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Ⅶ マオウ、俺。
089: 旧市街エリア
しおりを挟むサードが手を上げた。同時に警備ロボットが動き出した。ここの警備システムはヘラに制圧されている。わざわざ連れてきたということだ。
「姉上、気をつけるのじゃ。こいつは魔女じゃ」
「じゃあハッカー?だから警備ロボ連れて来れたんだね。魔力攻撃力弱いのも納得だ」
「裏でわらわの制圧システムに攻撃を仕掛けておるな。まあわらわは負けんのじゃ」
ヘラの声で天井から壁からガチャガチャとレーザー銃がわんさか出てきた。警備システムと睨み合いだ。
おいおい、ここでおっ始めるのか?
ヘラのこういう負けず嫌いなところは俺によく似てる。喧嘩っ早いのはサクラ。結果凶暴になってしまった。
「じゃあ僕も全力で殴りに行こうかな」
見た目おっとり貴族令嬢なディートが指をボキボキ鳴らしている。俺の記憶コピーの影響かこいつも沸点低いな。ディートの、女の体のままで大丈夫なのか?美しいが故に笑顔が怖すぎる。ガンドだけが冷静だ。俺達の血を引いてるのに?突然変異か?
「ここは二人に任せましょう」
「お前ら!ゲートは絶対壊すなよ!」
「努力するよ。まあ壊れたらまた描くからさ」
俺に手をひらひら振りながらディートはロボットを真っ二つにしている。恐ろしく余裕だ。
「だからサクラのは壊すなって言ってんだろが!俺もこいつぶん殴るからな!俺の分も残しとけよ!」
「あぁそっか。それじゃあ生捕りだね」
「ガキがッほざくんじゃないよッ」
「それは僕のセリフだよ。無茶したら体に良くないよ?オバサン」
見た目同じくらいの二人だが、サードは五千年近く生きた能力者、一方ディートは生まれて半年も経っていない。生きた長さに差はあるが、神の器にオバサンはないだろう。流石の俺も唖然だ。サードが怒りで青ざめている。煽りとしては十分だろう。
目の前のロボットを蹴散らしディートが突進、サードに華麗な回し蹴りが決まった。魔王には体術もダウンロードされていたからディートも戦闘能力は高い。魔力値だって魔王に劣るがバリバリ強い。仰向けに倒れたサードにまたがり殴りまくっている。女子プロレスの展開、一見善玉のディートが悪玉のような一方的な戦いだ。サード、本当に弱いな。何しにきたんだ?
魔力でも戦えるところを敢えて体術、本当にディートはこいつをボコるつもりだ。いいなぁ俺も一発殴りたい。
そしてロボット同士ドンパチ始まってしまった。バトルシーンがなんかすごくSFっぽい。冷ややかにサードを見下ろしていたディートが自分の前に何かを作り出している。平たい何か、あれは———
シールド?いや鏡だ。全身を写せるほどの鏡が二枚?なんに使う気だ?
目の前のドンパチに俺の血が騒ぐ。攻撃的になるのは能力者の特性だから仕方ない。やっぱり俺もちょっとだけ———
ガンドが前のめりの俺を押し留めた。
「ディートは結界が張れるのでゲートは大丈夫でしょう。我々もこの隙に急ぎましょう」
「いや俺も一発」
「参りますよ陛下、さあ!」
殴りかかろうとしている俺を笑顔のガンドが部屋から引っ張り出した。
隣のブロックに入ったガンドが壁にぽんと手をついた。壁を伝い煙を吐きながらものすごい高圧電流がバリバリと駆け抜けた。絶縁無視の電流で電子機器が破壊、蔓延する煙でスプリンクラーが発動した。派手に警報が鳴り響いたが、壁から出てくる迎撃システムのレーザー銃をガンドがかわすと同時に壁を駆け上がりアクロバットのように一撃で蹴り壊していく。
前言撤回。こいつも爽やか笑顔で大量殺人鬼だった。顔に似合わず物理攻撃担当だし。血は争えないな。ガンドは翼があるように身軽だ。白い服が天衣のようになびいている。めっちゃカッコイイ!あぁ、そういえばこいつは魔狼だったか。
ガンドがカメラを蹴破ったところでヘラからクレームが入った。
『兄者、カメラを壊されると兄者達を追跡ができなくなるのじゃ』
「お前、そっちの戦闘は?」
『ザコなら確保したのじゃ。姉上の圧勝、システムも問題ないのじゃ。こいつ弱すぎるぞ』
ザコって‥‥ヘラにまで。あいつ、弱いもんな。
「早ッ 大丈夫なのか?!」
『姉上の結界は完璧なのじゃ。それより壊しすぎないよう気をつけるのじゃ』
ヘラは警備システムを追跡に使っているようだ。それを壊すなというのは難易度がグッと上がるが、ガンドはこれまた爽やか笑顔だ。いっそ腹黒く見える。
「ああそうだったね、じゃあちょっと眠らせようか」
ガンドが再び壁に手をついた。俺の肌にも感じられる程度の冷気が壁を走り抜けた。迎撃システム含め軽く凍ってる。警報も出ない。精密機器の敵は熱や電気だけじゃなかった。すげぇ、こうなると絶縁も鋼鉄版も関係ないな。ガンドは物理攻撃担当だが中位程度の魔導も使える。
「凍結か」
「電気を帯びさせるよりも壊れません。凍結は機能を低下させる程度、温度が戻れば復活します」
「なるほど、便利だな」
これも繊細な魔力操作ができればの話だ。俺も真似てみたが、魔力にほんのり冷気を込めたが凍らない。さらにちょっとだけ強めに魔力を込めたら問答無用で極寒の暗黒魔導・絶対零度になりヘラに叱られた。永久凍土、これじゃ溶けないらしい。壊さないって難しいな。俺も中位魔導使ってみたかった!早くデバフ装備をヘラに作ってもらおう。
行く先々でガンドが警備システムを凍らせて俺が防爆扉を蹴破り邪魔なロボットに煉獄火炎をぶっ放す、を繰り返した。
『次の角を曲がって‥‥そのゲートを打ち抜けば到着じゃ』
ヘラのナビで俺たちは旧市街エリアに辿り着いていた。ガンドが電力供給をオンにしたが照明が壊れているのか辺りは薄暗いままだ。だが電源供給されたことでヘラがこちらの様子をモニターできるようになった。
旧と言われるだけあって見た目の設備は相当に古く俺の、「アスカ」の記憶の街のイメージに近い。ドームに囲まれた旧市街、真っ暗だ。黒いビルが立ち並んでいるが生き物の気配はない。そして天井にはシールド越しに黒い空が見える。これは擬似なのか真の空なのか。
『当初は避難エリアを作ったが効率を考えて冷蔵冬眠に切り替えたためにここを放棄したようじゃな。兄者たちの周りには生命反応なしじゃ』
「まあ人間起きていれば腹も減るし年も取るからな」
食料やエネルギー問題もある。そもそもこんなところに閉じ込められて飼い殺しにされては心が耐えられないだろう。
ガンドが初期魔導で作り出したライトで照らしながら大通りを奥へ進む。突き当りには銀行の金庫室のような巨大な丸型の扉、これが核シェルターのようだ。扉の手前は長年放置され随所にチリが積もっていた。だが俺たちを導くように足元には道が一本扉へと続いていた。
「これは‥‥‥‥」
「誰かここに来てたな」
そして扉の奥からかすかなサクラの気配がした。
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