を目指すことになった。ここで問題発生。
「え?王都に行くのに許可証が必要なんですか?」
「そうなのよ、先月決まったばかりなんだけどね。こっちに王都から依頼が来て冒険者を派遣するんだけどね。これが面倒くさいのよ」
情報収集のために寄ったギルドでお姉さんがため息混じりで教えてくれた。
今までも王都の外壁には関所があったが許可証までは必要なかった。許可証が必要、つまり何か未知の来訪を警戒しているということだ。人族最大の王国ラトスリアがきな臭いという噂と繋がっている。
魔族を警戒しているということか?それとも俺が豪遊しているとバレている?だが許可証は面倒だ。身元保証人が必要だし。ポメの時空移動で潜り抜けられるかもだが場所は王都だ。結界とか張ってそう?これは厄介だな。
「王都に行きたいの?」
「えっと、知り合いに会いに行きたくて」
「ならうちの仕事受けてみる?それなら許可証でるわよ。ギャラもいいし」
「え?ホントですか?!ぜひお願いします!」
お仕事は納品だ。運ぶだけなのにやたらギャラがいいのにはわけがあった。
王都の錬金術士ギルドまで荷物をお届けするだけの簡単なお仕事だが、中身は超危険!マンドラゴラだ。
「劇薬。開封危険。開けたらシヌ」(文字通りそうだ)というドクロマークの警告文、そして黒字に黄色の「危」のシールで完全遮音密封・厳重に施錠されたジェラルミンならぬオリハルコンケースを運ぶ。見た目が大変物騒だ。
ケースからはカリカリと何やら引っ掻くような音がしている。中には100株のムンク顔の根がひしめき合っているという。マンドラゴラが外に出ようとしているのだが、人が入れないサイズのケースからカリカリ音。知らない人が見たらホラーだろう。俺でも怖い。
一見密売人のようだがギルドではこの仕事はハイリスク難易度Aのカテゴリーに入っている。確かに扱いを間違えて備えなしに開けたら死人が出るな。マンドラゴラの脱走も洒落にならない。
現在の梱包形式が確立していない頃にマンドラゴラ85株が大脱走する事件が発生。数日後、ギルド総出で一斉山狩りの上確保したが数が666になっていたらしい。‥‥若干計算が合わないと思ったのは俺だけか?
マンドラゴラは劇薬(毒)に分類されるらしく特定危険物となるため専門の資格と基準以上の精神抵抗値を有した冒険者が運ぶのだが。まあうちにはムンクがいるということで特約オッケーとなった。
なぜか白衣を着たマンドラゴラキングの登場で外に出ようと騒がしかったケースの中が静かになった。さすがはムンク、そしてホラーフラグ終了。
魔王城のお宝が尽きてもこれなら運び屋で生計立てられそうじゃん?
だが俺たちの見た目がそぐわない。女神級美少女の俺、アイドル級のもふもふポメラニアン、肩にムンク(マスコットに擬態中)を乗せた可愛い魔女っ子のパーティが物々しい劇薬を運ぶわけで。絶対疑われて中身を見せろと言われるだろう。そこでギルドが俺たちの推薦状もつけてくれた。
準備万端、俺たちは一路王都を目指した。せっかくなので新しくできたマオウトンネルを抜けて歩いて行ってみることにする。道は舗装されていないためまだ駅馬車は走っていないが多くの人がトンネルを往来していた。早くも街道沿いに店や宿屋が建築中だった。旧道なら二週間かかっていたそうだから街道が完成すれば通行量も増えるだろう。
これで王都まで二日で行けるようになったとか。何げに俺、イイコトシタナー
魔王が竜を殺したとされる水晶針山地獄(人だかりがすごかった)を完全スルー、途中キャンプを挟みつつ順調に進み、二日後には王都に到着していた。
問題の外壁の関所ではやはり止められた。許可証や推薦状を見せても信じてもらえなかった。許可証の意味がない。じゃあもうどうしろと?俺たちケースの鍵持ってないし。
「箱の中身を見せろ」という兵士に「これと同じものが入っているのじゃ!」とキレた魔女っ子が手足クネクネでケケケと笑うムンクを突きつけ兵士がビビるというオマケつきだ。錬金術士ギルドが迎えに来てくれてどうにか事なきを得た。
「迎えに来ていただいてすみません」
「いえ、こちらこそお手数をおかけしました。最近なんだか警備が厳しくなりまして。兵士もピリピリしてるんですよ」
若手錬金術師風のギルド員さんが申し訳なさげに教えてくれた。確かにそうだ。俺がいた頃の王都とだいぶ違う。往来を兵士が歩いている。街の喧騒も消えていた。すでに戦争に突入していると言ってもいいくらいだ。それになんだか———
『ポメ、るぅ、大丈夫か?』
『なにやら嫌な感じがいたします』
『すごく息苦しいのじゃ』
『魔力が渦巻いてるな。一体何をやってるんだ?』
『強力な結界を作っているようです』
それは俺にも感じられた。ただそれは防御というより何かを閉じ込めるためのもののよう、大量の魔導士がそれを成しているようだ。
『例えるなら‥‥‥檻か』
方角は城のほう、意味がわからない。戦場でもない王都でこれほどの結界を作る意味は?王都を守る結界よりもさらに強い檻のような結界をあそこに作る意図は?
納品手続きのために錬金術士ギルドに向かった。マンドラゴラのケースの鍵は荷主の冒険者ギルド、荷受の錬金術士ギルドしか持っていない。事故防止のためだ。ケースの解錠を確認し納品完了となった。
手続き完了を待つ間、城門まで迎えに来てもらったお詫びとして錬金術士ギルドでマンドラゴラの仕分けを手伝った。厳戒態勢下でケースから出てきたマンドラゴラをムンクがサイズ、種類別に整列させる。100体全て叫ぶことも逃走もない。一糸乱れる動きはちょっとした軍隊のようでギルド員に感心された。是非ムンクを引き取りたい、と言われたがるぅが即答で断った。
「こやつはわらわの大切な助手じゃ」
「助手なのか?」
「他のマンドラゴラに指示を出してわらわのラボを取り仕切っておる。薬草庫もこやつの管理じゃ」
マンドラゴラキングがアークリッチのラボの助手。ラボってアーティファクトを作っている?だからこいつ白衣着てたのか。ムンクのくせに急にアカデミックになったな。それでいてるぅの身の回りの世話もしているし?ムンクは意外に働き者だ。
白衣を着たマンドラゴラたちがひしめくラボ。
ちょっと見てみたい気もした。
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