57 / 114
Ⅴ メシア、俺。
050: そうだ!王都へ行こう!
しおりを挟むそこでずっと思案していたケモ耳ポメ少年がボソリと呟いた。
「ファイアが撃てないという事実に至ったからではないでしょうか」
「なんだそれ?」
「結果如何ではなく、何事か努力した行為が経験となったのではないかと」
「あー、クエスト達成未達成に関係なく?」
確かに成果は出なくても色々経験はしている。ファイアを撃つというクエストは失敗(ぐぅぅ!)でも経験値貰えるのか。ここは優しい世界だな。ナルホド、ポメはなかなか核心をつく。たまにトンデモ発言があるけどね。
ポメは擬態が増え魔女っ子は大きくなった。みんな何かしらの変化が出たわけで。じゃあ俺は?すッげぇスキル出てないかな?
そこで女神様が情報をくれた。
『魔王のスキルが一つ使えるようになってるわ』
「魔王のスキル?!」
『情報ウィンドウが表示されるようになったはずよ?何か見えない?部屋の中のものでは無理かしら』
わけもわからず俺が部屋を見回す。と、一箇所、赤く光るものが見えた。テーブルに置いたスコップだ。ベッドから起き上がりそれを手に取るとピコンとウィンドウが立ち上がった。おそらくウィンドウは実際に目で見えるものじゃなくて視覚的に脳に送り込まれているようだ。ちょっとゲームっぽい?
【スコップ】
女神専用装備。とにかく丈夫。魔力を通すことでゴーレムを操作することができる
属 性 :無
売 価 :売却不可
追加効果:魔力を通すと形を変えることができる。打撃バフなし。
追記事項:魔法ステッキには変えられない
これなんか攻略本に書かれていそうな情報だな。最後の一行は女神様が追記したんじゃないか?魔法ステッキ、そこまでダメなんか?
そんな俺の思考に被せるように女神様がさらに追加情報を出してきた。
『あー!そうそう!あとは収納スキルが解放されたみたい!よかったわね!』
「え?収納?」
と思っただけで、手の中に魔女っ子が作った呪いのアーティファクトが現れた。ポメの収納に入れていたものだ。
「おぉ!俺も使えるようになった!超便利!」
ハイファンタジー御用達の便利スキルだ。やったァ!これで恥ずかしくてポメに収納頼めなかったものもこっそり買えるぞ!まー、女神様には筒抜けだけどね。ドンマイ俺!
でもレベル100でついに!ついに!
何やら盛り上がって参りました!!
となるとこのステッキのスペックも気になった。同時にインフォウィンドウがピコンと開く。
【ルキステ】
正式名称: ルキアス専用ステッキ・プロトタイプBコンバットHGモデルVer.4.031
アークリッチが貴重なマンドラゴラをふんだんに使い呪いをかけた贅沢な上位モデル。ルキアス専用武器
属 性 : 呪い(暗黒)
売 価 :売却不可
追加効果: 2d6×100の確率で呪いのデバフが発動、呪いの力で装備者の魔力発動値が1/1000となる。ただし2,4,6のゾロ目が出た場合のみ致命的失敗とみなされ呪いは発動しない
おいおいマジか。まさかのダイス判定。
この世界はTTRPG?
2d6って6面サイコロ2個?どこで?誰がサイコロ振ってんの?俺に振らせろよ。しかも×100って。サイコロ値関係なく絶対発動じゃね?呪いどんだけだよ?これはゾロ目が出るか出ないかのためだけにサイコロ振る感じだな。ファンブルの、3つのゾロ目の発生率は1/12。以前るぅの言っていた率と一致するな。
そこでふと、俺の正面に立つ兄妹を見た。このスキル、対人だったらどうなんだろうか。
インフォウィンドウが開くが文字がうねうね動いていて読めない。かの有名な呪いのビデオの様で気持ち悪い。俺、三半規管弱いからこういうの見ると酔っちまうんだよな。
これはステータスを読めないということか。今のところ武器限定?圧倒的なレベル差が必要なのか。でもまあ人のインフォとかって個人情報っぽくていらないかもな。ん?個人情報?
