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Ⅶ マオウ、俺。
087: 天上へ
しおりを挟むサクラを無事保護できた。さあこの勢いのまま次は天上だ!というところで問題発生。
「ゲート作らないといけなかったか」
「そうなりますね。我にできればよかったのですが」
全てを理解しているガンドが目を閉じた。
天上→地上ゲートはサクラが常設していたが一方通行だ。地上→天上ゲートがない。ちょっと前に俺が天上に上がったのはサードがこの俺を雑に鷲掴みにして引き上げたから。(あのやろぅ、ぜってぇ殺す!)
ゲートを作る知識は俺にもダウンロードされているんだが。
「ぐぅぅ、仕方ない。ゲート作るか」
「そんなに面倒なのか?」
「いや、魔法陣を描くだけなんだが‥繊細な魔力制御が」
「悪かった。理解したのじゃ、皆まで言うな」
ヘラが俺を制して手を突き出した。そこで察してくれるのもイタい。
「疲れているサクラを起こすのは忍びないしな。ここは頑張って俺が」
「転送の魔法陣なら僕が描こうか?」
振り返ればディートが立っていた。今度は女の姿。こいつ、コロコロと何やってんだ?
「ディート?」
「姿は用途で変える。今度は万能モードかな」
「ふーん?魔法陣、お前描けんの?」
「一応魔王の知識はもらったからね。繊細な魔力制御は得意だし。ま、正直こんなとこでしか役に立たない知識だよね。僕は魔王じゃないし」
「‥‥お前はいちいち一言言わないと気が済まないのか?」
「おかしいな、そんなつもりないんだけど?事実だし。被害妄想酷くない?」
ホンットひねくれてるな!誰に似たんだ?俺がゲンコツを握ったところで笑顔のガンドがにこやかに仲裁に入った。
「まあまあここは一つ穏便に」
「お前!妹弟に甘過ぎるぞ!」
「少々素直ではないのですがそれ以上に陛下のお役に立ちます。ディート、早く描いてしまいなさい。陛下をお待たせしてはいけないよ」
「はい兄さん」
この妹弟、兄貴には無茶苦茶素直なんだよな。ガンドゆえなんだがホントムカつく。どうせ俺には人望ないよ!
さくさくと魔法陣を描くディート。俺より断然早い。ぐぅ、確かに役には立っている。
ディートが天を仰いでつぶやいた。
「天上への障壁はないみたい。多分これで行ける。場所は既にある天上ゲートの隣だよ」
「罠があるかもしれません。安全確保に我とヘラが先に参ります、陛下は少ししてからお越しください。ディートは後衛だよ」
ガンドとヘラが飛んだしばし後に俺も魔法陣に乗った。光の世界を一瞬で抜け魔素の暗闇を突き抜ける。もう馴染みの感覚だ。俺は天上に舞い降りた。乗り心地抜群、悔しいがディートの魔法陣の完成度は素晴らしかった。サクラとほぼ同等だろうが、サクラのほうが優しい感じがすると思うのは贔屓目じゃないぞ!
天上の真っ黒い内装は相変わらず、見ればゲートの辺りには警備システムのドローンやらロボットやらの部品が大量に散らばっている。すでにそこはガンドとヘラに制圧されていた。
あっさり天上に侵入成功。いたのは普通の警部ロボット。俺たちのことを全く警戒していない?この意図は?罠か?
ヘラが壁に穴を開け配線を引っ張り出していた。宙に浮いた半透明のモニターを覗き込んで何やら作業している。モニター同様に透けるキーボードらしきものが複数宙に浮いていて、ヘラはそれらにもんのすごい勢いでタイピングしていた。
「ヘラは何してる?」
「このエリアのシステム制圧です」
「は?相手は人工知能だぞ?」
「ヘラは魔女の血を引いております。まずはここの安全確保を優先させておりますがちょっと手こずって」
「今落ちたのじゃ」
ヘラが顔を上げてにっと笑って俺達に振り返った。
「第三ブロック、ここを制圧したのじゃ」
「おお!すげぇな!」
「わらわは大いなる魔女の娘じゃ。言語が暗号化されてたがシステム制御は問題ないのじゃ」
「言語が暗号化?ツールなしで復号したのか?」
「まあそこは感性で読み解いたのじゃ」
「か?感性?」
「雰囲気じゃ。そこは突っ込むな」
魔女。ここでいう魔女の能力はハッキング能力だろうか。ヘラの能力は支配と創造。地上では死人使いだったが天上ではエンジニアとなるのか。魔女ソフィアの能力は突き抜けていたし大いなる魔女サクラスも残された記録ではエンジニアとしても優秀だった。
その能力って遺伝するものなのか?感性ってことは理屈じゃなさそうだ。よくわからんが今は———
「サクラの肉体がどこにあるかわからないか?」
「それはわからんのじゃ。というかここの人工知能も居場所をわかっていない」
「じゃあどうすんのさ」
いつの間にかディートがたどり着いていた。何やら面倒臭そう、こいつはいつもやる気がない。
「大体ホントにここに体あんの?」
「そこは間違いない。気配はある」
「人工知能が存在に気がついていない‥‥そんな隠し場所があるでしょうか」
「ここで精神体を放したら勝手に体に戻るんじゃないの?」
「それは危険だ。サクラは弱ってるし、また精神体で捕まったらもう終わりだ。肉体を先に見つけて保護しよう」
「じゃあローラー作戦?とりあえず片っ端から壊しながら探すとか?どうせここ壊すつもりなんだろ?」
「それはやめた方がいいのじゃ」
ヘラが端末を覗き込みながらつぶやいた。
「この要塞は軽く星レベルのサイズじゃ。当てなく探しても見つからぬ」
「ここの破壊は無理だということかい?」
「無理とは言わぬがSFA062の修復能力も早い」
「S‥‥F?なんだそれ」
「SFA062、人工知能の名じゃ。通称は『ソフィア』か?ここは時空移動も封じられておる。壊して回るのなら相当時間がかかるぞ」
「なるほど、ニュートン算だな」
攻撃が修復を上回った分破壊が進むが対象は星サイズの要塞。あちらは反撃能力もあるわけで全壊は果てしない作業だ。要塞をこれほどに肥大させダミーまで配置、AI『ソフィア』は歴史上の独裁者同様、臆病に他ならないということだ。
「狙うならデカい体より心臓部か」
「僕たちを警戒していないのは、やれるもんならやってみろ的な余裕かな?素晴らしいね」
「確かにこの要塞と比べれば我らはアリサイズでしょうから」
星サイズの要塞にたった4人。確かにそうだ。
「人工知能の破壊が目的ならコアシステムだけを破壊すればいい。じゃがコアは手のひらサイズ、常に要塞内を移動しておるし大量のダミーもある。この要塞から本物を見つけ出すのは正直相当厄介じゃ」
「じゃあ破壊は後回しだ。サクラの肉体を切り離した日のログは見えるか?」
「ログか?」
「何かヒントはないか?多分サクラがどこかに体を隠しているはずだ。普段と違う記録がどこかにあれば」
「ログ‥‥‥毎日ほぼ同じログなんじゃがちょっとおかしな日があるな。ログが取れていない日がある」
「ん?」
画面には雨のように文字が流れている。そのデータをヘラが追っている。俺にはわけがわからない。すごいな魔女って。
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