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Ⅴ メシア、俺。
059: どちらかというと?
しおりを挟む女神様は何やら言いにくそうだ。
それはどういう意味?
『どんなって言われても‥‥悪い人じゃないのよ』
「悪い人じゃない?それはいい人?」
『見た目が威圧的なところがあってちょっと誤解されやすいけど、優しい‥‥ところもあるし』
「え?あいつ女神様に優しかったの?!」
『え?ええええっと、私もちょっとしか会ってないし‥‥久しぶりだからなんとも』
「‥‥‥‥久しぶり?前から知り合いだったんだ?」
女神様と魔王は以前から面識があった。
それはずっと前から感じていたことだ。和食の話、俺の料理、俺の夢。多分女神様は魔王から聞いて知っていた。そうじゃなければ今まで感じた違和感の説明がつかない。
「前世で?それとも今世?どういう関係?いつからの知り合い?」
『あ、えっとだからその』
「なんであいつのこと隠すの?!教えてよ!」
『え?今日はどうしたの?魔王は貴方のことよ?』
「知らないよあんなやつ!!」
これは八つ当たりだ。ディートの話の後でのこの展開。ただ俺が苛立っているだけだ。
女神を守ろうと怒れる魔王。それは魔王も女神様に執着しているということだ。俺もそうだが弱い俺は女神様を守れない。その力はない。だが魔王にはそれがある。その瞬間がきたら俺は魔王に頼るしかない。それがとても悔しい。
俺と魔王、表裏一体。だからつい比べてしまう。
思考も行動も違うのに女神様絡みの沸点や反応は一緒。
似ていないようで似ている二人。
同族嫌悪。ディートも嫌だったが俺は魔王も嫌いだ。
そしてこんな理由で拗ねて女神様を困らせる俺もすごくカッコ悪い。
困惑げにふぅとため息をついた女神様が目を閉じた。すると鏡の中、女神様の隣に揺らぎができた。それはするすると人型になる。
鏡の中に一人の男が現れた。背は女神様より頭一つ大きい。髪はちょっと長めの短髪で黒、服は戦闘服だろうか、俺の記憶では見たことがない服だ。その男は目を閉じて眠るようにそこに立っていた。だが俺には見覚えがあった。
どうしても思い出せなかったが映像として見えればそうだとわかった。それは朧げながら記憶にある十六の俺の姿。だが目の前の男の歳は記憶よりもう少し上、大学生くらいだろうか。
それは大人になった俺の姿だ。やっと自分だと思える姿を目にできた。
「‥‥これが魔王?」
『封じられる前の貴方の姿よ。私の姿ばっかりだから実感ないだろうけど、貴方は、魔王はこの体の中でちゃんと実在してるのよ。魔王は貴方、そんなに自分を嫌いにならないで』
こいつ、目を閉じてるからわからないが?なんか眉間に皺とか寄ってそう?シリアス?ちょっと影があるようで怖い感じもする。目つき鋭い?これが俺?目が開いたらまた感じが違うのか?背はデカいが少し背の高めな女神様と並ぶならちょうどいい感じ?
まー?男の俺が見てもちょ———っとイケメンかな?とも思う。女子ってこういう孤高な感じ好きだよね。ということは女神様が見たら?
一方女神様はちょっと頬染めてぽぇぇと隣の俺(らしい男)を見上げていらっしゃる。その意味は?
え?あれあれ?ひょっとして?ひょっとすると?
「女神様は?どう思う?こいつカッコいい?」
『え?ええ?!なな何よ急に』
「女神様的にはこいつ好き?嫌い?どっち?深い意味はなく好み的なところで」
『なななな!そんなの選べないじゃ』
「じゃあどちらかってーと?程度でどっち?好き?嫌い?ちなみに回答は二択、わからない、どちらでもないの選択肢はないから」
『えええぇ?!』
「シンプル二択!さあ選んで!どっち?どっち?どっち!」
俺に詰め寄られてもじもじ真っ赤になる鏡の中の女神様。おぅ、カワイイ!この顔だけで許してしまいそうになるけど、せっかくだからきっちりどっちか聞きたい。二択フィフティフィフティだがネガティブな回答だったら速やかに脳内削除で聞かなかったことにするぞ俺!
『どちらかというと?深い意味はなく?」
「ナイナイマッタクナイ」
『それなら‥‥‥どちらかというと』
「ウンウン」
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥好きかも』
ジーザス!神は確かにいた!
俺の魂の叫びが洞窟に響き渡った。
「ぅおっしゃー!好き!いただきました!!!」
『ふふふッ深い意味ないから!どちらかというとだからね!!わかってる?!』
「もちろんよッッッくわかってます!!」
『ホントに?!だとしたらちょっと喜びすぎでしょ!』
俺の脳内では祝福の花びらが、そしてラッパを吹く裸の子供の天使が舞い降りる。もう幸福絶頂だ!!
(どちらかというと)好きかも
(略)好き(かも)
(略)好き(略)
ハイ!トリミング!脳内で永久保存しました!!
頬染めて好きって言った愛らしい女神様のスチールとのセットだ。門外不出の家宝にします!!
初めて俺を(どちらかというと)好きって言ってもらえた!!今日は俺の生涯の記念日だ!ちなみに俺は女神様に出会った直後に告ってたから俺の告白記念日は出会い記念日と同じだ。
今日はやたら走らされて俺の中を引っ掻き回されてやなもん見させられてひでぇ一日だって思ってたのに、女神様の一言だけで簡単にひっくり返ったし。さすがは俺の嫁、もう嬉しすぎてわけわかんなくなってきた!
『え?ちょっと?もう‥‥どうしたのよ』
女神様に目元を拭われて、初めて涙を流してるって気がついた。俺ってばそんなに嬉しかった?
「‥‥‥‥ヘヘッなんかもう‥何がなんだか」
『もう、変なの』
なんでか笑いながら泣き出した俺に苦笑して女神様が俺の頭を撫でてくれた。
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