ダメ元で鏡の中の女神様を覗いたらインフォウィンドウに"NO DATA"と表示。動く文字さえ見えない。さすがは女神様、個人情報完全ブロックである。
俺の個人情報は女神様にダダ漏れなのになー
着替えをして部屋で朝食を済ませたところで俺は皆の前である提案をした。
「今後のことなんだが‥‥王都に行ってみようと思う」
「王都‥‥でございますか?」
ポメ少年のケモ耳がぴくりと反応した。無理もない。
王都は俺が避けに避けまくった鬼門中の鬼門。大陸最大の人族の王国、その中枢でもあるが、俺が目覚めた場所で俺の面が割れているという事情もあった。魔王の近衛たるポメ的には一番警戒する場所だろう。
「噂だと英雄たちは遠征中、今なら勇者に聖女も王都にいない。今がチャンスだと思う」
「チャンスじゃと?」
「ずっと気になっていたことがあるんだ。それを調べたい。その為に王立図書館に行く」
調べものは図書館というのは定石だ。辺境の村ではロクな書庫も本屋さえもない。じゃあどこなら?王都は?王都なら本屋も、何より最強の王立図書館があるじゃん!
そうだ!王都に行こう!
俺が調べたいこと。それはこの国の神話だ。この国はこの世界を作った唯一神、"万物の支配者"たる神を信仰しているが聖書的なものはない。識字率の低さ所以で伝えられるのは神父の対面による口伝の布教のみだ。俺の知る唯一のこの街の本屋にもそういった資料はなかった。「ルキアス」の知識にも該当がなかった。そうして俺は困った状況に陥ったわけだ。
つまり俺はこの国の神話を全く知らないのだ。
俺の嫁のことなのに俺が何も知らないってのはまずいだろ?!
「決して遊びに行くわけじゃない!この情報戦の中でやはり知識は重要だ!ペンは剣よりも強しって言うだろう?あれ?意味違うか」
「しかし陛下、王都というのは」
慎重派のポメが難色を示している。まあそれもわかる。だが偉大なる目的のために絶対に説得してみせる。
「ここも昨日の件でちょっと居づらくなった。目的のムンクも回収できたし潮時だろう」
「確かに‥‥そうですが」
「大丈夫だ、顔は隠す。メシも観光もなしだ。王都はどうせメシマズだしろくなもんない。そんでもって情報だけかっさらってくるんだ。な?」
「違うじゃろ」
そこにジト目の魔女っ子。こういうところでカンが鋭いやつだ。
「‥‥‥‥なにがだよ」
「尤もらしいことを言っとるが。ルキは本が読みたいだけじゃろ?」
「ぎくぎくぅ!」
チッもうちょっとでポメを説得できそうなのに。
こいつはいつもいいところで俺の核心をついてくる。まあ?確かにそういう側面もある。否定はしない。
店主が泣いてやめてくれというところを俺が強引に店頭の本を全部買い上げて読み尽くした。ちょっと可哀想になりイマイチな本は後日半額で本屋に売りつけた。本屋に本が半分戻ったわけで?俺も在庫整理できて?店主も売るものができてWin-Winだ。
だが俺はもう読む本がない。俺の唯一の趣味!活字中毒の限界が来た。魔導があるのになんで電子書籍ないんだよ?
「仕方ないだろ!もう限界なんだよ!本!俺に本をくれぇ!!」
「王都の図書館を全て読み終わったらどうなさるつもりでしょうか?」
「そん時はそん時だ!求めよさらば与えられん!」
「なんじゃそれは?」
「欲しいものの為に我慢せず全力で努力しろって意味だ!女神様と本のために俺は日々努力を惜しまない!」
「おそらく‥‥その解釈は少々違います」
ポメがはぁとため息をついた。
ん?これもちょっと違ったか?まあ気にすんな!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
42
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる